カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2020年12月28日 ニュース特集 書面添付制度に係る当局の確認事例・質疑等(2020年12月28日号・№864)

ニュース特集
意見聴取の方法・内容、聴取後の調査etc.
書面添付制度に係る当局の確認事例・質疑等


 税理士の申告書作成で果たした役割を明確化し、正確な申告書の作成・提出に役立つものとされる書面添付制度。税務当局は、添付書面を申告審理や準備調査等で活用するとともに、記載内容に関して積極的に意見聴取を行うとしている。意見聴取の方法等は事務運営指針に定められているが、本特集では、当局作成資料に記載されている書面添付制度の概要、意見聴取の方法・内容、意見聴取結果の税理士等への連絡、意見聴取後の調査、「実際にあった事例・質疑等」を紹介する。

添付漏れが明確であれば、後の提出が認められる余地も

 書面添付制度は、計算事項等を記載した書面が申告書に添付されている場合に、税務代理を行う税理士等に対し、添付書面の記載事項に関して意見を述べる機会を与えなければならないというもの。税理士等からの意見聴取は、納税者に税務調査の事前通知をする前に実施される(税理士法33条の2、35条)。
 この書面添付制度について、税務当局は、下記の質疑等で、複数税目が記載された添付書面への対応、添付書面を単独で提出することの可否、書面添付制度における「調査」と事後処理の関係を確認している。

実際にあった事例・質疑等

添付書面に複数の税目が記載されていた(例 法人税・消費税)。
【解説】

 添付書面については、それぞれの申告書に添付するものであり、複数の税目を記載することはできないことから、添付書面の記載内容を確認する必要があり、記載内容等に不備等があれば税理士等に対して補正等を求める。
【確認すべき事項】
 税目、事業年度、税理士等の氏名・事務所等の所在地等、添付書面作成に係る税理士等の氏名・事務所の所在地・所属税理士会等、依頼者の氏名・住所等、税務代理権限証書の提出の有無、押印

申告書を提出する際に添付書面を添付し忘れた場合、後から添付書面を提出できるか。
【解説】

 税理士法33条の2において、「税理士又は税理士法人は、……財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付することができる」旨規定されていることから、添付書面は申告書に添付して提出することを要件としている。
 したがって、添付書面のみを後から単独で提出することは、原則、認められない。
※申告書の「税理士法第33条の2の書面提出有」欄に提出有の表示があるなど、添付漏れであることが明確であって、後日、書面等により提出され、先に提出された申告書に添付することとした場合には、この限りではない。

書面添付制度における「調査」には、事後処理は含まれるか。
【解説】

 書面添付制度による「調査」とは、税理士法35条1項に「あらかじめ日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合」と規定されていることから、実際に納税者の納税地等に臨場して行う実地調査や実地調査以外の調査である事後処理(調査)などの調査等を指している。
※個人課税部門においては、行政指導に分類される事後処理(行政指導)についても、運用上、意見聴取を実施することとしている。

当局側の都合による電話での意見聴取は行わず

 意見聴取は、調査担当者が準備調査で疑問点・要調査項目を抽出した後、事前通知を行う場合に実施される。ただし、意見聴取の実施時期については、一律に「事前通知日の〇日前」と規定されていない。この点、税務当局は、税理士等が意見を述べるに当たって十分な時間的余裕が必要であることから、事前通知予定日の1〜2週間前までに税理士等に意見聴取を行う旨を通知し、事前通知予定日の前日までに意見聴取を終了するとしている。
 なお、税務当局は、意見聴取の方法・時期に関し、下記の質疑等で、電話による意見聴取の留意点、「更正前の意見聴取」(税理士法35条2項)のタイミングを確認している。

実際にあった事例・質疑等

税理士等から「意見聴取が電話で行われ、十分な意見聴取がなされなかった」との意見があった。
【解説】

 意見聴取の実施に当たっては、事務運営指針において、原則として税理士等に来署依頼する方法により行うよう定められている。ただし、税理士等が遠隔地に所在している場合など、来署が困難な場合には、電話による意見の聴き取り又は文書による意見の提出により行っても差し支えないとされている。
 このため、当局側の都合により意見聴取を電話で行うことがないよう留意する。

