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解説記事2019年07月22日 【法令解説】 開示制度に係る政令・内閣府令等の概要―株式報酬に係る開示規制の見直し及び「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書を踏まえた見直し―(2019年7月22日号・№796)

法令解説
開示制度に係る政令・内閣府令等の概要
―株式報酬に係る開示規制の見直し及び「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書を踏まえた見直し―

 前金融庁企画市場局企業開示課課長補佐 岡村健史
 金融庁企画市場局企業開示課課長補佐 川内裕登
 前金融庁企画市場局企業開示課開示業務室課長補佐 高橋敦子

Ⅰ はじめに

 令和元年6月21日、「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令」(令和元年政令第34号)及び「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(令和元年内閣府令第13号)が公布され、これらの改正とともに、「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」も改正を行った。
 本改正は、①経営陣等にインセンティブを付与するための業績連動報酬として、一定期間の譲渡を制限した株式(以下、「譲渡制限付株式」という。)を交付する際の開示規制の見直し、②「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」(以下、「充実懇」という。)の報告書(平成31年1月公表)を踏まえた見直しとなっている。
 本改正の施行については、①が令和元年7月1日から、②が令和元年6月21日からの施行となっている。
 本稿では、本改正について、パブリックコメントに対する金融庁の考え方なども踏まえて解説する。なお、意見にわたる部分については、筆者らの個人的見解であることをあらかじめ申し添えておく。

Ⅱ 本改正の内容

1 株式報酬に係る開示規制の見直し
(1)経緯等
 近年、経営陣等にインセンティブを付与するための業績連動報酬としての株式報酬の導入が広がっており、譲渡制限が付されている新株予約権証券(いわゆるストック・オプション)を交付する代わりに、労務の対価として譲渡制限付株式を交付する企業が増加している。
 譲渡制限が付されているストック・オプションについては、発行価額が1億円以上の有価証券の募集であっても、発行会社及び当該発行会社がその経営を支配している会社等(発行者である会社等が他の会社の発行済株式の総数を所有するものに限る。)(以下、「発行会社等」という。)の取締役、会計参与、監査役、執行役又は使用人(以下、「取締役等」という。)を相手方として勧誘等を行う場合には、有価証券届出書(以下、「届出書」という。)の提出は不要とされ(金融商品取引法(以下、「金商法」という。)第4条第1項第1号)、臨時報告書を提出することとされている(企業内容等の開示に関する内閣府令(以下、「開示府令」という。)第19条第2項第2号の2)。
 一方、労務の対価として取締役等に交付される譲渡制限付株式については、株式の発行価額が1億円以上(発行開始日前1年を通算した額)である場合には届出書の提出義務が課せられていることから、当該譲渡制限付株式についても、前述のストック・オプションと同様の措置を求める要望が多くあったことを踏まえ、整備を行ったものである。
(2)改正の概要
① 改正の趣旨
 本改正は、コーポレートガバナンスの強化に関する施策の一環として、企業の経営陣等に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与するため、株式による業績連動報酬の利用を促進することを目的としている。
② 改正内容  発行会社等の取締役等を相手方として、譲渡制限が付されている新株予約権証券の勧誘等を行う場合(取締役等にストック・オプションが付与される場合)、勧誘等の相手方が届出書に記載すべき情報を既に取得し、又は容易に取得することができるため、開示規制を適用せずとも投資家保護に欠けることはないとの観点から、前述のとおり当該ストック・オプションの付与については届出書の提出を不要としている。投資家保護の要否は交付対象者の性質によって決定されるものと考えられ、有価証券の種類によって決定されるものではないことから、金融商品取引法施行令(以下、「施行令」という。)第2条の12を改正し、取締役等を相手方とする株券等(株券又は金商法第2条第1項第17号に掲げる有価証券のうち株券の性質を有するもの)(脚注1)の取得勧誘又は売付け勧誘等を行う場合についても、ストック・オプションの場合と同様としている。
 施行令第2条の12第1号で新たに規定する株券等については、金融商品取引所に上場されている株券等(以下「上場株券等」という。)であって、取締役等が株券等の交付を受けることとなる日の属する事業年度経過後三月(外国会社にあっては六月)を超える期間(脚注2)譲渡が禁止されたものに限定している。これは、譲渡制限付株式の設計(脚注3)によっては、譲渡制限期間満了前の退任等、一定の理由による譲渡制限の解除の定めが存在するものがあることを踏まえ、投資家保護の観点から、最低限必要と考えられる期間を譲渡制限期間として規定したものであり、役員等の退任に伴って譲渡制限も解除されることを念頭においたものではないことに留意が必要である。譲渡制限期間が施行令第2条の12第1号で定める要件を満たす場合には、譲渡制限付株式の発行を決議した時点において、臨時報告書を提出(脚注4)し、満たしていない場合には取締役等に対し勧誘等を行う前に届出書を提出する必要があると考えられる。
 交付対象者の範囲については、「発行会社」の取締役等のほか、「発行会社が経営を支配している会社」の取締役等を相手方として発行する場合について届出書の提出を不要としているが、「発行会社が経営を支配している会社」の範囲は、株券等についてもストック・オプションと同様に開示府令第2条(脚注5)において規定している。
 また、施行令第2条の12の規定により募集又は売出しにおける届出書が不要となる場合であっても、ストック・オプションと同様に、株券等の発行価額又は売出価額の総額が1億円以上(脚注6)であるものにつき取締役会の決議等又は株主総会の決議があった場合には、臨時報告書の提出(脚注7)が必要となるように開示府令第19条第2項第2号の2の整備(脚注8・9)を行った。
 なお、臨時報告書において、譲渡制限付株式を普通株券等と分別して管理する方法の記載を求めることとした。これは、ストック・オプションの場合は、新株予約権証券自体に譲渡制限が付されているが、譲渡制限付株式については、株式自体に譲渡制限を付すのではなく、普通株式に別途当事者間の契約による譲渡制限を付すものが基本であることから、外形上は普通株式と区別がつかないため、譲渡制限の実効性を確保する必要があるためである(脚注10)。

