税務ニュース2020年10月23日 ESG指標に連動するPSUの一部を損金に(2020年10月26日号・№855) 損金算入の対象となる「ROE」に対応する部分を分離
株式報酬の代表例としてリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬)とパフォーマンス・シェア(業績連動型株式報酬)があるが、現状ではリストリクテッド・ストックを導入している企業が多い。業績目標等の達成度合いによって交付株式数が変動するパフォーマンス・シェアの方がよりインセンティブ性は高いと言えるが、パフォーマンス・シェアの支給にあたりネックとなるのが税制だ。
リストリクテッド・ストック同様、パフォーマンス・シェアにも「事前交付型(パフォーマンス・シェア)」と「事後交付型(パフォーマンス・シェア・ユニット)」があるが、このうち「事前交付型」のパフォーマンス・シェアは法人税法上、損金算入できない。
一方、「事前交付型」のパフォーマンス・シェア・ユニットは法人税法上の「業績連動給与」に該当すれば損金算入することが可能だが、開示要件の厳しさなどにより、損金算入を断念する企業も少なくない。
こうした中、大手ハウスメーカーが、今年4月に開催した定時株主総会に付議したパフォーマンス・シェア・ユニット(以下、PSU)を業績連動給与として損金算入したことが判明した。注目されるのは、同社のPSUの「業績評価指標」に「ESG経営指標」が含まれている点だ。周知の通り、損金算入の対象となる業績連動給与は法人税法施行令69条⑩~⑫に列挙されており、このうち⑩は利益、⑪は株価、⑫は売上に関する指標について規定しているが、ESG関連指標はそのどれにも当てはまらない。したがって、ESG関連指標に基づき算定された業績連動報酬は、法人税法上の「業績連動給与」として損金算入できない(本誌791号8頁参照)。
同社のPSUは、ESG関連指標に加えROEを業績評価指標としているが、ESG関連の定性評価部分とROEによる定量評価部分を分離し、後者については損金算入を断念した上で、法人税法上損金算入の対象となる業績連動指標である「ROE」による定量評価部分のみを損金算入した模様。
投資家からはESGへの対応を迫る声が高まる中、損金算入できる部分だけを切り離すという同社の手法は参考になりそうだ。
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