税務ニュース2003年06月09日 国税不服審判所、平成14年分上期の裁決事例集(44事例)を公表(2003年6月9日号・№022) 更正の予知を巡る注目裁決2事例を検証
国税不服審判所、平成14年分上期の裁決事例集(44事例)を公表
更正の予知を巡る注目裁決2事例を検証
国税不服審判所は、平成14年上期の裁決から44事例を掲載した裁決事例集No.63を公表した。国税不服審判所のホームページ上にも公表される。掲載された事例の内訳は、国税通則法関係9、所得税法関係9、法人税法関係8、相続税法関係10、消費税法関係3、登録免許税法関係1、国税徴収法関係4となっている。
今回公表された事例から、税理士の対応が問題となる更正の予知を巡る過少申告加算税の賦課決定処分について争われた2事例を紹介しよう。
事例のあらまし
請求人(自営業者)は、調査官の修正申告のしょうように応じ、5年分の修正申告を行ったが、前半2年分について過少申告加算税の賦課決定処分が行われた。
請求人は、「不正その他偽りの行為がないのであるから、これらの年分の修正申告は更正を予知して行ったものとはいえないため、過少申告加算税を賦課決定することはできない。」旨主張した。一方、原処分庁は、「請求人が調査により修正申告が必要であることを指摘されて修正申告書を提出したものであるから、過少申告加算税の賦課決定に違法はない。」旨主張した。
審判所の判断
審判所は、「前半2年分の修正申告書は、法定申告期限から3年を経過した日以後に提出されている。前半2年分の修正申告書が『更正があるべきことを予知してされたものではない』というためには、原処分庁において、請求人が『偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れた』ことの立証がされなければならない。しかしながら、原処分庁からは、具体的主張・証拠資料の提出がない。したがって、前半2年分の修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する『更正があるべきことを予知してされたものでないとき』に該当すると認められる。」として、前半2年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分を取り消した。
ひとこと
本裁決では、前半2年分の修正申告書の提出は、文字通りに、自主的な申告書の提出となる。このため、税理士は、脱税とされない案件では更正の期間制限(3年)を経過した修正申告に応じるように納税者を説得すると、「払わなくていいものを払わせた。」として、納税者から損害賠償を請求される可能性が生じるということになる。一方で、調査官の更正の期間制限(3年)を経過した修正申告のしょうようを突っぱねると、脱税を立証するために更なる調査を誘発しかねない惧れがあるだろう。税理士は、国税通則法上の除斥期間・加算税の取扱いを確認するとともに、納税者との信頼関係に応じた適切な対処の方法を考えておかなければならない。
事例のあらまし
請求人は、相続財産のうちの「本件宅地」を「特定居住用宅地等」に該当するものとして80%の評価減を適用して相続税の申告を行っていたが、請求人の住所が「本件宅地」と異なることに疑問を持った調査官は、請求人の関与税理士に対して、小規模宅地の評価減特例に関する電話連絡を行った。請求人は、電話連絡の後に、「本件宅地」を「特定居住用宅地等以外の宅地」として50%の評価減に訂正した修正申告を行った。
請求人は、「調査官から電話連絡を受けた税理士は、『調査』との意思表示を受けておらず、『指導』と認識した。修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する『更正があるべきことを予知してされたものでないとき』に該当する。」と主張している。
原処分庁は、「『調査』であるとの明確な意思表示をしなかったとしても、電話連絡により小規模宅地の評価減特例の適用について聴取・指摘したものであり、当該指摘は、通則法第65条第5項に規定する『調査』に該当する。」と主張した。
審判所の判断
審判所は、通則法第65条第5項に規定する「調査」とは「いわゆる外部調査はもちろんのこと、課税庁が、提出された申告書の内容を検討して、納税者に対して電話、文書等による質問をしたような場合も『調査』に該当するものと解される。」と判断して、請求を棄却した。
ひとこと
問題として連想されるのは、「新書面添付制度の運用に当っての基本的な考え方及び事務手続き等について(事務運営指針)」(本誌No.007【2月17日号】16ページ参照)との整合性だ。
「事務運営指針」では、「意見聴取を行い、その後に修正申告書が提出されたとしても、原則として、加算税は賦課しない。ただし、・・・・・・・修正申告が意見聴取の際の個別・具体的な非違事項の指摘に基づくものであり、『更正の予知』があったと認められる場合には、加算税を賦課することに留意する。」とされている。
意見聴取の方法は、電話による聴き取りでも差し支えないとされているが、書面添付した内容について、調査官から電話連絡があった場合など、税理士はどのように対応すれば、個別・具体的な非違事項の指摘⇒加算税の賦課を回避することができるのか、税理士の悩みは尽きないことであろう。
