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コラム2019年09月16日 未公開裁決事例紹介 グループ法人税制の適用の可否で裁決(2019年9月16日号・№803)

未公開裁決事例紹介
グループ法人税制の適用の可否で裁決
審判所、法人による完全支配関係がないと判断


○グループ法人間において、債務免除及び債権放棄が行われた否かが争われた事案。請求人は、請求人の関連法人に対する債権の清算として計上した寄附金について、法人税法37条(寄附金の損金不算入)2項のいわゆるグループ法人税制の規定を適用して申告した後、更正処分を受け、債権は清算しておらず債権放棄は行われていない旨主張したが、国税不服審判所は、請求人及び関連法人の役員は、代表者及び代表者の弟の2名のみであり、当該役員で本件債権放棄を行うことを決め、これに沿った会計処理及び確定申告をしたことからすると、請求人が関連法人に対して本件債権放棄を行ったものと認められると指摘。請求人と関連法人はいずれも個人である代表者一族が発行済株式の全部を保有しており両法人の間には「法人による完全支配関係」がないことから、本件規定が適用されず、本件債権放棄の額のうち寄附金の損金算入限度額までの金額を損金の額に算入すべきであるとした(平成30年9月27日、棄却)。

基礎事実等
(1)事案の概要

 本件は、代表者の一族が全株式を保有する審査請求人(以下「請求人」という。)が、当該代表者の一族が全株式を保有する関連法人に対する債権放棄による寄附金の額及び当該代表者の一族が全株式を保有する別の関連法人からの債務免除による受贈益の額について、法人税等の確定申告において、いわゆるグループ法人間の寄附金及び受贈益をそれぞれ損金及び益金の額に算入しない旨の各規定を適用し、それぞれ損金及び益金の額に算入しなかったところ、原処分庁が、請求人と当該各法人との間には当該各規定の要件である法人による完全支配関係がないことから、当該各規定が適用されず、当該寄附金(損金算入限度額)及び当該受贈益の額がそれぞれ損金及び益金の額に算入されるとして、法人税等の更正処分等を行ったことに対し、請求人が、当該債権放棄及び債務免除は行われていなかったなどと主張し、原処分の一部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実及び審査請求に至る経緯
 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
 イ 請求人等
(イ)請求人は、和菓子の販売等を事業目的とする株式会社であり、平成28年8月31日現在、別表1のとおり、請求人の代表者である××××、代表者の父である××××及び代表者の母である××××(以下、これらを併せて「代表者一族」という。)が発行済株式の全部を保有している。
(ロ)××××××××は、和菓子の製造等を事業目的とする株式会社であり、××××××××(以下「××××」という。また、請求人、××××及び××××を合わせて「本件グループ法人」という。)は、和菓子の製造及び販売業務の受託等を事業目的とする有限会社である。
  代表者一族は、平成28年8月31日現在、別表1のとおり、××××及び××××の各発行済株式の全部を保有している。
 ロ 本件グループ法人間における債権債務の清算に係る会計処理
 請求人は、平成28年8月31日付で、次のとおり、本件グループ法人間において債権債務の清算を行ったとする会計処理をした。また、××××及び××××は、同日、それぞれ上記会計処理に対応する会計処理を行った。
(イ)受贈益の計上
 請求人は、平成28年8月31日付で、総勘定元帳の「未払金」勘定の借方に、相手科目を「受贈益」勘定、摘要欄を「××××××」として44,876,449円を計上し、××××から同額の債務免除(以下「本件債務免除」という。)を受けた旨の会計処理をした。
(ロ)寄附金の計上
 請求人は、平成28年8月31日付で、総勘定元帳の「未収入金」勘定の貸方に、相手科目を「寄付金」勘定、摘要欄を「H27年8月31日残高(××××)」として172,143,332円を計上し、××××に対する同額の債権を放棄した(以下「本件債権放棄」という。)旨の会計処理をした。
 ハ 確定申告
 請求人は、平成27年9月1日から平成28年8月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税及び平成27年9月1日から平成28年8月31日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)の地方法人税について、別表2(略)及び別表3(略)の各「確定申告」欄のとおり、いずれも法定申告期限までに確定申告した。その際、請求人は、本件事業年度の所得金額について、本件債務免除の額及び本件債権放棄の額に、それぞれ法人税法第25条の2第1項の規定及び同法第37条第2項の規定(以下、両規定を併せて「本件各規定」という。)を適用し、次のとおり計算した。
(イ)本件債務免除の額の益金の額への不算入
 請求人は、本件債務免除の額について、請求人との間に完全支配関係がある××××から受けた受贈益であり、法人税法第25条の2第1項の適用により益金の額に算入されないとして、本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入しなかった。
(ロ)本件債権放棄の額の損金の額への不算入
 請求人は、本件債権放棄の額について、請求人との間に完全支配関係がある××××に対して支出した寄附金の額であり、法人税法第37条第2項の適用により全額が損金の額に算入されないとして、本件事業年度の所得金額の計算上、その全額を損金の額に算入しなかった。
 ニ 原処分
 原処分庁は、請求人と××××及び××××との間には、法人による完全支配関係がなく、本件債務免除の額及び本件債権放棄の額には本件各規定が適用されないなどとして、本件事業年度の所得金額の計算上、本件債務免除の額を益金の額に算入し、また、本件債権放棄の額のうち寄附金の損金算入限度額までの金額を損金の額に算入して、別表2(略)及び別表3(略)の各「更正処分等」欄のとおり、平成29年8月29日付で本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の地方法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。
 ホ 審査請求
 請求人は、平成29年11月27日、原処分を不服として、審査請求を行った。