2 充実懇報告書を踏まえた見直し
(1)経緯等
 監査人の異動が決定された場合及び監査人の異動があった場合には、企業は、遅滞なく臨時報告書を提出しなければならないこととされており、金融商品取引所の上場規程においても適時開示することが求められている。この臨時報告書等においては、異動に至った理由及び経緯、また、当該理由及び経緯に対する退任監査人の意見(意見を表明しない場合にはその旨及びその理由)を記載することが求められているが、実際に開示された異動交代理由では、概ね半数以上が「任期満了」との形式的な記載を行っており、実質的な異動交代理由が記載されていない例が多いことが明らかになっている(脚注11)。
 平成31年1月22日に取りまとめられた、充実懇の報告書(脚注12)では、臨時報告書で開示される監査人の異動理由の記載について、「任期満了」との記載は異動理由の開示として不適切であり、できるだけ実質的な内容を開示することが求められるとされた。また、会計監査人の選解任等に関する株主総会の議案の決定が監査役等によって行われることからすれば、監査役等は、経営者に対し、臨時報告書における異動理由の開示の充実を促すこと、さらに、監査人の異動に関する監査役等の意見を開示書類に記載することも検討すること、が求められるとされた。
 また、監査人の異動に係る臨時報告書における監査人の就任年月日の記載については、実際には、直近の監査契約(1年単位で更新)の始期を形式的に記載している例が多いが、監査人の異動について実質的な情報提供を行うべきこと、また、平成31年1月の開示府令改正で有価証券報告書に監査人の継続監査期間を記載することとしたことなどを踏まえれば、監査人の継続監査期間の始期を記載することが適当と考えられる。このため、この点に関しても併せて整備を行うこととした。
(2)改正の概要  上記の充実懇報告書を踏まえ、開示府令第19条第2項第9号の4ハを改正し、監査人の異動に関して、臨時報告書へ監査役等の意見を記載できるようにするとともに、当該異動する監査人の意見の記載についても、より積極的に意見が記載できるように規定の整備を行っている。併せて、継続在任期間の始期の記載を求めることとした。
 また、開示ガイドライン24の5-23-2を新設し、監査人の異動があった際に異動理由を例示することにより、臨時報告書においてより実質的な異動理由の記載を求めることとした。


