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解説記事2019年09月02日 特別解説 税効果会計(法人所得税)に関する注記(2019年9月2日号・№801)




特別解説

税効果会計(法人所得税)に関する注記



はじめに




 2018年2月に企業会計基準委員会(ASBJ)より、企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」が公表された。この会計基準は、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されている。我が国における税効果会計の適用は、これまで「税効果会計に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」に基づいて行われてきたが、今回の改正では、一部の考え方の明確化とともに、繰延税金資産・負債の表示区分の変更や税効果関連の注記(開示)を充実させるための改正も行われた。この改正によって、我が国の会計基準における税効果会計に関する注記はかなり拡充されたが、まだIFRSとの間に差異が残っている項目もある。本稿では、IFRSを任意に適用して連結財務諸表を作成・公表する日本企業(以下「IFRS任意適用日本企業」という。)が行った税効果会計に関する注記を紹介しつつ、我が国の会計基準を適用する日本企業が行う開示との相違点等についても触れることとしたい。なお、今回の調査では、2018年12月期決算の有価証券報告書を提出した企業を主に対象とした。



『税効果会計に係る会計基準』の一部改正の概要(注記開示に関する部分)



 今回の税効果会計に係る会計基準の一部改正における注記開示に関する要求事項の変更(追加)は、大別すると、以下の2項目に分けられる。






① 評価性引当額の内訳に関する情報

② 税務上の繰越欠損金に関する情報






 評価性引当額については、これまでは「繰延税金資産の発生原因別の主な内訳を注記するに当たっては、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)を併せて記載するものとする。」とされていたが、改正後は、次のように、より詳細な内訳の開示が要求されることとなった(税効果会計基準注解(注8))。






(1)繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)は、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載する。

 なお、将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額の区分には、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等を含める。

(2)繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載する。なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表において記載することを要しない。






 次に、税務上の繰越欠損金については、これまでは特に開示は求められてこなかったが、基準の改正により、以下の項目の開示が新たに要求されることとなった(税効果会計基準注解(注9))。






 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときの取扱いについて繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、次の事項を記載する。なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表において記載することを要しない。

(1)繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る次の金額

 ① 税務上の繰越欠損金の額に納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額

 ② 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)

 ③ 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額

(2)税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由






IAS第12号「法人所得税」の開示に関する要求事項



 IFRSで税効果会計に関する要求事項を定めているのは、IAS第12号「法人所得税」である。

 まず第79項で、税金費用(収益)の主要な内訳は別個に開示しなければならないとされているほか、別個に開示すべき項目として、以下の事項が列挙されている(第81項)。






(a)資本に直接に借方計上又は貸方計上した項目に係る当期税金及び繰延税金の合計額

(b)その他の包括利益の各内訳項目に係る法人所得税の金額

(c)次の様式のいずれか又は両方による、税金費用(収益)と会計上の利益との関係の説明

 (i)会計上の利益に適用税率を乗じて得られる額と税金費用(収益)との間の数字的調整(適用税率の計算根拠も併せて開示)

 (ii)平均実際負担税率と適用税率との間の数字的調整(適用税率の計算根拠も併せて開示)

(d)前期と比較した適用税率の変動の説明

(e)財政状態計算書に繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金、及び繰越税額控除の額(及び、もしあれば失効日)

(f)繰延税金負債を認識していない、子会社、支店及び関連会社に対する投資並びに共同支配の取決めに対する持分に係る一時差異の総合計額

(g)各タイプの一時差異並びに各タイプの税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除について

 (i)表示する各期間の財政状態計算書に認識した繰延税金資産及び負債の額

 (ii)純損益に認識した繰延税金収益又は費用の額(財政状態計算書に認識した金額の変動からは明らかでない場合)

(h)非継続事業に関して、次に係る税金費用

 (i)非継続に伴う利得又は損失

 (ii)非継続事業の当期中の経常的活動からの純損益(表示する過去の期間の対応する金額とともに)

(i)財務諸表の発行が承認される前に提案又は宣言したが、財務諸表に負債として認識していない、企業の株主への配当の法人所得税への影響の金額

(j)企業が取得企業である企業結合により、取得前の繰延税金資産について認識した金額の変動が生じた場合には、その変動の金額

(k)企業結合で取得した繰延税金便益を取得日の時点では認識しなかったが、取得日後に認識する場合には、繰延税金便益を認識する原因となった事象又は状況変化の説明






楽天が行った開示



 楽天は、2018年12月期決算に係る有価証券報告書の税効果(法人所得税)に関する開示において、次のような項目の詳細な開示を行っている。なお、見出しは筆者が適宜追加している。






(1)繰延税金資産及び負債の主な発生原因別内訳

 繰延税金資産及び負債の主な発生原因別内訳は、以下のとおりです。







 繰越欠損金や貸倒引当金の有税による引当(繰延税金資産)や純損益を通じて公正価値で測定する金融資産の利得及び損失(繰延税金負債)は多くのIFRS任意適用日本企業の税効果会計に関する注記において共通してみられる項目である。ポイント引当金に係る繰延税金資産や契約コストから認識した資産に係る繰延税金負債(楽天は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に基づいて、顧客との契約の獲得又は履行のためのコストを資産として認識している。)は楽天独自の項目といえるかもしれない。






(2)繰延税金資産・負債残高の増減

 なお、繰延税金資産及び負債の増減の内訳は、以下のとおりです。







 なお、「会計方針の変更による累積的影響額」という項目があるが、これは楽天が2018年12月期からIFRS第9号「金融商品(2014年改訂版)」を適用したことによる影響である。具体的には、金融資産に係る減損の規定を適用したことによって貸倒引当金が50,679百万円増加(繰延税金資産が15,556百万円増加)するとともに、負債性金融商品の一部を分類変更したことによって繰延税金負債が105百万円増加している。






