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解説記事2020年11月30日 ニュース特集 暦年課税は廃止へ、相続税・贈与税一体化議論が開始(2020年11月30日号・№860)

ニュース特集
教育資金等の一括贈与特例も見直しの方向
暦年課税は廃止へ、相続税・贈与税一体化議論が開始


 政府税制調査会(会長:中里実東京大学名誉教授)は相続税・贈与税の一体化に向けた検討をスタートさせる。高齢化社会が進んだ結果、いわゆる“老老相続”が増加しており、相続による若年世代への資産移転が進みにくい状況がある。また、富裕層による節税策として連年贈与が増えてきていることも背景にあり、米国やドイツ、フランスのように資産移転の時期に関係のない中立的な税制の構築を図る。政府税制調査会では専門家会合(座長:増井良啓東京大学大学院法学政治学研究科教授)を設置し、来年から具体的な検討に入る。
 一方、与党の税制調査会による令和3年度税制改正の検討項目にも相続税・贈与税の一体化が入っている。どの程度まで検討が進むのか未知数だが注目される点だ。また、格差固定化につながるとの批判が出ている「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」及び「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」の適用期限(令和3年3月31日)の延長の可否や贈与額の縮減等も令和3年度税制改正での大きな論点の1つであり、見直しの方向である。

富裕層による節税対策として連年贈与が増加

 政府が相続税・贈与税の一体化の議論を開始した大きな理由は、資産再分配機能の確保と資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築を図ることにある。
 昨今では、個人金融資産約1,700兆円のうち、60歳代以上が約6割(約1,000兆円)の資産を保有している。被相続人の高齢化が進んだことにより老老相続が増加しており、相続による若年世代への資産移転が進みにくい状況となっている。
 また、富裕層による節税策として連年贈与が増加していることも背景にある。日本では相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、相続税よりも重い税率構造が設定されている。しかし、高額な相続財産を有する場合には、相続財産が適用される限界税率を下回る水準まで財産を分割することで、相続税の累進負担を回避しつつ、多額の財産を移転することが可能になっている。
 例えば、法定相続分の相続財産が6億円超の場合、相続税率は55%となるが、仮に4,500万円に財産を分割して贈与すれば贈与税は50%になるため、累進回避が可能になる(図表1参照)。

 また、29歳以下の若年層に対して複数年にわたり連年贈与をするケースが多く見受けられており、贈与する期間が長いほど相続のみで移転する場合と比べて税負担が減少することになる。

資産移転の時期の選択に中⽴的な税制に転換へ

 このような状況を踏まえ、資産の移転の時期に関係なく、納税義務者にとって生前贈与と相続を通じた資産の総額に係る税負担が一定になるようにする仕組みを構築するというのが相続税・贈与税の一体化だ。贈与者は税負担を意識して財産の移転のタイミングを計る必要がなく、その一方で税率の格差を狙った意図的な税負担の回避も防止することができる。
 例えば、米国やドイツ、フランスでは、贈与税・遺産税(相続税)の税率表が共通となっており、相続・贈与に係る税負担の中立性が確保される制度を設けているといわれている。米国の場合は贈与税と遺産税は統合されており、一生涯の累積贈与額と相続財産額に対して一体的に課税するという遺産税方式が採用されている(図表2参照)。また、ドイツやフランスも贈与税と相続税は統合されており、一定期間(ドイツ10年、フランス15年)の累積贈与額と相続財産額に対して一体的に課税する遺産取得課税方式が採用されている(図表3参照)。

 これらの方式については、生前贈与と相続で税負担は一定とされているため、資産移転の時期に中立的であるとされている。
相続時精算課税は資産移転の時期に中立も
 日本は周知の通り、相続税の総額を法定相続人の数と法定相続分によって計算し、それを各人の取得財産額に応じ按分して税額を計算する方式である「法定相続分課税方式」が採用されている。贈与税は相続税とは別体系であり、「暦年課税」と「相続時精算課税」の選択制となっている。暦年課税については、生前贈与と相続で税負担が大きく異なっており、資産移転の時期に中立的ではないとされている。「相続時精算課税」の場合は、選択後は生前贈与と相続税で税負担は一定であり、資産移転の時期に中立的であるとされている。
 ただ、相続時精算課税は平成15年度税制改正で導入されたものだが、申告件数は暦年課税の37.4万件に対して4.3万件にとどまる。110万円以下の少額の贈与であっても申告しなければならない点などがネックになっている模様だ。
政府税調では暦年課税の廃止を求める意見
 11月13日に開催された政府税制調査会の総会では、暦年課税を廃止し、相続時精算課税に一本化すべきなどの意見が相次いだ。政府税制調査会が令和元年9月26日に取りまとめた「経済社会の構造変化を踏まえた令和時代の税制のあり方」でも、「資産課税が適切な再分配機能を果たしていくべく、そのあり方を不断に検討していく必要がある。」とされており、今後は、専門家会合を設置し、来年から検討を行うとしている。現時点ではどの方式を採用するかは定かではないが、外国の制度を見つつ、可能な限り中立な税制を目指すとしている。
教育資金の一括贈与特例は格差是正に逆行
 令和3年3月31日に適用期限を迎える「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」及び「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」については、令和3年度税制改正での大きな論点の1つとなっている。しかし、相続税・贈与税の一体化を進めるにあたっては、これらの非課税措置は富裕層を優遇するものであり、格差の是正に逆行する制度であるとの批判の声がある。また、教育資金贈与信託の新規契約数は令和元年度で9,413件(平成25年度は67,581件)、結婚・子育て資金贈与信託の新規契約数は令和元年度で212件(平成27年度は4,712件)にとどまっており、制度としての役割はほぼ終えたのではないかとの意見もある。
 このため、令和3年度税制改正では、贈与額の縮減などを含め、適用期限の延長の可否が検討される運びとなっている。

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