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税務ニュース2017年12月04日 旅館の固定資産税めぐり納税者逆転敗訴(2017年12月4日号・№717) 高裁、観光客数等の減少により直ちに建物の価値減少は認められず

旅館の固定資産税めぐり納税者逆転敗訴
高裁、観光客数等の減少により直ちに建物の価値減少は認められず

旅館施設である家屋の固定資産税評価をめぐり、需給事情による減点補正率の適用が問題となった事件の控訴審で、納税者側が逆転敗訴(納税者側は上告等を提起)。
高裁、周辺地域の観光客数等が減少も倒産等による経営移譲で経営を継続している旅館が複数あることなどから、直ちに建物の価値が減少するとは認められないと判断。
 家屋の固定資産評価は、再建築費評点数に家屋の損耗による減点を行うことなどにより算定されるが、需給事情による減点を行う必要がある場合にはさらに家屋の需給事情による減点を行うものとされている(評価基準第2章第1節一、二)。本件では、納税者が経営する旅館施設(以下「本件家屋」)に需給事情による減点補正率を適用すべきか否かが問題となっていた。
 一審の宇都宮地裁は、「観光客入込数等の減少」(平成15年度から平成24年度にかけて観光客入込数は約27%減少、宿泊者数は約31%減少、宿泊施設等の数は約25%減少)や「土砂災害特別警戒区域内に所在すること」は本件家屋の市場性の減退に影響を与えるなどと認定し、需給事情による減点補正率の適用(15%減額)を認める判決を下していた(本誌693号4頁参照)。
 一審判決で一部敗訴した自治体側は、控訴を提起。これに対し東京高裁は、納税者側の請求の一部を認めた一審判決を取り消し、自治体側が逆転勝訴する判決を下した(東京高裁平成29年11月8日判決)。
 高裁は、需給事情による減点補正について、本件建物の需要が減少し、本件建物の交換価値を低下させることが明らかな客観的な地域的状況があればその適用が認められる場合があるというべきであるとしたうえで、本件家屋が需給事情による減点補正の対象となる「所在地域の状況によりその価格が減少すると認められる非木造家屋等」に当たるか否かを検討。具体的にみると、周辺地域の観光客入込数、宿泊者数、宿泊施設等の数の減少を認める一方で、倒産や経営移譲等をした旅館等には経営移譲により経営を継続している旅館等も複数存在していることを認定。観光客入込数等の減少により直ちに旅館である本件家屋についてその地域に所在するがゆえに家屋の価値が減少するというような地域性を認めるのは困難というべきであるとした。また、本件家屋が土砂災害特別警戒区域内に所在することが評価を補正すべき地域的事由と直ちに断定できないと指摘。本件家屋について需給事情による減点補正率を適用すべき事情は認められないと判断した。

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