解説記事2019年06月10日 【SCOPE】 有償支給取引で裁決、加工後製品の金額が課税売上高(2019年6月10日号・№790)
加工賃部分のみと主張するが……
有償支給取引で裁決、加工後製品の金額が課税売上高
原材料費も含めた加工後製品の金額が課税売上高に該当するか否かで争われた有償支給取引を巡る裁決で、国税不服審判所は、請求人と取引先との間の取引は、請求人が一旦、取引先から原材料を有償で譲り受け、これに加工等を施した後の本件加工後製品を再び本件取引先に有償で譲渡するという合意のもとで行われているものと認められると指摘。課税売上高は受取金額ではなく、本件加工後製品の金額が課税売上高となるとの判断を示した(大裁(諸)平成30第16号)。
原材料費も「資産の譲渡等の対価」に該当
今回の事案は、有償支給取引に関する裁決だ。課税売上高となるのは、原材料費も含めた加工後製品の金額か、あるいは取引先からの受取金額のみであるかが争われたものである。請求人は、原材料の加工しか行っておらず、加工後の製品を販売していたわけではないから、加工賃部分しか課税売上高にならないとして、原処分の一部の取消しを求めたものである(図表1参照)。
審判所は、請求人は取引先(A社)に対して、本件原材料金額に相当する額を含む本件加工後製品金額を譲渡代金として請求していると指摘。一方、A社は、請求人との交渉で本件原材料金額を確定し、本件加工後製品金額と本件原材料金額を対当額で相殺してその残額を請求人に支払っているため、A社は請求人に対して、本件原材料金額を譲渡代金として請求しているものと認められるとした(図表2参照)。
その上で、請求人とA社との間の取引は、請求人が一旦、A社から本件原材料を有償で譲り受け、これに加工等を施した後の本件加工後製品を再びA社に有償で譲渡するという合意の基で行われているものと認定。A社が、請求人に本件原材料を提供した際に本件原材料金額を売上げに、請求人から本件加工後製品が納入された際に本件加工後製品金額を外注費に、それぞれ経理していることも当該認定に沿うものであると指摘。本件原材料金額に相当する額は、本件加工後製品の譲渡の対価の一部として、「資産の譲渡等の対価」(消法2条1項8号)に該当し、本件各課税期間の課税売上高になるとの判断を示した。
原材料加工の役務の提供とは認められず 請求人は、請求人とA社との間の取引は、請求人が本件原材料を本件加工後製品に加工等する役務の提供をし、A社から、当該役務の提供の対価である本件受取金額を受け取っているものであり、A社から本件原材料を譲り受け、これを加工等した本件加工後製品をA社に譲渡するというものではないと主張。課税売上高となるのは加工賃等に相当する本件受取金額のみであり、役務の提供の対価ではない本件原材料金額に相当する額は課税売上高とはならないとしていた。
しかし、請求人とA社は、①請求人が原材料を購入して本件加工後製品を販売するという合意の基でそれぞれ決済している、②A社は、請求人に提供後の本件原材料を棚卸資産として計上していない、③いわゆる仕損じによる損失を請求人が負担するものと認識していることからすると、請求人とA社との間の取引が本件原材料への加工等の役務の提供にすぎないとは認められないとの判断を審判所は示している。
有償支給取引で裁決、加工後製品の金額が課税売上高
原材料費も含めた加工後製品の金額が課税売上高に該当するか否かで争われた有償支給取引を巡る裁決で、国税不服審判所は、請求人と取引先との間の取引は、請求人が一旦、取引先から原材料を有償で譲り受け、これに加工等を施した後の本件加工後製品を再び本件取引先に有償で譲渡するという合意のもとで行われているものと認められると指摘。課税売上高は受取金額ではなく、本件加工後製品の金額が課税売上高となるとの判断を示した(大裁(諸)平成30第16号)。
原材料費も「資産の譲渡等の対価」に該当
今回の事案は、有償支給取引に関する裁決だ。課税売上高となるのは、原材料費も含めた加工後製品の金額か、あるいは取引先からの受取金額のみであるかが争われたものである。請求人は、原材料の加工しか行っておらず、加工後の製品を販売していたわけではないから、加工賃部分しか課税売上高にならないとして、原処分の一部の取消しを求めたものである(図表1参照)。
【図表1】当事者の主張 |
原処分庁 | 請求人 |
請求人は、取引先から、本件原材料を譲り受け、これを加工等した本件加工後製品を取引先に対して譲渡し、本件加工後製品の代金額をその譲渡の対価としているものである。 上記のことは、請求人との取引の決済が、請求人の取引先に対する本件加工後製品の譲渡代金債権等と、取引先の請求人に対する本件原材料の譲渡代金債権等とを対当額で相殺する方法によって行われていることが認められる。 そうすると、本件原材料金額に相当する額は、本件加工後製品の譲渡の対価の一部であり、本件各課税期間の課税売上高となる。 | 請求人は、取引先に対し、本件原材料を本件加工後製品に加工等する役務の提供をし、取引先から、当該役務の提供の対価である本件受取金額を受け取っているにすぎず、取引先から本件原材料を譲り受け、これを加工等した本件加工後製品を取引先に譲渡しているものではない。 そうすると、本件各課税期間の課税売上高となるのは、加工賃等に相当する本件受取金額のみであり、役務の提供の対価ではない本件原材料金額に相当する額は、本件各課税期間の課税売上高とはならない。 |
審判所は、請求人は取引先(A社)に対して、本件原材料金額に相当する額を含む本件加工後製品金額を譲渡代金として請求していると指摘。一方、A社は、請求人との交渉で本件原材料金額を確定し、本件加工後製品金額と本件原材料金額を対当額で相殺してその残額を請求人に支払っているため、A社は請求人に対して、本件原材料金額を譲渡代金として請求しているものと認められるとした(図表2参照)。

その上で、請求人とA社との間の取引は、請求人が一旦、A社から本件原材料を有償で譲り受け、これに加工等を施した後の本件加工後製品を再びA社に有償で譲渡するという合意の基で行われているものと認定。A社が、請求人に本件原材料を提供した際に本件原材料金額を売上げに、請求人から本件加工後製品が納入された際に本件加工後製品金額を外注費に、それぞれ経理していることも当該認定に沿うものであると指摘。本件原材料金額に相当する額は、本件加工後製品の譲渡の対価の一部として、「資産の譲渡等の対価」(消法2条1項8号)に該当し、本件各課税期間の課税売上高になるとの判断を示した。
原材料加工の役務の提供とは認められず 請求人は、請求人とA社との間の取引は、請求人が本件原材料を本件加工後製品に加工等する役務の提供をし、A社から、当該役務の提供の対価である本件受取金額を受け取っているものであり、A社から本件原材料を譲り受け、これを加工等した本件加工後製品をA社に譲渡するというものではないと主張。課税売上高となるのは加工賃等に相当する本件受取金額のみであり、役務の提供の対価ではない本件原材料金額に相当する額は課税売上高とはならないとしていた。
しかし、請求人とA社は、①請求人が原材料を購入して本件加工後製品を販売するという合意の基でそれぞれ決済している、②A社は、請求人に提供後の本件原材料を棚卸資産として計上していない、③いわゆる仕損じによる損失を請求人が負担するものと認識していることからすると、請求人とA社との間の取引が本件原材料への加工等の役務の提供にすぎないとは認められないとの判断を審判所は示している。
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