税務ニュース2003年09月16日 社会福祉法人の理事長の横領を「給与所得」に認定(2003年9月15日号・№035) 大阪高裁、社会福祉法人の源泉徴収義務を認める逆転判決!
社会福祉法人の理事長の横領を「給与所得」に認定
大阪高裁、社会福祉法人の源泉徴収義務を認める逆転判決!
大阪高裁第7民事部(中田昭孝裁判長)は、社会福祉法人の当時の理事長が当該社会福祉法人から横領した金員は、「給与所得(認定賞与)」であると認定し、当該社会福祉法人に源泉徴収義務があると判示し、源泉所得税の納税告知処分等を認容する逆転判決を下した(平成15年8月27日、平成14年(行コ)第85号、納税告知処分取消等請求控訴事件)。
京都地裁・青森地裁では、国側敗訴
本件は、社会福祉法人の当時の理事長が横領した金員の給与所得性・当該社会福祉法人の源泉徴収義務が争点となった事件の控訴審である。
原審である京都地裁(平成11年(行ウ)第27号)は、社会福祉法人が理事長に本件金員を「支払った」ものということができるかどうかを疑問視し、法人が元理事長らに損害賠償を求め、その請求を認容する判決が確定していることもあり、法人の客観的な意思に反して金員の移動が行われたと認定した。このような認定の下に、法人が理事長から所得税を源泉する余地は考えられず、源泉徴収の対象となる所得税法28条1項に規定する給与所得と認めるのは無理であり、それ以外の所得として元理事長個人から所得税を徴収すべきであると結論付けた。
同旨の争点で争われた青森地裁(平成12年(行ウ)第3号)も、「役員としての職務執行の対価性であると評価するのは不合理」・「所得税を天引きする機会があったとは考えられない」などと判示して、法人から個人に移動された金員の給与所得性・当該社会福祉法人の源泉徴収義務を否定していた。
理事長の全面的な支配権から、横領⇒給与所得⇒源泉徴収義務を判示
控訴審判決で中田裁判長は、元理事長の社会福祉法人における地位等を検討し、理事長の権限は包括的であって、法人に対し実質的に全面的な支配権を有していたものと認定した。元理事長が有していたこのような支配権に照らせば、「法人から代表者個人への金員の移動は、法人の意思に基づくものであり、法人が元理事長に対し、経済的な利得を与えたものとみるのが相当」・「不正に取得する意図・行為があったとしても認定判断は左右されない。」と判示して、本件金員は、給与所得のうちの賞与に該当するものと解するのが相当であるとしている。
さらに、「(不法な利得であっても)その利得が給与所得と認められる以上は、源泉徴収義務者に納税義務を課すべきものであって、源泉徴収が困難であるかどうかは全く関係のないことである。」と判示して、社会福祉法人が負う源泉徴収義務から生ずる納税告知処分を適法なものと結論付けている。
大阪高裁、社会福祉法人の源泉徴収義務を認める逆転判決!
大阪高裁第7民事部(中田昭孝裁判長)は、社会福祉法人の当時の理事長が当該社会福祉法人から横領した金員は、「給与所得(認定賞与)」であると認定し、当該社会福祉法人に源泉徴収義務があると判示し、源泉所得税の納税告知処分等を認容する逆転判決を下した(平成15年8月27日、平成14年(行コ)第85号、納税告知処分取消等請求控訴事件)。
京都地裁・青森地裁では、国側敗訴
本件は、社会福祉法人の当時の理事長が横領した金員の給与所得性・当該社会福祉法人の源泉徴収義務が争点となった事件の控訴審である。
原審である京都地裁(平成11年(行ウ)第27号)は、社会福祉法人が理事長に本件金員を「支払った」ものということができるかどうかを疑問視し、法人が元理事長らに損害賠償を求め、その請求を認容する判決が確定していることもあり、法人の客観的な意思に反して金員の移動が行われたと認定した。このような認定の下に、法人が理事長から所得税を源泉する余地は考えられず、源泉徴収の対象となる所得税法28条1項に規定する給与所得と認めるのは無理であり、それ以外の所得として元理事長個人から所得税を徴収すべきであると結論付けた。
同旨の争点で争われた青森地裁(平成12年(行ウ)第3号)も、「役員としての職務執行の対価性であると評価するのは不合理」・「所得税を天引きする機会があったとは考えられない」などと判示して、法人から個人に移動された金員の給与所得性・当該社会福祉法人の源泉徴収義務を否定していた。
理事長の全面的な支配権から、横領⇒給与所得⇒源泉徴収義務を判示
控訴審判決で中田裁判長は、元理事長の社会福祉法人における地位等を検討し、理事長の権限は包括的であって、法人に対し実質的に全面的な支配権を有していたものと認定した。元理事長が有していたこのような支配権に照らせば、「法人から代表者個人への金員の移動は、法人の意思に基づくものであり、法人が元理事長に対し、経済的な利得を与えたものとみるのが相当」・「不正に取得する意図・行為があったとしても認定判断は左右されない。」と判示して、本件金員は、給与所得のうちの賞与に該当するものと解するのが相当であるとしている。
さらに、「(不法な利得であっても)その利得が給与所得と認められる以上は、源泉徴収義務者に納税義務を課すべきものであって、源泉徴収が困難であるかどうかは全く関係のないことである。」と判示して、社会福祉法人が負う源泉徴収義務から生ずる納税告知処分を適法なものと結論付けている。
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