税務ニュース2013年07月29日 残余利益の源泉は諸般の事情を総合勘案(2013年7月29日号・№509) 審判所、無形資産の移転価格課税案件で全部取消し裁決

残余利益の源泉は諸般の事情を総合勘案
審判所、無形資産の移転価格課税案件で全部取消し裁決

大阪国税不服審判所は3月18日、移転価格課税案件で全部取消し裁決。
残余利益分割法を適用して独立企業間価格を算定する場合の残余利益の配分に当たり、当該残余利益の源泉を法人または国外関連者のいずれの分割要因とするかは、諸般の事情を総合的に勘案。
 この事案は審査請求人である武田薬品工業が国外関連者との間で行った医療用医薬品の販売取引および当該医療用医薬品に係る無形資産の使用許諾取引について、請求人が国外関連社から支払いを受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとして、原処分庁が法人税の更正処分等を行ったものである。
 争点としては、国外関連取引の独立企業間価格を算定するに当たり、原処分庁が医療用医薬品にかかる臨床試験費用のうち請求人が負担した費用の額を、請求人が有する研究開発に関する無形資産の価値を示す指標としたことが適法か否かといったことが挙げられている。
 審判所は、利益分割法および残余利益分割法の趣旨に鑑みると、残余利益分割法を適用して独立企業間価格を算定する場合における残余利益(超過利益)の配分に当たり、当該残余利益の源泉を法人または国外関連者のいずれの分割要因とするかについては、諸般の事情を総合的に勘案し、移転価格課税の目的に照らして実質的に判断すべきであると解されるとした。
 そのうえで本件についてみると、請求人は医療用医薬品を開発、製造して国外関連者に販売する製薬会社として位置づけられるとし、臨床試験に係る無形資産の形成等のための意思決定およびリスク管理等の主体は国外関連者であったということができると指摘。本件国外関連取引における残余利益(超過利益)を生み出す源泉としての臨床試験に係る費用は国外関連者の分割指標とするのが相当であると判断。法人税の更正処分等の全部を取り消した。これにより、法人税・地方税等と還付金は約152億円にのぼっている。

残余利益分割法とは?  残余利益分割法とは、利益分割法の一態様として、法人または国外関連者が重要な無形資産を有しており、当該無形資産が非関連者間の取引において通常得られる利益(基本的利益)に包摂されない超過利益(残余利益)を生み出す源泉になっている場合に、当該超過利益を重要な無形資産の価値を分割要因として配分することにより、独立企業間価格を算定する方法である。

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