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解説記事2020年12月28日 SCOPE 国は両控訴審で“準ずる割合”による税負担累積排除実現を強調(2020年12月28日号・№864)

ムゲンの控訴審、ADW裁判の影響で審理続行
国は両控訴審で“準ずる割合”による税負担累積排除実現を強調


 判決言渡しが延期されていた(株)ムゲンエステート(以下「ムゲン社」)の控訴審の口頭弁論が12月16日に開かれた。今回の期日での結審を予想する声もあったが、同日の結審を求めた国側の意に反し、国側の「課税売上割合に準ずる割合」に関する主張に対する反論の機会を求めたムゲン社の要望が認められ、審理が続行されることになった。
 ムゲン社は同種事件の一審で勝訴した(株)エー・ディー・ワークス(以下「ADW社」)の判決文を東京高裁に提出しており、これを受けて国は「準ずる割合」に関する主張を強調し始めた模様。一方、ADW社控訴審においても、国の控訴理由書からは、「準ずる割合が選択できるのだから、税負担の累積の排除が適正・公平に実現できる」ことを前面に打ち出して争っていく姿勢がうかがえる。

審理終結か続行か、ADW社控訴審を見据えた国とムゲン社の攻防

 既報の通り、11月18日に予定されていたムゲン社の高裁判決の言渡しが延期されたが(本誌857号8頁)、当該裁判の口頭弁論が12月16日に開かれた。
 国は同日の口頭弁論終結を希望したが、ムゲン社は国の「課税売上割合に準ずる割合」に関する主張を「新規の主張」と捉え、反論の機会を求めていた。これに対し国は「従来からの主張である」旨訴えたものの、ムゲン社の要望どおり、審理が続行されることとなった。次回期日は2月10日に決定したが、おそらく同日には結審するものと思われる。
 国とムゲン社の一連のやり取りからは、同種事件の一審で勝訴(東京地裁9月3日判決。本誌849号4頁)したADW社事件の影響がうかがえる。ADW社の控訴審の第1回口頭弁論は1月26日に予定されているが、ムゲン社の控訴審続行決定の裏では、まずはムゲン社の控訴審で勝訴判決を得てその影響をADW社の控訴審にも及ぼしたい国と、ADW社が控訴審でも勝訴することを期待し、ADW社の後に判決言渡しを受けたいムゲン社の攻防が見て取れる。
一審の判断基準は「限定的・拡大的解釈」
 ADW社の控訴審では、のとおり、国が原判決に対する反論を展開している。

【表】

ADW一審判決 国の主張(控訴理由書)
用途区分の判定について 1.税負担の累積の排除という消費税法の目的に照らし、税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点から、当該課税仕入れがいかなる取引のために行われたものであるのかを、その経済実態に即して適切に判断すべき
2.本件ビジネスモデルにおいて課税仕入れの目的が収益不動産の売却にあることは明らかであるのに、将来の賃料収入が確実に見込まれるというだけで常に共通対応課税仕入れに区分することには問題が生ずる
3.活動が本来得ることを目的としている収入(課税売上げ)のほかに、当該活動の過程で生じる他の収入(非課税売上げ)が見込まれることにより、共通対応課税仕入れに区分されることになるのか否かについては、一義的に解するのではなく、その非課税売上げの発生の過程及び位置づけ、及ぼす影響や、占める割合など個別の事情を踏まえて判断するべき
1.原判決は、消費税法30条2項1号の文言を離れて、殊更に共通対応課税仕入れを限定的に解釈し、課税対応課税仕入れを拡大的に解釈するもの
2.消費税に係る税負担の累積の排除をいかに実現するかについては立法政策に委ねられているところ、消費税法30条が規定する仕入税額控除制度の仕組みは、事業者が同条1項ないし3項の規定する各算出方法を適切に使い分けることにより、具体的な事業状況に即した税負担の累積の排除を適正・公平に実現する合理的な内容となっている
3.①仕入税額控除の趣旨、②消費税法30条2項1号の「のみ要するもの」との限定的な規定、③上記2の3つのことから、課税売上対応課税仕入れ又は非課税対応課税仕入れとは、当該課税仕入れにつき将来課税売上げを生じる取引又は非課税売上げを生じる取引のみが客観的に見込まれる課税仕入れをいい、上記の取引の双方が客観的に見込まれる課税仕入れについては、全て共通対応課税仕入れに区分される
課税売上割合に準ずる割合について 1.本件ビジネスモデルの下では、収益不動産を転売する際に、建物と併せて敷地の譲渡が行われるのが通常であるため、課税売上割合が相対的に低くなり、当該課税売上割合と賃料収入額が売上げ全体に占める割合とのギャップによって、税負担の累積が生じてしまう
2.準ずる割合を用いるためには、合理的な計算方法を定めて事前に所轄税務署長の承認を受けておかなければならないのであって、本件ビジネスモデル下における課税売上割合とのギャップの問題が、準ずる割合の利用によって解消し得るものとは直ちに解し難い
1.原判決は、左欄2の根拠を何ら指摘しておらず、不明
2.準ずる割合を用いることに事務処理上の困難があるとも認められないから、原判決の指摘するギャップの問題は、準ずる割合を用いることにより解消され得る
3.「事前の承認は、特定の数値ではなく、計算方法について承認を得るものであること」「事業状況を事前に予測することが困難でも、当該課税期間が一定程度経過した時点で、その時点までの事業状況に即した準ずる割合の計算方法について承認申請し、当該課税期間から用いることができること」等からも、事前に承認を得ることの困難さはないといえる

 国は、原判決が示した新たな判断基準に対し、「規定の文言を離れた限定的・拡大的解釈」と反論。控訴理由書では、特に仕入税額控除制度の仕組みが事業者の事業状況に即して「課税売上割合に準ずる割合」が選択できる制度となっていることを強調し、「原判決のように、事業者における事業状況が課税売上割合に反映されていない場合があることを前提として、共通対応課税仕入れを限定的に解釈しなければ直ちに不合理な結果が生じるとは認められない」と主張している。
「解釈論」的判断基準は支持されるか
 両控訴審判決でまず注目されるのは、用途区分判定の判断枠組みについて、東京高裁がどのような考えを示すのか−−ADW社一審判決が示した解釈論にまで踏み込んだ判断枠組みが支持されるのか、あるいは、ムゲン社一審判決のように「立法政策上の問題」と割り切るのか−−という点だ。
 また、両控訴審において、解釈論的主張に対しては「(たとえ課税売上割合が納税者に不利益なものであったとしても)課税売上割合に準ずる割合が選択できるのだから、税負担の累積の排除が適正・公平に実現できる」ことを前面に出して争っていくという国の姿勢がうかがえる。国のこの主張に対する東京高裁の判断も注目されるところだ。

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