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コラム2019年07月22日 【SCOPE】 審判所が土地の取得費で“市街地価格指数”を認めず(2019年7月22日号・№796)

平成12年裁決との関係は?
審判所が土地の取得費で“市街地価格指数”を認めず

 相続で取得した土地を譲渡したことによる譲渡所得金額の計算上控除する取得費について、概算取得費か市街地価格指数などにより算出した価額によるべきか争われた裁決で、国税不服審判所は、市街地価格指数は市街地の宅地価格の推移を表す指標として使用されるものであるなどと指摘。請求人の主張する算定方法は合理的なものとは認められず、控除すべき取得費は、概算取得費とするのが相当であるとの判断を示した(東裁(所)平29第119号)。

市街地価格指数は個別の宅地価格の指標として適当とはいえず
 今回の事案は、請求人が相続により取得した土地及び建物を譲渡したことによる譲渡所得金額の計算上、当該土地の取得費について、譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額であるとして確定申告をした後、日本不動産研究所が公表する市街地価格指数などを基に算出した金額とすべきであったとして更正の請求をしたが、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分などを行ったため、請求人が通知処分の取消しを求めたものである。請求人は、市街地価格指数の割合に基づき時価相当額を算出する方法は、平成12年11月16日付裁決において「合理的」であると判断されており、これを考慮すべきなどと主張していた(参照)。

【表】当事者の主張(土地の取得費は概算取得費によるべきか否か)
原処分庁 請求人
 請求人の主張する土地の取得価額は、次のとおり、本件土地の取得に要した金額並びに設備費及び改良費そのものではなく、また、合理的推定価額ではないから、本件土地の取得費と認めることはできない。
(1)市街地価格指数は、個別の宅地価格の変動状況を直接的に示すものではなく、また、路線価方式は、あくまで相続税法22条(評価の原則)に規定する時価について、評価しようとする宅地の価額を算定する評価方法であることからすれば、請求人の主張する取得価額は、本件土地の取得に要した金額並びに設備費及び改良費そのものではないから、本件土地の取得費とは認められない。
(2)仮に合理的推定価額が取得費として認められるとしても、以下のとおり、請求人の主張額は、合理的推定価額ではない。
 ・市街地価格指数とは、市街地の宅地価格の推移を表す指標ではあるものの、昭和38年には本件土地は農地であって宅地ではなかったから、市街地の宅地価格の推移を用いた割合は本件土地の価格推移を反映した割合であるとはいえない。
 本件土地の取得費については、概算取得費によるべきではなく、次の理由から、合理的な算出方法で適正額を算出すべきである。
(1)本件土地の購入時の売買契約書等は見つからなくても、購入時期は明らかであるから、通常の取引価額を合理的に計算して取得価額を推定すべき。
(2)本件土地は、以下の方法が合理的な取得価額の算出方法といえる。
 ・日本不動産研究所が公表する市街地価格指数の割合に基づき時価相当額を算出する方法は、平成12年11月16日付裁決において「合理的」であると判断されているのであるから考慮すべきである。
 ・本件土地の昭和38年当時の路線価は設定されていないこと等から、本件土地に近隣する5地点の土地に接面する路線の路線価を任意に抽出した上、当該各地点の昭和38年から平成27年の路線価の変動率の平均値をもって、本件土地の路線価に当たる価額を推定した。この価額と市街地価格指数の割合に基づき算出した価額との平均額をもって、本件土地の取得費とすべきである。

 なお、平成12年裁決では、審判所が譲渡価額として、六大都市を除く市街地価格指数(住宅地)の割合を用いて算定を行っている。
土地の取得費は概算取得費が相当  措置法31条の4第1項は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等の取得費は、その土地等の譲渡に係る収入金額の100分の5に相当する金額(概算取得費)とする旨規定し、当該概算取得費が実額取得費に満たない場合で、かつ、実額取得費が証明できるときは、その土地等の取得費は実額取得費とする旨が規定されている。加えて、措置法通達31の4-1は、昭和28年1月1日以後に取得した土地等及び建物等の取得費についても、措置法31条の4第1項の規定に準じて計算しても差し支えない旨定めている。これは、昭和28年1月1日以後に取得した土地等の実額取得費が不明である場合等に昭和27年12月31日以前であれば認められた概算取得費を認めるものであり、国税不服審判所においても、納税者の利益に反しない限り、簡便な計算方法として合理的であると認めている。
 その上で審判所は、本件について請求人は売買契約書等が見つからないとして、土地の実額取得費を直接証明する資料等を提出しなかったことから、本件土地の譲渡所得の金額の計算においては、概算取得費をもって土地の取得費とするのが相当であると認めた。
 次に審判所は、請求人が主張する算定方法が昭和38年当時の本件土地の価額を推定する方法として合理的なものであるか否かについて検討している。請求人は、本件土地について、①譲渡収入金額に市街地価格指数により求めた割合(変動率)を乗じることによって算出した昭和38年当時の推定価額と、②近隣する5地点の路線価の平均倍率(変動率)から求めた昭和38年当時の推定路線価を基に算出した価額との平均額をもって、取得費とするのが相当であるとしていた。
 審判所は、本件土地は昭和38年当時に宅地として利用されていなかったことが認められるところ、市街地価格指数は「宅地価格」の推移を表す指標であり、また、路線価は、原則として「宅地」の評価に用いるものであるから、これらの指数又は金額の昭和38年から平成27年(譲渡の年)までの変動率をもって、本件土地のように農地から昭和38年以後に宅地へと利用形態の変更があった土地の昭和38年当時の価格を推定すること自体、その前提を欠くものであると指摘した。
 また、請求人推定額の算定の基礎とする「市街地価格指数」については、全国223都市の平均指数を3つの利用地域区分ごとに表示する極めて概括的なものであり、宅地価格の平均的な変動状況を全国的・マクロ的にみるのに適しているものではあっても、個別の宅地価格の推移を推し量る指標として適当なものとはいい難いとの判断を示した。
 なお、請求人が平成12年裁決を踏まえ市街地価格指数により算出する方法を考慮すべきと主張する点については、請求人の算定方法が昭和38年当時の価額を推定する方法として合理的なものと認められないことから、請求人の主張には理由がないとしている。

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