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税務ニュース2003年09月16日 消費税、規則22条に代わる「時限措置」って何だ?(2003年9月8日号・№034) 新たな「益税」、その本質と問題点を探る

消費税、規則22条に代わる「時限措置」って何だ?
新たな「益税」、その本質と問題点を探る


 財務省は、消費税法施行規則22条1項(以下「規則22条」)に代わる、新しい端数処理の特例の創設(時限措置)を検討している。その内容は、総額の領収金額から消費税等相当額の金額を算定し、レシート毎に端数処理(実質的には1円未満の切捨て)をした金額を積上げ計算して消費税額等の基礎とする税額計算の特例の創設である。事業者のレジシステムの変更等の負担増に対して配慮した特例措置となるが、規則22条とは異なり、事業者に「益税」が生じると考えられ、新たな問題点ということもできる。
 財務省は、レジシステムの変更には期間を要することから、早急に結論を出したいとしているが、現在検討中だ。

「総額表示」での端数処理って何だ?
 財務省は、「総額表示」におけるレジシステムの基本的な考え方をホームページ上に明らかにしている(本誌【033】(9月1日号)8頁参照)。総額表示された商品の価格(税込価格)を基礎として集計したものを領収金額とするとしており、「税込価格の足し算」であり、集計に端数処理は生じないはずである。
157円
(税抜150円)

157円の商品を2個販売した場合
「税込価格」を基礎として計算
157円×2個=314円(領収する金額)

 それでは、円未満の切捨て処理を認めるという検討中の時限措置の内容はどのようなものであろうか。
 「時限措置」の計算方法は、領収する金額から、消費税額等を算定し、レシート毎に端数処理を行った上で積上げ計算を行い、消費税額の基礎とする計算方法(特例)ということになる。
 上記の例では、領収金額から消費税額等の金額が次のように算定される。
314円(領収する金額)×5/105=14.952・・円、この消費税額等について、円未満の端数処理を特例で認め、切捨ての場合には、14円として、積上げ計算を行おうとするものである。
 消費税の原則的な考え方では、課税期間の課税売上から消費税額等が算定される。したがって円未満の端数も集計されるが、「時限措置」では、レシート1枚毎に端数が切り捨てられる。大雑把に試算すると、レシート1枚毎に0.5円程度の切捨てとなるため、0.5円×レシート発行枚数の消費税額等相当額が軽減されることになるわけだ。
 規則22条では、端数処理により消費者に転嫁できなかった消費税分を国等が負担することになるが、検討中の時限措置の特例では、消費者は税込価格ベースでは、端数処理の恩典を受けておらず、国が事業者に譲歩したということができる。消費者の視点から見れば、負担した消費税額が事業者に留まる「益税」が生じることになる。
 また、端数処理については、税込価格を決定する段階で、円未満切捨ての処理(上記の例では、157.5円⇒157円)が行われていると見ることもできるが、総額表示では、内訳を表示することが義務付けられていないため、消費者が端数処理を実感できるかについては、保証されていない。

「時限措置」の意義と問題点
 「時限措置」には、事業者への「益税」批判を生じかねないという問題点があるが、財務省がこのような問題点を認識した上で「時限措置」による特例を検討しているのは、事業者に実質的な増税感、レジシステム等の変更に伴う費用の負担感が強いことに要因がある。
 「総額表示」の義務付けにより、規則22条に規定されている区分領収を適用することは難しい。規則22条は、本来、国等と消費者との関係であり、事業者は預かった消費税額等を納めるだけの立場だから、損得はないはずであった。しかし、事業者は、規則22条が適用されなくなることによって生じる負担を消費者に転嫁することが困難であると実感し、納税義務者である事業者自身の負担になると認識し、反発している。
 立法当局としては、「規則22条の不適用が実質的に増税だ。」という見方には同調できないが、レジシステム等の変更に伴う費用の負担感には一定の配慮を示すということで、「時限措置」の検討ということになったのであろう。
 「時限措置」により、レジシステム等の変更に伴う費用を間接的に国も負担するということになるのだが、このような「時限措置」は、制度設計的な整合性を持たず、特定業界の要望に配慮したものとして、その創設の是非に議論の余地が残るだろう。また、時限措置の特例計算を適用するための要件の設定に関心も集まることであろう。レジシステムの変更の内容は、実質的にこの要件により定まってくると考えられるからである。具体的には、①レシート上に端数処理後の消費税額等の金額を記載すべきか、②税込価格の値決めにおける円未満の端数処理と消費者への内訳表示を適用のための要件とすべきか、といった問題が考えられるが、いずれも税制的には本質的な問題ではない。立法当局は何も明らかにはしていないが、総額表示の導入に当っての費用負担と割り切るだけの問題である。
 時限措置を取りやめる時に、さらにシステムの変更を求めるような制度的な負担を求めると、「時限」でなくなるおそれが生じてくる。「時限」を明確にすることこそが、利用のハードルを高く設定することよりも肝要と、立法当局は考えることだろう。
 問題点もある「時限措置」とはいえ、総額表示の義務づけに伴う具体的な「落しどころ」となる案が浮上してきた。財務省は、平成16年4月の施行に間に合うように、レジシステム等の変更を進めるには、早急な具体案確定の必要性を認識している。検討中の結果が明らかになるのも、もうそろそろと言えそうだ。

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