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解説記事2021年01月11日 第2特集 Q&Aで読む改正会社法に伴う法務省令のポイント〜株式交付制度編〜(2021年1月11日号・№865)

第2特集
令和3年3月1日より株式交付制度が創設
Q&Aで読む改正会社法に伴う法務省令のポイント〜株式交付制度編〜


 令和元年12月11日に公布された改正会社法等を踏まえた会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年法務省令第52号)が令和2年11月27日に公布され、原則として令和3年3月1日から施行される。最終回となる第4回目は、創設された株式交付制度について法務省令案に寄せられた意見に対する法務省の考え方などを元にQ&A形式で解説する。
 現行法上、自社の株式を対価として他の会社を子会社とする手段として株式交換制度があるが、完全子会社とする場合でなければ利用することができない。また、自社の新株発行等と他の会社の株式の現物出資という構成をとる場合には、手続が複雑でコストがかかるという問題点が指摘されている。このため改正会社法では、完全子会社とすることを予定していない場合であっても、株式会社が他の株式会社を子会社とするため、自社の株式を他の株式会社の株主に交付することができる株式交付制度(2条、774条の2〜774条の11、816条の2〜816条の10)が新たに設けられることになった(参照)。

株式交付制度(会社法施行規則関係)

株式交付子会社は形式基準で判断
Q

 株式交付子会社の判断基準(会社法施行規則4条の2)については、実質基準ではなく形式基準とされているが、それはなぜか。
A
 例えば、株式交付の手続を進め、その効力発生日が到来した後に、株式交付の要件を満たさないこととなるなどした場合には、法律関係が混乱するなどのおそれがあるため、株式交付に関する規律の対象の範囲は、株式交付をする前に判断することができる客観的かつ形式的な基準によって定めることとしたものとなっている。
 会社法施行規則3条3項2号及び3号に掲げる場合に該当するか否かを判断するためには、自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権の数や、取締役会に占める自己の役員等の数など、必ずしも株式交付をする前には該当の有無を確認することができない株式交付手続外の事情を考慮したり、実質的な判断をしたりすることが必要となり、株式交付を実施することの可否について、株式交付をする前に客観的かつ形式的な基準によって判断することができないこととなってしまうからである。

管財人が選任されないケースでは再生会社を子会社とすることも可能
Q

 会社法施行規則4条の2では、株式交付子会社とすることができる子会社を会社法施行規則3条3項1号に掲げる場合に限るものとしているが、同号柱書の括弧書きにおいては、同号イからニまでに規定する更生会社等であって、「有効な支配従属関係が存在しない」ものを同号の子会社の定義から除いている。更生会社は管財人の管理下にあることが通常であることから、更生会社を株式交付により子会社とすることはできないが、その一方で、必ずしも管財人が選任されるものではない民事再生手続においては、他の会社が株式交付により再生会社を子会社とすることもできると考えられるが、そのような理解でよいか。
A
 更生手続開始の決定を受けたのみでは子会社に該当しないこととなるものではないが、更生管財人の管理下に置かれている会社は、会社との間で有効な支配従属関係が認められず、組織の一体性を欠くと認められ、子会社に該当しないことになるため、そのような更生会社を株式交付により子会社とすることはできない。一方で、民事再生手続においては管財人等が選任されないことがあり得るため、このような場合には、株式交付により再生会社を子会社とすることができると考えられる。

下限を満たさなければ株式交付計画に瑕疵
Q

 株式交付親会社が株式交付計画において定めた「下限」以上の数の株式交付子会社の株式を譲り受けたが、株式交付子会社の議決権総数の変動により、結果的に会社法2条32号の2に定める「子会社」にならなかった場合の効果はどうなるのか。
A
 株式会社が株式交付をする場合には、株式交付計画において、株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限を定めなければならないこととされている(会社法774条の3第1項2号)。この下限の定めは、株式交付子会社が効力発生日において株式交付親会社の子会社(会社法施行規則3条3項1号に掲げる場合に該当する子会社に限る)となる数を内容とするものでなければならないこととされている(会社法774条の3条2項、2条32号の2、会社法施行規則4条の2)。したがって、結果的に子会社とならなかったような場合には、株式交付計画において定めた下限が同項の要件を満たしておらず、当該計画には瑕疵があることとなる。なお、株式交付の無効は、訴えをもってのみ主張することができることとされている(会社法828条1項13号)。