脚注
1 株券における譲渡の制限については、発行会社と取締役等との間の契約による場合が基本的には想定されるものの、券面自体に譲渡制限が付される会社法第108条の規定による種類株券として発行される場合もあり得ると考えられるため、本条により有価証券届出書の提出を免除される株券は双方を含むものとしている。
2 例えば、3月期決算会社の場合は、取締役等が株式等の交付を受けることとなる日の属する事業年度を終了した年の7月1日以降に譲渡制限が解除される必要がある。
3 譲渡制限期間の終期を確定日としないケースについては、例えば、①終期を「取締役等が交付を受けることとなる日の属する事業年度経過後三月を超えた日の当該取締役等の退任日」とする、②「取締役等が交付を受けることとなる日の属する事業年度経過後三月を超えた日」までに退任した場合には原則として会社が当該譲渡制限付株式を無償取得する旨の条項を定める、など報酬プランの設計を工夫すること等により、施行令第2条の12第1号の要件を満たすことも可能と考えられる。
4 株式報酬には、事前交付型(譲渡制限付株式など)と事後交付型(パフォーマンスシェアなど)があり、本改正は、事前交付型を念頭においているが、施行令第2条の12第1号の要件を満たす場合には、事前発行型、事後発行型に関わらず、届出書の代わりに臨時報告書の提出で足りることとなる。
5 並行募集に関して発行価額の合算について定めている開示府令第2条第4項第4号又は第5号においては、1年間の通算規定を定める同項第2号のように、届出が免除されるストック・オプション(施行令第2条の12の規定に該当するもの)の発行価額を合算対象から除外する旨が明記されていないが、この点については、平成19年10月パブリックコメントNo.11において、合算対象から除外されるとの考え方が示されている。譲渡制限付株式についても同様の考え方が適用される。
6 発行価額又は売出価額の総額が1億円未満の場合において、金商法第4条第1項第1号から第4号に該当する場合には、有価証券通知書の提出が不要(金商法第4条第1項第5号、第5項、第6項)である。施行令第2条の12により届出書の提出が不要となる有価証券の募集又は売出しは、金商法第4条第1項第1号に該当することになるため、有価証券通知書の提出は不要となる。
7 取締役会決議又は株主総会の決議があった場合には、遅滞なく提出することが求められている。
8 開示府令第19条第2項第2号の2の整備に伴い、開示ガイドライン24の5-14-2及び24の5-14-3を新設している。
9 これは、金商法第4条第1項第1号に規定する有価証券の募集又は売出しについて臨時報告書の提出を求めるものだが、1年以内の発行価額の通算に関する規定は金商法第4条第1項第5号にかかるものであり、同項第1号に規定する有価証券の募集又は売出しについては適用されないため、発行価額又は売出価額の総額が1億円未満である場合、募集又は売出し開始前1年以内に募集又は売出しが行われた同一種類の有価証券の発行価額又は売出価額の総額と合算して1億円以上になるときであっても、臨時報告書の提出事由には該当しないこととなる。
 また、取締役等以外を相手方として勧誘等を行っている場合には、施行令第2条の12に該当しないため、発行価額が1億円以上の場合には、臨時報告書ではなく届出書の提出が必要となる。さらに、1年以内に発行価額の総額が1億円以上となるときは、開示府令第2条第4項第2号に該当するため、臨時報告書ではなく、届出書の提出が必要となる。
10 実務では、交付株式は交付対象取締役等が証券会社に開設した譲渡制限付株式専用の口座で管理され、発行会社は当該交付対象取締役等が保有する当該交付株式の口座の管理に関連して、当該証券会社と契約(当該口座の株式に係る振替請求を受けた証券会社が発行会社の許可がない限り振替ができない内容)を締結していることが多いと考えられる。
11 公認会計士・監査審査会が監査事務所のモニタリングを通じて把握した実質的な異動交代理由としては、監査報酬、監査人選定に関する方針(監査人の継続年数の長期化に伴う見直し等)、監査チームに対する不満(不正対応や過年度決算訂正等に関する監査人の対応や、監査チームの硬直的な対応、監査工数増加、経験の浅いスタッフが多く関与している等)のほか、企業側の業務の内容や規模の拡大、株主の異動、不正の発覚に伴う監査リスクの高まりを理由とする「監査人からの辞任等」が挙げられている。また、期中交代異動の理由としては、企業側の不適切会計等による監査人側からの辞任等、監査人との見解相違等による企業側からの解約等が挙げられている(公認会計士・監査審査会「平成30年版モニタリングレポート」70~72頁)。
12 充実懇報告書より抜粋
(2)監査人の交代理由の開示についての考え方
 監査人の交代理由及びこれに対する監査人の意見は、財務諸表利用者にとって、監査上の懸念事項の有無や監査品質に影響する事象の有無を把握する上で重要な情報であり、企業及び監査人は、臨時報告書において、実質的な内容を記載することが必要であるとの指摘がある。
 まず、監査人の任期が通常1年で終了することからすれば、「任期満了」との記載は、交代理由の開示として不適切である。
 また、「監査報酬や会計処理に関する見解の相違」といった実質的な交代理由があった場合に関しては、企業側と監査人側が具体的にどのような点で対立しているのか、できるだけ実質的な内容を開示することが求められる。
 その他の交代理由に関しても、少なくとも、公認会計士・監査審査会がモニタリングを通じて把握した内容(監査報酬、監査チームへの不満等の項目への該当の有無及びそれに係る具体的な説明)と同程度の実質的な情報価値を有する理由が開示されるべきである。
 会計監査人の選解任等に関する株主総会の議案の決定が監査役等によって行われることからすれば、監査役等は、経営者に対し、臨時報告書における交代理由の開示の充実を促すことが求められる。また、監査人の交代に関する監査役等の意見を記載することも検討することが求められる。
 監査人の交代に関して臨時報告書により開示を行うのは企業であるが、監査人にも、交代の理由・経緯に関し、財務諸表利用者に対する十分な説明・情報提供を行うことが求められる。

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