税務ニュース2020年12月25日 退職所得課税改正の狙いは“節税封じ”(2020年12月28日号・№864) 雇用流動化促進策にあらず 退職金500万円までの者には影響なし
周知の通り、現行制度上、退職所得は「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」により計算され、算式中の「退職所得控除額」は、勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数」により計算される。令和3年度税制改正大綱には、「退職所得課税の適正化」の一つとして、勤続年数5年以下の役員等以外の退職金については、退職所得控除額を控除した残額の300万円を超える部分を「2分の1課税」の適用対象外とする改正が盛り込まれている(令和4年分以後の所得税から適用)。
本改正の対象となる「勤続年数5年以下」の者の現行制度上の退職所得控除額は、上述の通り「40万円×勤続年数」となっているところ、本改正ではこれに「300万円」のアローワンスを与えている。このため、本改正を「雇用の流動化を後押しする政策」と捉え、その旨クライアントに説明している税理士等もいるようだ。確かに菅政権は「中途採用」の促進を政策の柱の一つに掲げており、本改正はこの政策ともマッチするようにも見える。
しかし、本誌取材により、本改正はあくまで「2分の1課税」を利用した節税スキーム封じに主眼に置いていることが確認されている。より正確に言えば、アローワンスの300万円を設けることで、「雇用の流動化を阻害せずに節税スキームのみを叩く」ことが本改正の意図ということになる。
具体的には、勤続年数5年であれば、退職金が500万円(=40万円×5年+300万円)までの者には本改正の影響は及ばない。通常、勤続年数5年以下で退職する者の退職金は最大でも100万円程度であることが多く、現行制度上の対象所得控除(200万円=40万円×5年)だけで十分足りる。これに300万円のアローワンスを設定した本改正では、5年程度で退職して500万円を超える退職金をもらう者を“特殊な者”と位置付けている。
役員等としての勤続年数が5年以下の者(特定役員等)は平成24年度改正で2分の1課税の対象外となっているため、本改正の影響はない。一方、特定役員等に該当しない同族関係者や執行役員などの中には本改正の影響を受ける者が出てくるだろう。
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