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会社法ニュース2009年03月16日 東京高裁、原審・実刑判決のファンド代表に執行猶予を付す(2009年3月16日号・№299) ニッポン放送株式のインサイダー取引事件、被告会社の罰金も2億円に

東京高裁、原審・実刑判決のファンド代表に執行猶予を付す
ニッポン放送株式のインサイダー取引事件、被告会社の罰金も2億円に

京高等裁判所第4刑事部(門野博裁判長)は2月3日、MACアセットマネジメントと元同社取締役・村上世彰氏に対するニッポン放送株式を巡る証券取引法違反(インサイダー取引)事件の控訴審で、原判決を破棄し、同社に罰金2億円、同氏に懲役2年・執行猶予3年、罰金300万円、追徴金11億4,900万6,326円の判決を言い渡した。同氏は即日上告。

原判決の判断  原審・東京地裁刑事第4部(高麗邦彦裁判長)では、いわゆる村上ファンドの代表であった村上氏が平成16年11月8日ころ、ライブドアの取締役であった堀江貴文氏・宮内亮治氏らからニッポン放送株式の大量取得を決定した旨を聞き、翌9日から公表前の平成17年1月26日までの間、計193万3,100株を計99億5,216万2,084円で買い付けたとする認定が行われ、平成19年7月19日、村上ファンドの投資顧問会社・MACアセットマネジメントに罰金3億円、村上氏に懲役2年(執行猶予なし)、罰金300万円、追徴金11億4,900万6,326円の判決が言い渡された(事件および量刑判断の概要について、本誌221号14頁参照)。
 本件は、この判決に対する被告会社・被告人の控訴を受けたものである。控訴審において被告側は、(1)法令の適用の誤り、(2)事実誤認、(3)量刑不当を主張した。

「法令の適用の誤り」に対する判断  上記(1)の主な主張は、原判決が、平成18年法律第65号による改正前の証券取引法167条2項にいう「決定」において、「公開買付け等が確実に実行されるとの予測が成り立つことは要しないと解するのが相当である。すなわち、実現可能性が全くない場合は除かれるが、あれば足り、その高低は問題とならないと解される」とし、また、「その実現可能性がなかったとはいえなかった」という事実が認められれば十分であると判示しているところ、「決定」には、実現の可能性が投資者の投資判断に影響を及ぼし得る程度には存在することを要し、その程度の可能性もない場合は含まれないと解すべきであるとするものである。
 判決は、「決定」への該当性について、証券市場の公正性と健全性に対する信頼を確保するというインサイダー取引規制の理念に沿って、当該「決定」が投資者の投資判断に影響を及ぼし得る程度のものであるか否かを、その者の当該「決定」に至るまでの公開買付け等の当否の検討状況、対象企業の特定状況、対象企業の財務内容等の調査状況、公開買付け等実施のための内部の計画状況と対外的な交渉状況等を総合的に検討して個別具体的に判断すべきと指摘したうえで、「証券取引法167条2項の「決定」に該当するといえるためには、決定に係る内容(公開買付け等、本件でいえば、大量株券買集め行為)が確実に行われるという予測が成り立つことまでは要しないが、その決定にはそれ相応の実現可能性が必要であると解される」とし、さらに、「主観的にも客観的にも、それ相応の根拠を持ってその実現可能性があるといえて初めて、証券取引法167条2項の「決定」に該当するということができるのである」と判断。
 門野裁判長は、原判決について、「公開買付け等が確実に実行されるとの予測が成り立つことは要しないと解するのが相当である」としたところは正当としても、「その余の判断については必ずしも賛同できない」と明確に述べ、しかしながら、原判決の判断が法令の適用の誤りとして判決に影響を及ぼすかについては、認定した事実関係を踏まえたうえでの総合的な検討が必要となるとしつつも、本件の「決定」は証券取引法167条2項の「決定」に該当するものと認められると結論している。

事実誤認の主張と「決定」の有無  上記(2)の主張について、判決は事実経過を仔細に検討。そのうえで判断される主な争点は、「株式会社ニッポン放送の総株主の議決権数の100分の5以上の株券等を買い集めることについての決定」の有無についてであるが、原判決が、平成16年9月15日をもって「その実現可能性は相当高かった」「ライブドアの業務執行を決定する機関が、……決定をした」とする点に対し、判決は、同日について「一般投資者の投資判断に影響を与える程度の決定があったと認めることは相当でない」とした。
 一方、同年11月8日会議の設定を堀江氏らが了承した段階につき、「この段階での……決定は、投資者の投資判断に影響を及ぼし得る程度に十分達しているということができ、証券取引法167条2項にいう「決定」に該当するものと判断される」と評価した。

量刑不当の主張と破棄・自判の理由  上記(3)の主張に対し、判決は、まず原判決につき、①被告人らの企業活動、市場操作的な面を量刑上余りに強調しすぎると起訴されていない事実を犯罪として認定し実質的に処罰したことになる、②村上ファンドの物言う株主としての側面をどのように評価すべきかについては未だ成熟した議論がなされているとは思われず、被告人の企業活動の一面のみをとらえて量刑事情として取り込むことには困難が伴うなどと指摘し、「刑事処罰としての非難の程度は、あくまで起訴にかかる法律違反(本件においては、ニッポン放送株に関するインサイダー取引)との関係を中心に検討されなければならない」として事実経過を再検討。
 門野裁判長は、「被告人が当初からインサイダー情報を利用して利得を得ようとしたものでなかったこと、当初は、被告人の得ている情報がいわゆるインサイダー情報に該当するとの認識自体も強いものではなかったこと、そこでは、被告人が法に違反しているとの明確な認識の下に行動していたとは思われないこと」などを十分考慮すべきと述べ、原判決の量刑が「被告人に対しその懲役刑に執行猶予を付さなかった点において、また、被告会社に対する罰金額を3億円とした点において重過ぎる」として原判決を破棄・自判したものである。

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