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解説記事2019年07月22日 【税制改正解説】 令和元年度における相続税関係の改正について(下)(2019年7月22日号・№796)

税制改正解説
令和元年度における相続税関係の改正について(下)
 早川貴之

租税特別措置法等(相続税・贈与税関係)の改正(承前)
6 非上場株式等に係る納税猶予制度の見直し

1 改正前の制度の概要
(1)非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除
① 概要
 経営承継受贈者が、認定贈与承継会社の代表権を有していた一定の個人(以下「贈与者」という。)からその認定贈与承継会社の非上場株式等を贈与により取得した場合には、その非上場株式等のうち対象受贈非上場株式等(発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2に達するまでの部分に限る。)に係る納税猶予分の贈与税額に相当する贈与税については、担保の提供を条件に、その贈与者の死亡の日まで納税が猶予される(旧措法70の7①)。
② 猶予期限の確定
 イ 経営贈与承継期間内に納税猶予期限が確定する場合
  経営贈与承継期間(贈与税の申告書等の提出期限の翌日から同日以後5年を経過する日までの期間をいう。以下同じ。)内に、この特例の適用を受ける経営承継受贈者又は対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について、次に掲げる場合などに該当することとなったときは、それぞれ次に定める日から2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(旧措法70の7③、旧措令40の8)。
 (イ)経営承継受贈者が認定贈与承継会社の代表権を有しないこととなった場合 その有しないこととなった日
 (ロ)経営承継受贈者及びその経営承継受贈者の同族関係者等の有する議決権の数の合計が、その認定贈与承継会社に係る総株主等議決権数の100分の50以下となった一定の場合 100分の50以下となった日
 (ハ)経営承継受贈者が対象受贈非上場株式等の譲渡又は贈与をした場合 その譲渡等をした日
 (ニ)認定贈与承継会社が資産保有型会社又は資産運用型会社(事業実態がないものに限る。)に該当することとなった場合 その該当することとなった日
 ロ 経営贈与承継期間後に納税猶予期限が確定する場合
  経営贈与承継期間の末日の翌日から猶予中贈与税額に相当する贈与税の全部につき納税の猶予に係る期限が確定する日までの間において、経営承継受贈者又は対象受贈非上場株式等に係る認定贈与承継会社について、上記イ(ハ)及び(ニ)に該当した場合などには、猶予中贈与税額に相当する贈与税については、その該当した日等から2か月を経過する日が納税の猶予に係る期限となる(旧措法70の7⑤、旧措令40の8)。
③ 猶予税額の免除
 この特例の適用を受ける経営承継受贈者に係る贈与者が死亡した場合等には、一定の贈与税が免除される。この際、その経営承継受贈者又はその経営承継受贈者の相続人は、認定贈与承継会社の名称・本店所在地及び特定資産の額・明細等を記載した免除届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない(旧措法70の7⑮、旧措令40の8)。
④ 納税猶予期間中の継続届出書の提出義務
 この特例の適用を受ける経営承継受贈者は、贈与税の申告書の提出期限の翌日から猶予中贈与税額の全部について納税の猶予に係る期限が確定する日までの間に経営贈与報告基準日が存する場合には、届出期限までに、引き続いてこの特例の適用を受けたい旨等を記載した届出書(以下「継続届出書」という。)に一定の書類を添付して納税地の所轄税務署長に提出することとされている(旧措法70の7⑨、旧措令40の8、旧措規23の9)。
 これら納税の猶予の期限の確定、猶予税額の免除その他制度の詳細については、以下(2)及び(3)においても同様。
(2)非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除  経営承継相続人等が、認定承継会社の代表権を有していた一定の個人(以下「被相続人」という。)から相続又は遺贈によりその認定承継会社の非上場株式等を取得した場合には、その非上場株式等のうち対象非上場株式等(発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2に達するまでの部分に限る。)に係る相続税については、担保の提供を条件に、その経営承継相続人等の死亡の日までその納税が猶予される(旧措法70の7の2①)。
(3)非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除の特例  特例経営承継受贈者(相続人等)が、特例認定(贈与)承継会社の非上場株式等を有していた者から贈与又は相続若しくは遺贈によりその特例認定(贈与)承継会社の非上場株式等を取得した場合には、その取得した全ての非上場株式等に係る贈与税又は相続税については、担保の提供を条件に、その特例贈与者又は特例経営承継相続人等の死亡の日まで、その納税が猶予される(旧措法70の7の5①、70の7の6①)。

