税務ニュース2021年02月05日 他病院での麻酔施術の概算経費適用否定(2021年2月8日号・№869) 東京高裁、一審に続き他病院での医療業務に原告の「主体性」認めず
本件は、麻酔科クリニックを個人で開業している医師が、他の病院での手術について業務委託契約に基づき行った麻酔関連医療業務に係る報酬が、「社会保険診療につき支払を受けるべき金額」(措法26条)に該当するかどうかが争われた事案である。当該金額に該当すれば、所得税の申告上、「社会保険診療報酬の所得計算の特例」により、一定の条件の下、概算経費額を必要経費に算入することができるとともに、消費税法上は役務提供の対価が非課税となる。
一審は、本件の論点は、保険医療機関である各病院で実施された手術において、同じく保険医療機関である本件クリニックを個人で開設する原告が行った麻酔施術を、本件クリニック(原告)が自ら主体として療養の給付を行ったものと評価できるか否かであると指摘した。
そして、複数の保険医療機関が関与する場合の「主体性」の判断は、医師等の行為の具体的内容及び関与の程度、物的設備等の負担の有無等や、関与の経緯や双方機関の関係等の事情を考慮して、その関与が、人と物とが結合された組織体である保険医療機関として、自ら主体となって治療等に必要かつ相当と認められる医療サービスの給付を行ったものと評価することができるか否かという観点から判断すべきとした。その上で、本件は、各病院が自ら主体となって手術を実施したもので、本件クリニック(原告)の関与は、医療関係行為の一環として行われた麻酔施術につき、麻酔専門医である原告を提供したにとどまると判断していた(本誌851号9頁参照)。
控訴審で原告は、本件麻酔施術が果たす重要な役割等を強調して主体性を主張した模様だが、東京高裁は「当裁判所の補足的判断」の中で、「麻酔施術の重要性、安全かつ的確な麻酔施術が原告にしか実行できないものであったこと」等については、「原告の主張のとおり」としながらも、「しかしながら、療養の給付を行ったといえるかどうかは、医療現場における役割とは異なる角度から、租税関係法令の定めるところにより判断するほかはないものである。」として、「本件手術は、本件各病院が主体となって実施したというほかはなく、この点については、原審が説示するとおり」と一審判決を支持した。「原告の関与は、本件各病院の提供する一連の医療サービスに吸収されている」という、麻酔医にとっては厳しい評価が一審に続き控訴審でも示された格好だ。
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