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税務ニュース2003年03月31日 どうしたら良い?複雑怪奇な新証券税制(下) 口座選択と節税のポイントを徹底解説!投資家のための新証券税制解説(下)

ニュース特集

どうしたら良い?複雑怪奇な新証券税制

口座選択と節税のポイントを徹底解説!
投資家のための新証券税制解説(下)


 前号では投資家の観点から新証券税制における口座選択を中心に解説しました。今回は前号同様新証券税制に詳しい宝田税理士の協力のもと、投資家のための節税法(税制活用)に焦点をあて新証券税制を解説します。新証券税制では、投資家自らが税制を理解し、状況を見極め、的確に判断し行動することが求められます。すなわち、これからの株式投資では、税制の知識を持っている人がトクをする時代に入ったと言えるでしょう。税制の知識不足により思わぬ不利益を受けることがないように本特集を是非とも今後の株式投資の参考にして下さい。


1.「譲渡損失の繰越控除」活用法 ~損切りのタイミング~

新証券税制

 平成15年1月から、上場株式等の譲渡損失が、その年の他の株式の譲渡益から引ききれなかったときは、その引ききれなかった損失を翌年以降に3年間繰り越して、将来の株式の譲渡益と通算することができるようになりました。
 この制度により繰り越すことができる損失は、売却により実現した損失であり、含み損については対象外となっています。投資家は、年末に含み損のある株式を保有している場合、その損失を“実現”させるかどうかが重要となります。
 年末の段階で年間通算の損益がマイナスの場合、含み損の実現は翌年にした方が有利です。これにより繰越控除の期間を1年長くすることができます。
 年間通算の損益がプラスの場合、前年以前から繰り越されている損失の有無、繰り越されている損失額(以下「繰越損失金額」という)と年間通算の譲渡益の大小によって取り扱いが変わってきます。繰り越されている損失がない場合は、含み損のある株式を年内に売却して譲渡益を圧縮した方が有利です。繰り越されている損失がある場合は、繰越損失金額と年間通算の譲渡益を比較します。年間通算の譲渡益が繰越損失金額を超える場合には、売却して含み損を実現し、譲渡益を圧縮した方が良いでしょう。年間通算の譲渡益が繰越損失金額以下の場合には、翌年以降に売却をすれば繰越控除の期間を1年長くすることができます。

2.「元本1000万円までの譲渡益非課税」活用法 ~値上り率に着目~

新証券税制

 平成13年11月30日から平成14年12月31日までに取得した上場株式等を、平成15年、16年と保有し続け、平成17年1月1日から平成19年12月31日に売却した場合には、元本金額1000万円まで、譲渡益を非課税とすることができます。投資家は、自ら非課税とする売却を選択することとされており、これを適用するためには、売却した年の翌年の3月15日までに「特定上場株式等非課税適用選択申告書」を所轄税務署まで提出しなくてはなりません。
 この特例によると元本金額が1000万円までなら幾ら譲渡益が出ようと無制限に非課税になります。元本金額は平成17年~19年の3年間の合計金額で、例えば平成17年に300万円、平成18年に400万円、平成19年に300万円という具合に、3年で合計1000万円まで適用できます。よって、より少ない元本でより大きい譲渡益が出たもの、つまり値上り率の高いものから順次適用する方が有利になります。ポイントは値上り額ではなく、値上り率です。

3.「特定口座」活用法 ~入庫額に注意~

新証券税制

 新証券税制では、譲渡益の算出に用いる取得価額の計算方法として、「総平均法に準ずる方法」を採用しています。「総平均法に準ずる方法」とは、売却の都度、その売却した銘柄に係る取得価額の平均額を計算する方法で、例えば、1月に1万円、2月に2万円で各1株ずつ購入し、3月に1株売却した場合の取得価額は1.5万円((1万円+2万円)÷2株)となります。この計算方法は特定口座、一般口座を問わず共通です。もっとも、一般口座から特定口座に入庫する場合には、「総平均法に準ずる方法」ではなく「先入先出法」が用いられる点には注意が必要です(一般口座から特定口座への入庫は、平成15年12月末までの期間限定で認められています)。「先入先出法」とは、先に取得したものから先に払い出すものと仮定して取得価額を計算する方法で、例えば前述の例では3月に売却した株式の取得価額は1万円(1月購入分)となります。これにより、特定口座に入庫すると取得価額が変化することがあります。以下の例を見てください。

 この例によると4月に特定口座に入庫した1株の入庫額は、先入先出法により2月に購入した20,000円となります。

 最近購入した株式の取得価額(20,000円)が、総平均法に準ずる方法により算定された平均取得価額(15,000円)を上回っている場合には、特定口座への入庫時に採用される取得価額が大きいため、税金面で有利になります。反対に、最近購入した株式の取得価額が、平均取得価額を下回っている場合には、特定口座への入庫時に採用される取得価額が小さいため税金面で不利になります。
 投資家は、現在一般口座に保有している株式を特定口座へ入庫することによって、取得価額がいくらに変化し、その結果有利になるのかそれとも不利になるのかを見極める必要があります。

4.「みなし取得費の特例」活用法 ~損失が出ている場合~

新証券税制

 平成13年9月30日以前に取得した上場株式等を、平成15年1月1日から平成22年12月31日までの間に売却した場合には、譲渡損益の計算に用いる取得価額として「実際の取得価額」に代えて「みなし取得費」を使うことができます(みなし取得費とは平成13年10月1日現在の株価の80%をいいます)。なお、みなし取得費の特例は「取得価額(購入代金+購入手数料)」の特例であるため、別途購入手数料をみなし取得費に加算することはできません。

 実際の取得価額(購入手数料込み)を用いるか、みなし取得費を用いるかは投資家の任意とされており、確定申告の際に選択をすることになりますが、この際にどちらを選ぶかがポイントになります。
 上場株式等の譲渡により売却益が出ている場合には、実際の取得価額とみなし取得費を比較して、いずれか高い方の金額を選ぶことになります。これにより譲渡益を小さくすることができ、結果として税金を少なくすることが可能です。
 一方、上場株式等の譲渡により売却損が出ている場合には、譲渡損失の繰越控除を適用してその損失を翌年以降に繰り越すことが可能です。この場合にも、みなし取得費の特例を用いることができます。実際の取得価額とみなし取得費のいずれか高い方の金額を選んでください。これにより翌年以降に繰り越す損失金額を大きくすることができます。売却損が出ている場合にも、その年の税金が変わらないからという理由でそのまま申告するのではなく、将来の税金を減らす努力をすることが大切です。


Profile

宝田 健太郎(たからだけんたろう)
税理士(東京税理士会)
宝田税務会計事務所
金融資産税務を専門分野とし、税務会計・資産管理業務を中心に取り扱う。
(著書)
「決定版 これ以上やさしく書けない!新証券税制」
(ダイヤモンド社)
(監修・寄稿)
ダイヤモンドザイ(ZAi)、週刊ダイヤモンド


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