2 改正の内容
(1)資産保有型会社又は資産運用型会社となる判定期間の見直し
 認定贈与承継会社の事業活動のために必要な資金を調達するための資金の借入れ、その事業の用に供していた資産の譲渡又は当該資産について生じた損害に基因した保険金の取得その他事業活動上生じた偶発的な事由でこれらに類するものが生じたことによりこの要件の判定期間内のいずれかの日において当該認定贈与承継会社に係る特定資産の割合が100分の70以上となった場合には、その事由が生じた日から同日以後6か月を経過する日までの期間を除くこととされた(措令40の8⑲)。これらの事由に該当した場合には、継続届出書にこれらの事由の詳細等を記載しなければならない(措規23の9三ニ)。
 また、資産運用型会社についても同様の見直しがされており、認定贈与承継会社の事業活動のために必要な資金を調達するために特定資産を譲渡したことその他事業活動上生じた偶発的な事由でこれに類するものが生じたことによりいずれかの事業年度における当該認定贈与承継会社に係る総収入金額に占める特定資産の運用収入の割合が100分の75以上となった場合には、資産運用型会社となる要件を判定する期間から、その事業年度の開始の日からその事業年度終了の日の翌日以後6か月を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を除くこととされた(措令40の8)。
 これらの見直しは、一般措置における相続税の納税猶予及び特例措置における贈与税・相続税についても、同様に行われている。
(2)添付書類の簡素化  贈与税の納税猶予の適用を受けている場合において、その贈与者が死亡したときは、猶予中贈与税額は免除され(措法70の7⑮)、その猶予中贈与税額に対応する対象受贈非上場株式等はその贈与者から相続したものとみなされ相続税の課税対象となる(措法70の7の3①)。この際、相続税の納税猶予に切り替える手続きとして、贈与税の免除届出書に添付しなければならなかった臨時報告書の提出が不要とされ、切替確認書のみを提出すれば足りることとされた(措規23の9)。
 なお、特例措置についても、同様の見直しが行われている(措規23の12の2)。

3 適用関係  上記2(1)の改正は、平成31年4月1日以後に上記2(1)の事由が生じる場合について適用される(改正措令附則38⑨⑩)。
 上記2(2)の改正は、平成31年4月1日以後に提出する贈与税の免除届出書について適用される(改正措規17③)。

租税特別措置法等(登録免許税関係)の改正
1 帰還環境整備推進法人が取得した不動産に係る所有権等の移転登記等の税率の軽減措置の創設

1 制度の内容
 福島復興再生特別措置法に規定する帰還環境整備推進法人で一定の法人が、令和4年3月31日までに、帰還環境整備事業計画に記載された次に掲げる事業の用に供するため避難解除区域等内の土地等の取得をした場合には、その土地等の所有権の移転等の登記に係る登録免許税の税率は、その取得後1年以内に登記を受けるものに限り、所有権の移転の登記にあっては1,000分の10と、地上権又は賃借権の設定又は移転の登記にあっては1,000分の5とされた(震災税特法40の4)。
① 次に掲げる施設の区分に応じ、それぞれ次に定めるものの整備に関する事業
 イ 地域住民の共同の福祉又は利便のために必要なもの 駐車場、駐輪場、集会施設、休憩施設及び案内施設
 ロ 公共の用に供する施設 一定の道路、公園、広場及び緑地
② 帰還する住民の生活及び地域経済の再建のため、面積がおおむね500㎡以上の土地を適正な形状、面積等を備えた一団の土地とする事業