更正前の意見聴取(税理士法35条2項)を、調査結果の内容の説明前までに行うこととされたが、どのようなタイミングで行うのか。(指針改正に伴う質疑)
【解説】

 税理士法35条2項においては、添付書面が添付された申告書について更正をすべき場合には、当該添付書面を添付した税理士に対し、意見を述べる機会を与えることとされている(更正前の意見聴取)。 そこで、平成24年12月の事務運営指針の改正において、改正国税通則法(平成25年1月施行)により調査終了の際の手続として「調査結果の内容の説明」が法定化されたことを受け、「調査結果の内容の説明」を行う前までに「更正前の意見聴取」を行うことを明確化している。
 ところで、従前から、調査においては、添付書面に記載された事項に限らず税理士の主張を十分に聴取し、その意見を踏まえた上で、調査を実施しているところである。
 仮に「更正前の意見聴取」を「調査結果の内容の説明」の後に行うとした場合には、改めて添付書面に記載された事項を聴取することとなり、国税当局と税理士等の双方にとって二度手間(非効率)となるため、「調査結果の内容の説明」を行う前までに「更正前の意見聴取」を行うことを事務運営指針で明確にしたものである。

納税者の経理状態を良く把握する事務員の同席は問題なし

 税務当局は、意見聴取の内容について、①事業概況等、②添付書面に記載のある事項、③添付書面に記載のある事項に関連した事項、④意見聴取において税理士が意見陳述した事実及びその関連事項を質問し、添付書面の記載事項が少ない場合でも、①③及び④について意見を求めるとしている。
 また、質問の姿勢として、抽象的な質問に終始することなく、個別・具体的な質問を行い、単発ではなく更問いを行うなど、意見聴取した事項を波及させることを求めている。さらに、意見聴取の際、納税者の経理状態を良く把握している税理士等の事務員を同席させることに問題がないことを確認している。

実際にあった事例・質疑等

税理士等から「意見聴取の回答書を作るのに2時間要したが、それを調査担当者がろくに読みもせず、調査移行ありきの対応であった」との意見があった。
【解説】

 税理士等から「調査移行を前提とした意見聴取が行われている」という意見がある。調査担当者が書面添付制度の趣旨をよく理解していないことから起きた事例であり、本来は、意見聴取を実施しても、疑問点等が解明されない場合に調査移行するものである。
 よって、調査担当者は、準備調査等であらかじめ抽出した疑問点等を可能な限り意見聴取の場において解明するという意識をもって実施する必要がある。
【ポイント】
 意見聴取において、疑問点等が解明される回答を導き出すことは、普段、調査で鋭い追及をしている調査担当者であれば可能なことである。
 例えば、税理士等が添付書面に詳細な記載をしていなくても、帳簿書類名を記入していれば、調査担当者は、「その帳簿書類は誰が、いつ、何を原始帳票として作成しているか」「書面に記載された以外の帳簿書類はないか(「例えばこの様な書類」と投げかける)」など聞き方を工夫することで疑問点の解明につながる意見聴取を行うことができる。意見聴取をどこまで実効性のあるものにできるかは、調査担当者の意識の持ち方によると言える。

意見聴取の際に、税理士等の事務員を同席させてもよいか。
【解説】

 意見聴取は、税理士に対して行うものであり、税理士以外を同席させて行うものではない。しかし、税理士等の事務員が実務的には納税者の経理状態をよく把握している場合もあるため、そのような事務員を意見聴取に同席させることで、当局からの質問に対して、的確な回答が可能となることが考えられる。
 また、意見聴取の相手方となる税理士が納税者の経理状態を良く把握していなければ、意見聴取を有効に活用することが困難となるため、「意見聴取の有効な活用に努める」範囲内で、事務員の同席を認め、税理士を介して聴取することについては問題ない。
 したがって、意見聴取の際には、税理士法に規定のあるとおり、原則、税理士のみ意見聴取の場に参加させることとなるが、税理士等の判断により、納税者の経理状態を良く把握している事務員を同席させることは問題ない。