株式交付子会社の公告掲載日の特定は可能
Q

 会社法施行規則213条の8において、株式交付親会社は、株式交付子会社の会社法440条の規定による公告に関する事項(同条1号)及び株式交付子会社につき最終事業年度がない場合にはその旨(同条5号)を公告しなければならないこととされているが、これらの事項を必須の公告事項とすることは、株式交付親会社にとって大きな負担になると考えられるがどうか。
A
 株式交付の場合には、株式交換の場合と異なり、株式交付子会社は株式交付の手続の直接的な当事者でなく、株式交付親会社が株式交付子会社の情報を入手することができない可能性がある。もっとも、会社法施行規則213条の8第1号イからハまでに定める事項については、例えば、株式交付子会社の登記を確認することにより、株式交付子会社の公告方法を確認することができ、公告方法が判明すれば、会社名で検索をすることなどにより、公告の掲載日を特定することも可能であると考えられる。したがって、これらの記載を株式交付親会社に要求することも過度の負担を課すものではないとされている。
 一方で、株式交付親会社が公開情報から株式交付子会社の最終事業年度の存否を確認することは困難を伴う場合が想定される。このため、法務省令案の会社法施行規則213条の8第5号は修正されることとなり、「公告対象会社につき最終事業年度がない場合」の下に「(株式交付親会社が株式交付子会社の最終事業年度の存否を知らない場合を含む。)」が追加されることになった。
 なお、株式交付親会社において、株式交付子会社に最終事業年度があることは確実であるが貸借対照表の要旨の内容を知らないときには、同条6号が適用され、株式交付子会社に最終事業年度があるか否かが不明であるときには、同条5号が適用されることになると考えられる。

株式交付親会社が有する株式交付子会社の議決権数は明らかに
Q

 株式交付親会社又は株式交付子会社の株主等の関係者にとっては、株式交付の結果、株式交付親会社が有することとなった株式交付子会社の株式の数や議決権の数は重要な事項であると考えられる。このため、事後開示事項に、株式交付の結果、株式交付親会社が有することとなった株式交付子会社の株式の数及び議決権の数を加えるべきではないか。
A
 株式交付計画において、株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限についての定めが、株式交付子会社が効力発生日において株式交付親会社の子会社となる数を内容とするものとされたか否かが公開情報からは不明である場合が考えられる。このため、法務省令案は修正されることとなり、「法第774条の3第1項第2号に掲げる事項についての定めが同条第2項に定める要件を満たすと株式交付親会社が判断した理由」を株式交付親会社の事前開示事項とすることとされた(会社法施行規則213条の2第1号)。
 この修正により、事前開示事項とされた事項、その他の株主権の行使により得られる情報、登記等の公開情報を照らし合わせれば、株式交付親会社が有することとなった株式交付子会社の議決権の数は明らかになると考えられる。

株式交付制度(会社計算規則関係)

現物出資スキームは株式引受権の対象外
Q

 株式引受権の定義(会社計算規則2条3項34号)は、会社計算規則54条の2第1項で規定する「法第202条の2第1項の募集株式」のケースにのみ適用されることが明記されていないが、取締役又は執行役が職務執行の対価として報酬を得る権利(金銭報酬債権)を現物出資するスキームの場合も含まれるのか。
A
 株式引受権の額が増加するのは、取締役又は執行役が会社法202条の2第1項に基づいて割り当てられた募集株式を対価とする役務を提供した場合に限られる(会社計算規則54条の2第1項)。いわゆる現物出資構成をとる場合には、取締役又は執行役が株式会社に対して提供した役務の対価として受領するのは金銭債権であることから、株式引受権の定義(会社計算規則2条3項34号)には該当しない。

「公正な評価額」とは
Q

 会社計算規則42条の2第1項1号イ・ロについて、取締役等が職務の執行の対価として、当該株式会社に提供した役務の「公正な評価額」はどのように算定するのか。また、会社計算規則54条の2第1項について、割当日前に職務の執行の対価として当該募集株式を対価とする役務を提供した場合の株式引受権として計上する「公正な評価額」はどのように算定するのか。
A
 一般に公正妥当と認められる企業会計の基準その他の企業会計の慣行をしん酌して、適宜の方法により算定されることとなる(会社計算規則3条)。

その他資本剰余金の額及びその他利益剰余金の額の変動
Q

 会社計算規則42条の3第4項柱書の「当該行為」とは何を指すのか。
A
 会社計算規則42条の3第4項は、会社法202条の2第1項(同条3項の規定により読み替えて適用する場合を含む)の規定により募集株式を引き受ける者の募集をした場合におけるその他資本剰余金の額及びその他利益剰余金の額の変動について定めるものである。

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