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解説記事2019年09月02日 SCOPE 経済的合理性が認められた組織再編等スキームとは(2019年9月2日号・№801)

なぜ行為計算の否認処分は取り消されたのか?
経済的合理性が認められた組織再編等スキームとは


 東京地裁(清水知恵子裁判長)は6月27日、同族会社である外国法人からの借入れに係る支払利息の額の損金算入に対して、法人税法132条1項(同族会社の行為又は計算の否認)に基づきその原因となる行為を否認した更正処分等の取消しが求められた事案について、原告(納税者)の請求を認容する(更正処分等を取り消す)判決を言い渡した。

国際的な企業グループの組織再編の経済的合理性が争点に

 音楽事業を目的とする日本法人であるユニバーサルミュージック合同会社(UMLLC)は、同族会社である外国法人からの借入れに係る支払利息の額を損金の額に算入して申告したところ、同支払利息の損金算入は、原告の法人税の負担を不当に減少させるものであるとして、法人税法132条1項に基づき、その原因となる行為を否認した課税処分を受けた。
 原告は、上記借入れは原告を含むグループ法人の組織再編の一環として行われた正当な事業目的を有する経済的合理性がある取引であり、本件各更正処分等は法人税法132条1項の要件を欠く違法な処分であると主張。被告(国)を相手に、本件各更正処分等の取消しを求めていたが、第一審では原告である納税者の主張通り、請求が認容された。
 本稿では、なぜ、課税処分が取り消されることになったのか、原告らの行った事業再編スキームを検証する。
行為と目的の整合性が経済的合理性に
 原告らの組織再編等スキームは、表1・図の一連の①~⑨の行為であるが、これらの行為は、設定されていた本件組織再編における8つの目的(表2参照)と整合するものであった。各行為と目的が整合していたことが経済的合理性を容認する決め手となった。判決では、デット・プッシュ・ダウン(多くの利益を計上している事業会社により多くの負債を負担させること)に対しても経済的合理性は否定されるものではないと判示している。さらに、8つの目的を同時に達成しようとすることの合理性と原告からみた経済的合理性を容認した。

【表1】一連の組織再編取引行為

① 平成20年10月7日、オランダの会社であるCMHL社は、当初資本金の額200万円で原告を設立。
② 同月29日、原告はCMHL社から295億円の増資払込みを受け、当該払込額の全額を資本金に計上。
③ 同日、原告は、UMIF(フランス所在)から866億円余を借入。
④ 同日、原告は、オランダの会社であるUMTC社からUMKK社の全発行済株式を1,144億1,800万円で取得。
⑤ 同日、原告は、オランダの会社であるMGBBV社からMGBKK社の全発行済株式を14億6,900万円で取得。
⑥ 同日、原告は、英国の会社であるヴィツー・ミュージック・グループ・リミテッドから「V2J」の発行済株式を2,000ポンドで取得。
⑦ 平成20年11月6日、原告は、資本金100万円で、UMPGK社を設立。
⑧ 平成21年1月1日、原告及びUMKK社は、原告を存続会社とし、UMKK社を消滅会社とする合併。
⑨ 平成21年7月1日、UMPGK社、MGBKK社及びUMPKK社は、UMPGK社を存続会社とし、MGBKK社及びUMPKK社を消滅会社とする合併。

【表2】本件組織再編における8つの目的

① 「オランダの借入金のレベルを減少させるための資金を調達すること。」
② 「日本における会社関係を1つの会社の傘下にまとめること。」
③ 「日本における音楽出版会社を1つの法人にまとめること。」
④ 「日本から円余剰資金を移転させ、ヴィヴェンディが為替リスクのヘッジをすることなく、ユーロ市場での投資活動を可能ならしめること。」
⑤ 「日本の資本構造に借入金を発生させること。」
⑥ 「(配当制限のある英国から余剰資金を移転させ、また、その資本構造を英国の役員による経営管理体制に適合するため)日本のオペレーションを英国管轄下に置くこと。」
⑦ 「米国税制の観点から柔軟性を有する日本の企業体を活用すること。」
⑧ 「現在検討中で将来起こりうる可能性のある第三者の日本の音楽企業の買収と、ユニバーサル・ミュージックグループの音楽企業との結合に対応すること(交渉の完了とデューディリジェンスが必要である。)」

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