文書による結果の通知で税理士等の社会的信頼は向上

 意見聴取を行った結果、調査の必要がないと認められた場合、税理士等に「現時点では調査に移行しない」旨が連絡される(原則として、「意見聴取結果についてのお知らせ」を送付)。一方、調査の必要があるとされた場合は、納税者への事前通知前に、税理士等に対し、意見聴取の結果と「調査に移行する」旨が口頭(電話)により伝えられる。
 なお、意見聴取結果の連絡について、税務当局は、「お知らせ」文書の納税者への送付は不可、税理士等への調査移行理由の説明は不要などとしている。

実際にあった事例・質疑等

相続税事案と法人税事案との同時着手を予定していたが、法人税のみ添付書面が添付され、法人税に関する疑問点について意見聴取を実施したところ、疑問点が解消された。
【解説】

 「相続税事案と法人税事案を同時着手したい」という当局側の都合だけで具体的な調査理由もなく、法人税事案に対する調査移行することは適切ではない。
 意見聴取の際に疑問点が解消された今回のような事例においては、法人税事案についての調査移行は行わず、相続税事案を着手した後、法人に確認する事項が発生した場合において、法人に対して反面調査を実施するなどの対応が必要である。

税理士等により「意見聴取の結果、調査に移行しない場合における『お知らせ』文書について、納税者にも発送してほしい」との要望があった。
【解説】

 書面添付制度については、あくまでも税理士等に与えられた権利であり、調査の事前通知を行う前に税務代理権限証書を提出した税理士等から意見聴取を行うこととされているのであって、調査対象者である納税者から意見聴取をするものではない。
 また、税理士等に対して「意見聴取結果についてのお知らせ」文書による通知を行うこととなったのは、平成20年6月に国税庁と日本税理士会連合会との協議において、書面添付制度の一層の普及・定着を図るため、「意見聴取後、調査省略を行った場合には、文書による調査省略通知を行う」と合意されたことによるものである。
 このように税理士等に対して文書による通知を行うことにより、税理士等の存在意義をより一層高めるとともに、ひいては税理士等の社会的信頼の向上につながることから、こうした制度の趣旨を税理士等によく説明し、理解してもらう必要がある。

意見聴取後、調査移行となった際に、税理士等に対して調査移行理由を「長期未接触であるため」と説明した。
【解説】

 意見聴取後、調査に移行する場合、税理士等に対しては、意見聴取の実施結果を連絡するものであり、調査理由を説明するものではない。
 意見聴取を経て調査を行う場合は、書面添付制度の趣旨を尊重し、意見聴取における確認や説明等を十分踏まえて連絡する必要がある。
 なお、調査に移行する際に調査理由を求められた際は、例えば、「ご存知だと思いますが、意見聴取後に調査に移行する場合においても調査理由を開示するような制度とはなっておりませんので、調査理由を申し述べることはできません。意見聴取を実施してもなお確認させていただきたい事項がありますので、調査をさせていただくことになりました」などと返答する。

調査時の税理士等からの苦情を踏まえた調査担当者の対応は?

 税務当局は、意見聴取から調査に移行した場合、次の点に配意が必要としている。①調査着手時……意見聴取を行ったが、調査を実施することとなった旨を説明する。②質問時……意見聴取時に説明を得ている事項について質問する場合、「意見聴取時に先生から説明していただいている事項ですが、再度確認のためお聞きします」などの補足を加える。③調査終了時……意見聴取で質問し、説明を得たことにより効率的に調査ができた旨を伝える。

実際にあった事例・質疑等

調査の際、税理士等から、①「意見聴取時にも説明したはずである」②「そのことは、添付書面にも記載してある事項であるが、なぜ調査の段階で初めて聞くのか」③「意見聴取の際、もっと具体的に質問してもらえれば回答できた事項である」との苦情があった。
【解説】

 税理士等から苦情があった原因としては、①意見聴取の際に質問したことを再度同じように質問した。②添付書面の記載内容をよく確認せず、添付書面に記載があるにもかかわらず質問をしないまま意見聴取を終えていた。③意見聴取において、個別・具体的な質問を行わなかったことが考えられるため、十分な意見聴取を実施するとともに、意見聴取で質問した事項について再度質問等する場合には、質問の前に補足を加えるなど配慮する。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索