会社法ニュース2014年12月22日 粉飾非関与の代表取締役に賠償命じる(2014年12月22日号・№576) ニイウスコー社の粉飾決算事件、「相当な注意」を用いたとは認められず
粉飾非関与の代表取締役に賠償命じる
ニイウスコー社の粉飾決算事件、「相当な注意」を用いたとは認められず
東証一部に上場していたニイウスコー社の粉飾決算をめぐり、その事実を知らずに同社株式を取得した原告株主が同社役員の責任を追及していた訴訟では、粉飾を主導した代表取締役会長・同副会長に損害賠償を命じる判決が下される一方で、非常勤監査役への損害賠償請求については原告株主の請求を棄却する判決が下されている(本誌516号40頁、529号40頁参照)。
本件は、原告株主が、“粉飾決算に関与していない”代表取締役社長(以下「被告社長」)の責任を追及した訴訟だ。
粉飾の事実を知らない役員の責任については、「相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかった」ことをその役員が証明したときは、その賠償責任を負わない旨が規定されている(金商法21②一)。
本件で争点となったのは、人事担当役員であった被告社長が「相当な注意」を用いていたか否かという点だ。この点に関し被告社長は、人事担当役員に過ぎなかったため、巧妙に仕組まれた循環取引などの不適切な取引を見破ることは不可能であったと指摘。被告社長は、「相当な注意」を用いても粉飾の事実を知ることができなかったため、損害賠償責任を負わないと主張した。
被告社長の主張に対し裁判所は、代表取締役は会社の業務執行全般を統括する責任を負っていると指摘。代表取締役であった被告社長は自己の担当外の部門において適正な業務執行が行われていないことを疑わせるような事情を発見したときは、自ら調査し、確認する義務があったと指摘した。
また、ニイウスコー社の粉飾に関し裁判所は、経営会議の席上で配布された資料で業績予想の数字が1週間毎に数億円から数十億円単位で増加し、約1か月後には売上高が約60億円以上も増加した数字が報告されるなど、明らかに不自然で疑わしい状況が存在していたと認定。この事実を踏まえ裁判所は、被告社長が「相当な注意」を用いたといえるためには、業績予想の変化などが不適切なものでないかどうかについて調査や確認を行っていたことが認められる必要があると判断した。
そのうえで裁判所は、被告社長が必要な調査確認を行った事情は認められないと指摘。「相当な注意」を用いていなかった被告社長に損害賠償を命じた。
ニイウスコー社の粉飾決算事件、「相当な注意」を用いたとは認められず
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本件は、原告株主が、“粉飾決算に関与していない”代表取締役社長(以下「被告社長」)の責任を追及した訴訟だ。
粉飾の事実を知らない役員の責任については、「相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかった」ことをその役員が証明したときは、その賠償責任を負わない旨が規定されている(金商法21②一)。
本件で争点となったのは、人事担当役員であった被告社長が「相当な注意」を用いていたか否かという点だ。この点に関し被告社長は、人事担当役員に過ぎなかったため、巧妙に仕組まれた循環取引などの不適切な取引を見破ることは不可能であったと指摘。被告社長は、「相当な注意」を用いても粉飾の事実を知ることができなかったため、損害賠償責任を負わないと主張した。
被告社長の主張に対し裁判所は、代表取締役は会社の業務執行全般を統括する責任を負っていると指摘。代表取締役であった被告社長は自己の担当外の部門において適正な業務執行が行われていないことを疑わせるような事情を発見したときは、自ら調査し、確認する義務があったと指摘した。
また、ニイウスコー社の粉飾に関し裁判所は、経営会議の席上で配布された資料で業績予想の数字が1週間毎に数億円から数十億円単位で増加し、約1か月後には売上高が約60億円以上も増加した数字が報告されるなど、明らかに不自然で疑わしい状況が存在していたと認定。この事実を踏まえ裁判所は、被告社長が「相当な注意」を用いたといえるためには、業績予想の変化などが不適切なものでないかどうかについて調査や確認を行っていたことが認められる必要があると判断した。
そのうえで裁判所は、被告社長が必要な調査確認を行った事情は認められないと指摘。「相当な注意」を用いていなかった被告社長に損害賠償を命じた。
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