会計ニュース2009年12月14日 最高裁、旧日債銀の粉飾決算事件で有罪の原判決を破棄、高裁に差戻し(2009年12月14日号・№334) 税法基準の考え方による会計処理も当時は許容される
最高裁、旧日債銀の粉飾決算事件で有罪の原判決を破棄、高裁に差戻し
税法基準の考え方による会計処理も当時は許容される
最高裁判所第二小法廷(古田佑紀裁判長)は12月7日、平成10年12月に経営破綻した旧日本債券信用銀行の粉飾決算事件を巡り証券取引法違反の罪に問われた同行元代表取締役会長・頭取・副頭取3名に対する上告審で、第一審判決を是認して各人に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した控訴審判決(原判決)を破棄し、東京高等裁判所に差し戻す判決を言い渡した。
第一審・控訴審は税法基準を排斥 事件は、元会長ら3名が平成10年6月29日、平成10年3月期の当期未処理損失を本来は2,205億0,700万円であったところ、取立不能と見込まれる貸出金合計1,592億3,300万円の償却・引当てをしないことにより612億7,400万円に圧縮して計上するなど、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出したとするもの。
金融機関では当時、税法において無税償却・引当ての要件を充足した貸出金以外の貸出金については、金融機関の自主判断により有税償却・引当てを行うのが一般的で、銀行等金融機関の支援先等については原則として償却・引当てをしないとする慣行(以下「税法基準」という)があったとされる。
早期是正措置制度導入を控えた平成9年3月5日、大蔵省金融検査部長はいわゆる資産査定通達を発出。日債銀は資産査定通達に基づく査定基準として自己査定基準を作成し、これに従って自己査定を行った。ここでは、独立系ノンバンクA・Bの債務者区分は破綻懸念先、Cなど13社、Dなど5社は要注意先・破綻懸念先とされていた。
東京地裁刑事第3部は平成16年5月28日、資産査定通達等の基準に従えばA~Dの債務者区分はいずれも実質破綻先にあたり償却・引当不足額等が認められるなどとし、元会長に懲役1年4月、元頭取・元副頭取に懲役1年(3名とも執行猶予3年)の有罪判決。東京高裁第9刑事部においても平成19年3月14日、各人の控訴をいずれも棄却する判決を言い渡していた。
改正後基準の不明確性など指摘 最高裁判決は、本件当時、従来の税法基準の考え方による処理を排除して厳格に改正後の基準に従うべきことも必ずしも明確でなかったことなどから税法基準によって資産査定を行うことも許容されると指摘。
古田裁判長は、「資産査定通達等によって補充される改正後の決算経理基準の定める基準に従って日債銀の貸出金の評価をし……た原判決は、その点において事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものであって、破棄しなければ著しく正義に反する」と述べたうえで、税法基準の考え方に従って適切に評価した場合など、さらに審理する必要があるとし、全員一致で判決したものである(古田裁判官の補足意見がある)。
税法基準の考え方による会計処理も当時は許容される
最高裁判所第二小法廷(古田佑紀裁判長)は12月7日、平成10年12月に経営破綻した旧日本債券信用銀行の粉飾決算事件を巡り証券取引法違反の罪に問われた同行元代表取締役会長・頭取・副頭取3名に対する上告審で、第一審判決を是認して各人に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した控訴審判決(原判決)を破棄し、東京高等裁判所に差し戻す判決を言い渡した。
第一審・控訴審は税法基準を排斥 事件は、元会長ら3名が平成10年6月29日、平成10年3月期の当期未処理損失を本来は2,205億0,700万円であったところ、取立不能と見込まれる貸出金合計1,592億3,300万円の償却・引当てをしないことにより612億7,400万円に圧縮して計上するなど、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出したとするもの。
金融機関では当時、税法において無税償却・引当ての要件を充足した貸出金以外の貸出金については、金融機関の自主判断により有税償却・引当てを行うのが一般的で、銀行等金融機関の支援先等については原則として償却・引当てをしないとする慣行(以下「税法基準」という)があったとされる。
早期是正措置制度導入を控えた平成9年3月5日、大蔵省金融検査部長はいわゆる資産査定通達を発出。日債銀は資産査定通達に基づく査定基準として自己査定基準を作成し、これに従って自己査定を行った。ここでは、独立系ノンバンクA・Bの債務者区分は破綻懸念先、Cなど13社、Dなど5社は要注意先・破綻懸念先とされていた。
東京地裁刑事第3部は平成16年5月28日、資産査定通達等の基準に従えばA~Dの債務者区分はいずれも実質破綻先にあたり償却・引当不足額等が認められるなどとし、元会長に懲役1年4月、元頭取・元副頭取に懲役1年(3名とも執行猶予3年)の有罪判決。東京高裁第9刑事部においても平成19年3月14日、各人の控訴をいずれも棄却する判決を言い渡していた。
改正後基準の不明確性など指摘 最高裁判決は、本件当時、従来の税法基準の考え方による処理を排除して厳格に改正後の基準に従うべきことも必ずしも明確でなかったことなどから税法基準によって資産査定を行うことも許容されると指摘。
古田裁判長は、「資産査定通達等によって補充される改正後の決算経理基準の定める基準に従って日債銀の貸出金の評価をし……た原判決は、その点において事実を誤認して法令の解釈適用を誤ったものであって、破棄しなければ著しく正義に反する」と述べたうえで、税法基準の考え方に従って適切に評価した場合など、さらに審理する必要があるとし、全員一致で判決したものである(古田裁判官の補足意見がある)。
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