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税務ニュース2003年05月18日 これが相続時精算課税制度(実践編)だ!(2003年5月5号・№018) ニュース特集2

ニュース特集2

これが相続時精算課税制度(実践編)だ!


 平成15年度税制改正において創設された相続時精算課税制度については、制度の概要を本誌No.001【1月6日号】・No.009【3月3日号】でお伝えしてきました。政省令の公布により細目が判明しましたので、実践上の疑問点をQ&A形式でお伝えします。

Q1
 一般の相続時精算課税制度には贈与者に65歳以上要件があり、住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税の特例には、特定贈与者の65歳以上要件がありません。
 贈与者が60歳である場合(特定贈与者の65歳以上要件を満たしていない場合)に、住宅取得等資金の特例で相続時精算課税の適用を受けると、以後住宅取得等資金に該当しない一般財産の贈与でも、相続時精算課税制度の対象となるのですか?


 YES。住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税の特例の規定を受けようとして相続時精算課税選択届出書を提出した者は「相続時精算課税適用者」、住宅取得等資金の贈与をした者は「特定贈与者」とそれぞれみなして、相続時精算課税制度が適用されます。制度の適用を受けると一般財産の贈与についても、「特定贈与者の65歳以上要件」を問われることなく相続時精算課税制度が適用されます。
 厳密には、「届出書に係る年分以後の贈与」が対象となるため下記の線表のように一般財産の贈与が先行した場合でも、その年中の贈与に該当する場合には、相続時精算課税制度が適用されます。


Q2
 養子に対して相続時精算課税制度に基づく贈与が行われた後に養子縁組を解消した場合、その後に相続が開始した時の元養子に係る相続税額の計算では、「2割加算」を行うことになるのでしょうか?

 養子の立場にある時に贈与を受けた財産(A)についての相続税額は、「2割加算」の対象にはなりませんが、養子縁組解消後に贈与を受けた財産(B)についての相続税額は、1親等の血族及び配偶者以外からの相続として「2割加算」することになります。
 特定贈与者の直系卑属がその特定贈与者の養子となっている場合(代襲相続人となっている場合を除く。「いわゆる孫養子」の場合)には、相続時精算課税制度の贈与を受けることができますが、特定贈与者の相続時には、その者に係る相続税額(全額)に「2割加算」を行うことになります。
 養子に対して相続時精算課税制度に基づく贈与を行った後に養子縁組を解消したとしても、元養子は特定贈与者からの贈与により取得した財産については相続時精算課税の申告を行なわなければなりません(相法21条の9⑤)。


Q3
 特定贈与者の死亡前に相続時精算課税適用者が死亡した場合、2,000万円の贈与を受けていた相続時精算課税適用者に妻子がいないときは、相続人となる特定贈与者とその配偶者(いずれも相続時精算課税適用者の親)が相続時精算課税の納税義務を引継ぐことになるのでしょうか?


 民法の相続分の規定及び相続税法21条の17③で準用することにしている国税通則法5条により、相続人となる相続時精算課税適用者の両親に相続時精算課税の納税義務(2,000万円の生前贈与を受けたことに対するもの)は承継されます。
 しかし、「相続人のうちに特定贈与者がある場合には、その特定贈与者は、当該納税に係る権利義務を承継しない(相法21条の17①但し書き)。」ことが規定されており、相続時精算課税適用者である子が死亡した場合、特定贈与者である父は、民法上、1/2の相続権を有するものの、相続時精算課税に係る納税義務を一切引継ぎません。
 一方、父親の妻(相続時精算課税適用者の母)は、民法・国税通則法からは、相続分である相続時精算課税に係る贈与額2,000万円の1/2、すなわち1,000万円について納税義務を引継ぐことになりますが(相法21条の17①但書きの前の部分)、相続税法施行令第5条の5の読み替え規定により、相続時精算課税適用者の各相続人(父母)から、特定贈与者(父)が除かれ、特定贈与者(父)がいないものとして計算した相続分を用いることとされているので、相続分は1となり、2,000万円すべての納税義務を引継ぐことになります。

Q4
 相続時精算課税制度では、アパ-ト等の収益物件(賃貸物件)を贈与することにより、当該収益物件のみならず、贈与後の収益を子に移転することができるので、収益物件の贈与が有利になるのではないかと実務家の間で検討されているようです。問題はないのでしょうか?

 収益物件の贈与は、贈与後の収益を受贈者(子)に移転する効果が期待できます。
 しかし、留意しなければならないポイントがあります。例として、相続時精算課税制度の適用を受けて、アパ-ト(賃貸建物)の建物だけを子に贈与した場合(当該敷地については親子間で使用貸借とします。)を考えます。
(1)負担付贈与
 賃貸人はアパ-トの賃借人から敷金・保証金等を預かっているのが通例です。建物の建築に要した借入金を受贈者に引継がせるのは無論のこと、敷金等を受贈者に引継がせる場合には、「負担付贈与」に該当すると考えられます。「負担付贈与」とされた場合には、贈与対象となった建物の評価額は時価(取得時における通常の取引価額)とする取扱いが個別通達(「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等に係る評価並びに相続税法第7条及び第9条の規定の適用について」)で明らかにされています。
 また、「負担付贈与」では、消滅した債務の額で譲渡したものとして、贈与者に所得税(譲渡所得)が課税されることになっています。
 このように「負担付贈与」では、贈与者・受贈者の双方に予期せぬ課税関係が生じさせる可能性があると指摘されています。
 「負担付贈与」の課税関係を回避するためには、贈与時に敷金等について受贈者への引継ぎを行わずに賃借人との間で精算してしまうことが考えられます。受贈者と賃借人との間で新たな賃貸借関係を締結することで、税務上は単純贈与として取扱うことが出来るでしょう。
 しかし、アパートの賃借人まで巻き込んだ事務手続きに煩わしさが否めませんし、このような手続を取った場合、賃借人との契約関係を解消した段階での建物の評価については、借家人の権利を控除すべきかという問題が生じると指摘されています。相続時の土地評価にも関係してくる問題となります。
 敷金等相当額の預金等の贈与を付けることで敷金等と預金等が相殺され「負担付贈与」が避けられるのではという実務家の希望的見解も見受けられますが、法的に受贈者が敷金返還義務を引継いでいることには変わりないとの否定的な見解もあり、課税当局も取扱いを明らかにしていません。
(2)敷地の相続時の評価
 アパ-トの建物だけを贈与した場合には、当該建物の敷地は、使用貸借とする場合が多いでしょう。相続発生時において、土地評価が自用地となるのか、貸家建付地となるのか、小規模宅地の評価減の適用を受けることができるのか、その後の貸付状況・利用状況により変わってくるものと考えられますので、十分な検討が必要です。
 負担付贈与の課税関係も敷地の土地評価の問題も相続時精算課税制度が原因で生ずる問題ではありません。これまでの税制上、生前贈与が不利であったために、問題点として浮上してこなかったのです。
 しかし、負担付贈与の課税関係を生じさせてしまうと、相続時精算課税制度の適用が、将来の相続税の前取りとして、贈与が相続に対して中立的であるべきとする考え方に反することになります。
 現時点では、課税当局の対応は明らかとなっていません。収益物件の贈与には、「負担付贈与」の取扱いに精通した専門家への適切な相談が不可欠と考えられます。

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