(3)未認識の繰延税金資産

 連結財政状態計算書上で繰延税金資産が認識されていない将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の内訳(税額ベース)は、以下のとおりです。



 上表に係る繰延税金資産に関しては、当社グループがその便益を利用するために必要となる将来の課税所得が発生する可能性が高くないため、繰延税金資産を認識していません。



(4)繰延税金資産が認識されていない税務上の繰越欠損金の失効期限別の内訳

 連結財政状態計算書上で繰延税金資産が認識されていない、税務上の繰越欠損金の失効期限別内訳は以下のとおりです。なお、失効期限のある将来減算一時差異はありません。



 上記に加えて、2018年12月31日において繰延税金資産を認識していない子会社、関連会社及び共同支配企業に対する投資に関する将来減算一時差異の総額(所得ベース)は174,083百万円(2017年12月31日は176,406百万円)です。



(5)未認識の繰延税金負債

 また、2018年12月31日において繰延税金負債を認識していない子会社に対する投資に関する将来加算一時差異の総額(所得ベース)は272,777百万円(2017年12月31日は221,130百万円)です。なお、子会社及び関連会社の留保利益が将来送金された場合に、当社グループの納税額に与える重要な影響はありません。



(6)法人所得税費用の内訳

 純損益を通じて認識された法人所得税費用の内訳は、以下のとおりです。



(7)実効税率の調整表

 我が国の法定実効税率と連結損益計算書上の法人所得税費用の実効税率との関係は、以下のとおりです。







我が国の会計基準に基づく企業では見られない開示



 ここでは、我が国の「税効果会計に関する会計基準」が改正されたのちもなお、IFRS(IAS第12号)との間で差異となっている(我が国の税効果会計基準では開示を要求されない。ただし、追加情報等として別途開示される場合はある。)項目のうち、当期純損失である場合の税金負担率に関する注記と税務上のポジションの不確実性に関する注記について、IFRS任意適用日本企業が行った開示を紹介することとしたい。



当期純損失である場合の税金負担率に関する注記(ソレイジア・ファーマ)





 製薬会社のソレイジア・ファーマは、2017年12月期、及び2018年12月期の両方とも当期純損失を計上しているが、税金負担率に関する開示を行っている。






(2)実効税率の調整

 法定実効税率と実際負担税率との差異について、原因となった主要な項目の内訳は次のとおりです。



(注)当社グループは、主に日本における法人税、住民税及び事業税を課されており、これらを基礎として計算した前連結会計年度及び当連結会計年度の適用税率は30.86%となっています。






米国における税制改革にかかる影響に関する注記(ルネサスエレクトロニクス)



 2018年12月期からIFRSの任意適用を開始したルネサスエレクトロニクスは、米国における税制改革に係る影響について、次のような開示を行った。






 2017年12月22日に米国において、『theU.S Tax cuts and Jobs Act』(以下、『米国税制改革法』)が成立しました。これにより、在米国法人の2018年1月1日以降に開始する課税年度に適用される法人税率が35%から21%に引き下げられ、また、米国子会社における過去の海外留保利益に対して、一時の強制みなし配当課税が課せられました。当社は2017年12月期の財務諸表の作成に際して、『米国税制改革法』の会計処理については最善の見積りに基づいた会計処理を実施しており、『米国税制改革法』の影響により、2017年12月期の法人所得税費用が1,596百万円増加しております。2018年12月期決算において、『米国税制改革法』に係る追加の情報の入手および分析が完了し、『米国税制改革法』の影響額が確定した結果、2018年12月期の当期税金費用が3,685百万円減少し、繰延税金費用が2,357百万円増加しております。また、当期より米国外軽課税無形資産所得(Global Intangible Low-taxed Income:GILTI)等が新たに課税され、当期税金費用が1,525百万円増加しております。






税務上の不確実性に関する注記(キリンホールディングス)



 キリンホールディングスは、オーストラリアの子会社に対して進行中の税務調査の結果によっては、法人所得税の追加負担が生じる可能性がある旨を、以下のように開示している。






(7)法人所得税の取扱いに関する不確実性

 LION PTY LTDは、オーストラリア税務当局による定期的な税務調査を受けております。現在、2013年から2016年までの所得期間について税務調査中です。LION PTY LTDは、現地の税務情報の自主的開示制度に基づき開示されている税務ガバナンスに準拠して税務申告しており、当社グループは今回の税務調査における各案件に対して、当該期間の税務申告は適切であると考えております。しかし、最終的にオーストラリア税務当局がLION PTY LTDと異なる税務ポジションを確定させた場合、当期の連結財務諸表において未認識の法人所得税額が、将来追加で発生する可能性があります。






終わりに



 我が国の上場企業に対しては、2020年3月期から監査上の主要な検討事項(KAM)の監査報告書への記載が始まるが(強制適用は2021年3月期から)、すでに制度が導入されている欧州企業の事例を分析集計すると、「税務上のポジションの不確実性」や「繰延税金資産・負債の計上」は必ず上位に挙がってくる項目である。世界中に展開し、アグレッシブな税務戦略をとることが多い欧米の大企業に比べると、わが国の企業が税務調査等で多額の更正や追徴課税等を受けるケースは比較的少ないと考えられるが、きわめて高度な見積りが介在し、将来の収益見通しや前提条件等に大きく左右される繰延税金資産の資産性は極めて脆弱であり、金額も多額であることから、適時かつ適切な情報の開示が欠かせない。今後わが国にもKAMが導入された場合には、多くの上場企業の監査報告書において、税効果会計の適用や、繰延税金資産の回収可能性の評価といった項目がKAMとして記載され、そこでは税効果会計の注記が参照されるものと思われる。





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