会計ニュース2003年07月28日 アドバックス社のオピニオン・ショッピングが明らかに(2003年7月28日号・№029) 東証への改善報告書にて監査人辞任の開示遅れの経過が判明
アドバックス社のオピニオン・ショッピングが明らかに
東証への改善報告書にて監査人辞任の開示遅れの経過が判明
人工雪事業・不動産関連事業を営む株式会社アドバックス社(マザーズ)は7月15日、東京証券取引所(東証)に改善報告書(http://www.tse.or.jp/listing/kaizen/030715a.pdf)を提出した。改善報告書には、同社が特許権の資産性をめぐりオピニオン・ショッピング(都合の良い意見を望み監査人交代を企図すること)の観点から監査人交代を模索した状況が克明に記載されており、興味深いものとなっている。
2週間の開示遅れ、その間に監査人探し
今回提出された改善報告書は、アドバックス社の会計監査人の辞任等に関して情報開示の遅延があったことから、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則」第22条第3項の規定に基づき、東証に提出されたもの。
これによると、同社は会計監査人である新日本監査法人より辞任の連絡が入った時点(5月15日)で会計監査人辞任の旨の適時開示をすべきであったところ、実際に情報が開示されたのは5月29日。2週間にわたり、投資家は監査法人の辞任を知らされずにいたことになる(次ページ参照)。
情報開示の遅れもさることながら、ここで問題となるのは会計監査人変更の理由。その理由とは、改善報告書の文言を引用すると、新日本監査法人に「人口雪の特許権の期末未償却残高79,883千円を全額償却」することを迫られたことから、「特許権の資産性を評価してくれる可能性がある監査法人に監査を行ってもらう」ため。いわば、オピニオン・ショッピングの観点から会計監査人の交代を計画していたことが改善報告書で明らかにされている。
最終的には特許権全額償却
その結果、今決算の監査は一時会計監査人(2名の公認会計士)が担当した。もっとも、最終的には特許権は全額償却されている。
会計監査人の交代は投資家にとっては重大関心事といえる。適時開示のより一層の充実・徹底が望まれる。また、オピニオン・ショッピングという発想はガバナンスの観点から妥当とはいい難い。
他方、新日本監査法人に対しては、そもそも3月決算の被監査企業との監査契約を決算発表直前の5月になって辞任するのはあまりに一方的かつ安易との批判もある。継続企業の前提の注記も導入され、会計士が実質的に判断する局面が増えている。その結果、実質的な判断の根拠を被監査企業へ説得する能力が今まで以上に求められているといえよう。
いずれにしろ、被監査企業・会計監査人ともに、誰のための監査かという視点(投資家保護の発想)が欠けていたのではないだろうか。
東証への改善報告書にて監査人辞任の開示遅れの経過が判明
人工雪事業・不動産関連事業を営む株式会社アドバックス社(マザーズ)は7月15日、東京証券取引所(東証)に改善報告書(http://www.tse.or.jp/listing/kaizen/030715a.pdf)を提出した。改善報告書には、同社が特許権の資産性をめぐりオピニオン・ショッピング(都合の良い意見を望み監査人交代を企図すること)の観点から監査人交代を模索した状況が克明に記載されており、興味深いものとなっている。
2週間の開示遅れ、その間に監査人探し
今回提出された改善報告書は、アドバックス社の会計監査人の辞任等に関して情報開示の遅延があったことから、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則」第22条第3項の規定に基づき、東証に提出されたもの。
これによると、同社は会計監査人である新日本監査法人より辞任の連絡が入った時点(5月15日)で会計監査人辞任の旨の適時開示をすべきであったところ、実際に情報が開示されたのは5月29日。2週間にわたり、投資家は監査法人の辞任を知らされずにいたことになる(次ページ参照)。
情報開示の遅れもさることながら、ここで問題となるのは会計監査人変更の理由。その理由とは、改善報告書の文言を引用すると、新日本監査法人に「人口雪の特許権の期末未償却残高79,883千円を全額償却」することを迫られたことから、「特許権の資産性を評価してくれる可能性がある監査法人に監査を行ってもらう」ため。いわば、オピニオン・ショッピングの観点から会計監査人の交代を計画していたことが改善報告書で明らかにされている。
最終的には特許権全額償却
その結果、今決算の監査は一時会計監査人(2名の公認会計士)が担当した。もっとも、最終的には特許権は全額償却されている。
会計監査人の交代は投資家にとっては重大関心事といえる。適時開示のより一層の充実・徹底が望まれる。また、オピニオン・ショッピングという発想はガバナンスの観点から妥当とはいい難い。
他方、新日本監査法人に対しては、そもそも3月決算の被監査企業との監査契約を決算発表直前の5月になって辞任するのはあまりに一方的かつ安易との批判もある。継続企業の前提の注記も導入され、会計士が実質的に判断する局面が増えている。その結果、実質的な判断の根拠を被監査企業へ説得する能力が今まで以上に求められているといえよう。
いずれにしろ、被監査企業・会計監査人ともに、誰のための監査かという視点(投資家保護の発想)が欠けていたのではないだろうか。
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