更正の予知を巡る注目裁決2事例を検証
国税不服審判所は、平成14年上期の裁決から44事例を掲載した裁決事例集No.63を公表した。国税不服審判所のホームページ上にも公表される。掲載された事例の内訳は、国税通則法関係9、所得税法関係9、法人税法関係8、相続税法関係10、消費税法関係3、登録免許税法関係1、国税徴収法関係4となっている。
今回公表された事例から、税理士の対応が問題となる更正の予知を巡る過少申告加算税の賦課決定処分について争われた2事例を紹介しよう。
法定申告期限から3年を経過した後に提出された修正申告書は、更正があるべきことを予知して提出されたものではないとして、過少申告加算税の賦課決定処分の全部を取り消した事例 |
事例のあらまし
請求人(自営業者)は、調査官の修正申告のしょうように応じ、5年分の修正申告を行ったが、前半2年分について過少申告加算税の賦課決定処分が行われた。
請求人は、「不正その他偽りの行為がないのであるから、これらの年分の修正申告は更正を予知して行ったものとはいえないため、過少申告加算税を賦課決定することはできない。」旨主張した。一方、原処分庁は、「請求人が調査により修正申告が必要であることを指摘されて修正申告書を提出したものであるから、過少申告加算税の賦課決定に違法はない。」旨主張した。
審判所の判断
審判所は、「前半2年分の修正申告書は、法定申告期限から3年を経過した日以後に提出されている。前半2年分の修正申告書が『更正があるべきことを予知してされたものではない』というためには、原処分庁において、請求人が『偽りその他不正の行為によりその全部又は一部の税額を免れた』ことの立証がされなければならない。しかしながら、原処分庁からは、具体的主張・証拠資料の提出がない。したがって、前半2年分の修正申告書の提出は、国税通則法第65条第5項に規定する『更正があるべきことを予知してされたものでないとき』に該当すると認められる。」として、前半2年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分を取り消した。
ひとこと
本裁決では、前半2年分の修正申告書の提出は、文字通りに、自主的な申告書の提出となる。このため、税理士は、脱税とされない案件では更正の期間制限(3年)を経過した修正申告に応じるように納税者を説得すると、「払わなくていいものを払わせた。」として、納税者から損害賠償を請求される可能性が生じるということになる。一方で、調査官の更正の期間制限(3年)を経過した修正申告のしょうようを突っぱねると、脱税を立証するために更なる調査を誘発しかねない惧れがあるだろう。税理士は、国税通則法上の除斥期間・加算税の取扱いを確認するとともに、納税者との信頼関係に応じた適切な対処の方法を考えておかなければならない。
調査担当者の電話による質問の後に提出された修正申告書は、更正があるべきことを予知して提出されたものであると認定した事例 |
事例のあらまし
請求人は、相続財産のうちの「本件宅地」を「特定居住用宅地等」に該当するものとして80%の評価減を適用して相続税の申告を行っていたが、請求人の住所が「本件宅地」と異なることに疑問を持った調査官は、請求人の関与税理士に対して、小規模宅地の評価減特例に関する電話連絡を行った。請求人は、電話連絡の後に、「本件宅地」を「特定居住用宅地等以外の宅地」として50%の評価減に訂正した修正申告を行った。
請求人は、「調査官から電話連絡を受けた税理士は、『調査』との意思表示を受けておらず、『指導』と認識した。修正申告書の提出は、通則法第65条第5項に規定する『更正があるべきことを予知してされたものでないとき』に該当する。」と主張している。
原処分庁は、「『調査』であるとの明確な意思表示をしなかったとしても、電話連絡により小規模宅地の評価減特例の適用について聴取・指摘したものであり、当該指摘は、通則法第65条第5項に規定する『調査』に該当する。」と主張した。
審判所の判断
審判所は、通則法第65条第5項に規定する「調査」とは「いわゆる外部調査はもちろんのこと、課税庁が、提出された申告書の内容を検討して、納税者に対して電話、文書等による質問をしたような場合も『調査』に該当するものと解される。」と判断して、請求を棄却した。
ひとこと
問題として連想されるのは、「新書面添付制度の運用に当っての基本的な考え方及び事務手続き等について(事務運営指針)」(本誌No.007【2月17日号】16ページ参照)との整合性だ。
「事務運営指針」では、「意見聴取を行い、その後に修正申告書が提出されたとしても、原則として、加算税は賦課しない。ただし、・・・・・・・修正申告が意見聴取の際の個別・具体的な非違事項の指摘に基づくものであり、『更正の予知』があったと認められる場合には、加算税を賦課することに留意する。」とされている。
意見聴取の方法は、電話による聴き取りでも差し支えないとされているが、書面添付した内容について、調査官から電話連絡があった場合など、税理士はどのように対応すれば、個別・具体的な非違事項の指摘⇒加算税の賦課を回避することができるのか、税理士の悩みは尽きないことであろう。
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