2 適用関係  上記の改正は、平成31年4月1日以後に帰還環境整備推進法人が土地等を取得する場合について適用される(改正法附則1)。

2 認定民間都市再生事業計画に基づき建築物を建築した場合の所有権の保存登記の税率の軽減措置の改正

1 改正前の制度の概要
 都市再生緊急整備地域に係る特例
 認定事業者が、都市再生特別措置法に規定する認定計画に基づきその計画認定の日から3年以内にその特定民間都市再生事業の用に供する建築物の建築をした場合には、その建築物の所有権の保存の登記に係る登録免許税の税率は、1,000分の3.5とされていた(旧措法83①)。
(注)建築物の要件((2)の特例についても同じ。)
 地上階数10以上又は延べ面積50,000㎡以上の耐火建築物が整備され、かつ、①又は②のいずれかに該当すること
(1)事業区域内において整備される公共施設用地面積が30%以上
(2)居住者等利便施設整備費が10億円以上

2 改正の内容
(1)適用対象となる建築物の要件の見直し
 上記の特例について、地上階数10未満の事業についての延べ面積の要件が50,000㎡以上から75,000㎡以上に引き上げられた(措令43の2①一)。
(2)適用期限の延長  適用期限が令和3年3月31日まで2年延長された。

3 適用関係  上記の改正は、平成31年4月1日以後に国土交通大臣の認定を受ける場合について適用され、同日前に国土交通大臣の認定を受けた場合については、従前のとおり(改正措令附則39①)。

3 特例事業者等が不動産特定共同事業契約により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等の税率の軽減措置の改正

1 改正前の制度の概要
(1)
不動産特定共同事業法に規定する特例事業者又は適格特例投資家限定事業者(以下「特例事業者等」という。)が、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる不動産で一定のものを取得した場合には、その不動産の所有権の移転の登記に係る登録免許税の税率は、平成31年3月31日までに登記を受けるものに限り、1,000分の13とされていた(旧措法83の3①)。
(2)特例事業者等が、不動産特定共同事業契約に係る不動産取引の目的となる一定の建築物の新築、改築又は特定増築等をした場合には、その建築物の所有権の保存の登記に係る登録免許税の税率は、平成31年3月31日までに登記を受けるものに限り、1,000分の3とされていた(措法83の3②)。

2 改正の内容  上記1(1)又は(2)の特例の適用要件について次の見直しが行われた上、適用期限が令和3年3月31日まで2年延長された。
(1)新築等をした建物及びその敷地をその新築等後10年以内に譲渡することとの要件が廃止された(旧措令43の3①四)。
(2)適用対象となる取得不動産の範囲に借地上の建物が加えられた(措令43の3①)。

3 適用関係  上記の改正は、平成31年4月1日以後に取得する不動産の所有権の移転登記に係る登録免許税について適用され、同日前に取得した不動産の所有権の移転登記に係る登録免許税については、従前のとおり(改正措令附則39②)。

4 租税特別措置等の適用期限の延長

1
 以下の租税特別措置等が令和4年3月31日まで3年延長された。
(1)経営強化計画に基づき行う登記の税率の軽減措置(措法80の2、震災税特法41の2)
(2)特定の社債的受益権に係る特定目的信託の終了に伴い信託財産を買い戻した場合の所有権の移転登記等の免税措置(措法83の4)
2 以下の租税特別措置が令和3年3月31日まで2年延長された。
(1)土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減措置(措法72)
(2)利用権設定等促進事業により農用地等を取得した場合の所有権の移転登記の税率の軽減措置(措法77)
(3)信用保証協会等が受ける抵当権の設定登記等の税率の軽減措置(措法78)
(4)農業競争力強化支援法に規定する認定事業再編計画に基づき行う登記の税率の軽減措置(措法80④)
(5)特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権の移転登記の税率の軽減措置(措法83の2の2)

5 配偶者居住権の創設に伴う所要の措置

1 改正の内容
 配偶者居住権の設定登記をする場合の課税標準は、不動産の価額(建物の固定資産税評価額)とされ、税率については、不動産の賃借権の相続による移転登記の税率と同水準となるよう本登記は1,000分の2と、仮登記については1,000分の1とされた(登法別表第1第1号)。
(注)仮登記後に本登記をする場合の税率は、1,000分の2から1,000分の1を控除した割合(登法17①)
 また、配偶者居住権の設定されている建物について、配偶者がその建物を取得して所有権の移転登記を受ける場合の税率は、所有権の移転登記の税率に100分の50を乗じて計算した割合となる(登法17④)。

2 適用関係  上記の改正は、令和2年4月1日以後に登記を受ける場合について適用される(改正法附則1七)。

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