争点および主張
 本件事業年度の所得金額の計算上、本件債務免除の額を益金の額に算入し、また、本件債権放棄の額のうち寄附金の損金算入限度額までの金額を損金の額に算入すべきか(具体的には、本件グループ法人間において、本件債務免除及び本件債権放棄が行われたか。)。

【表】当事者の主張

原処分庁 請 求 人
(1)本件グループ法人における会計処理によれば、本件グループ法人間において、本件債務免除及び本件債権放棄が行われたものと認められる。
(2)そして、本件グループ法人間には、本件各規定の適用要件である「法人による完全支配関係」がないため、請求人は、本件各規定を適用することができない。
 したがって、本件債務免除の額を益金の額に算入すべきであり、また、本件債権放棄の額のうち寄附金の損金算入限度額までの金額を損金の額に算入すべきである。
 以下のとおり、本件グループ法人間において、本件債務免除及び本件債権放棄は行われていない。したがって、本件債務免除の額を益金の額に算入すべきではなく、また、本件債権放棄の額のうち寄附金の損金算入限度額までの金額を損金の額に算入すべきではない。
(1)本件グループ法人は、各法人間の債権債務の処理をするために、まず、合併を検討したが、それには登記費用等の諸費用がかかること、本件債務免除及び本件債権放棄には本件各規定が適用され、法人税の税額に影響がないと考えたことから、本件債務免除及び本件債権放棄を行った。
 したがって、本件グループ法人は、本件債務免除及び本件債権放棄に本件各規定の適用がないと認識していれば、これを行わなかったものである。
(2)請求人は、本件債務免除及び本件債権放棄を行うことについて、株主総会や取締役会の決議を経ていない。

審判所の判断
(1)認定事実

 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、次の事実が認められる。
イ ××は、平成24年10月29日、××××の代表取締役に就任したが、本件グループ法人は、遅くともその頃には、本件グループ法人間の債権債務の清算を検討していた。
ロ ××は、平成27年2月1日、請求人及び××××の代表取締役に就任した。また、××の弟である××××も、同日、本件グループ法人全ての取締役に就任した。他方、××は、同日、請求人及び××××の代表取締役を退任し、本件グループ法人全ての取締役を辞任した。これにより、本件グループ法人の取締役は、いずれも××及び××のみとなった。
  その後、××及び××は、以前から検討していた本件グループ法人間の債権債務の清算について××××××に相談したところ、本件各規定を適用することにより、法人税の計算上損益に反映させることなく当該債権債務を清算することができる旨の説明を受けた。そこで、××及び××は、本件グループ法人において本件債務免除及び本件債権放棄を行うこと、本件各規定を適用し、本件グループ法人の各法人税の計算上本件債務免除及び本件債権放棄を損益に反映させないことを決めた。
ハ ××××××は、平成28年8月31日付で、総勘定元帳の「×××」勘定から振り替えた「未収入金」勘定の貸方に、相手科目を「寄付金」勘定として44,876,449円を計上し、請求人に対する同額の債権を放棄した旨の会計処理をした。
  また、××××××は、平成28年8月31日付で、総勘定元帳の「未払金」勘定の借方に、相手科目を「受贈益」勘定、摘要欄を「H27年8月31日残高(××××××××)」として172,143,332円を計上し、請求人から同額の債務免除を受けた旨の会計処理をした。
(2)検討
 本件債務免除及び本件債権放棄について
(イ)上記(1)のイ及びロのとおり、××は、平成27年2月1日以降、本件グループ法人全ての代表取締役であったところ、もう1名の取締役である××と共に、本件グループ法人において本件債務免除及び本件債権放棄を行うことを決めた。
(ロ)そして、請求人は、平成28年8月31日付で44,876,449円の受贈益を総勘定元帳に計上し、その取引相手である××××も、同日付で同額の寄附金を総勘定元帳に計上しており、いずれにおいても、××××が請求人に対して本件債務免除を行ったとする会計処理が行われた。また、請求人は、平成28年8月31日付で172,143,332円の寄附金を総勘定元帳に計上し、その取引相手である××××××も、同日付で同額の受贈益を総勘定元帳に計上し(上記(1)のハ)、いずれにおいても、請求人が××××に本件債権放棄を行ったとする会計処理が行われた。さらに、本件グループ法人は、いずれも上記の各会計処理を反映した決算書類を作成し、法人税及び地方法人税の各確定申告をした(原処分関係資料)。
(ハ)以上のとおり、本件グループ法人全ての代表取締役である××は、もう1名の取締役である××と共に、本件グループ法人において本件債務免除及び本件債権放棄を行うことを決め、その後、本件グループ法人は、いずれもこれらに沿った会計処理及び確定申告をしたことからすると、××××は、平成28年8月31日、請求人に対して本件債務免除を行い、請求人は、同日、××××に対して本件債権放棄を行ったものと認められる。
 ロ 本件債務免除の額の益金算入について
 債務免除は、無償の経済的価値の流入であるから、法人税法第22条第2項によれば、免除された債務額は、同法第25条の2第1項の規定が適用されない限り、当該免除のあった日の属する事業年度の益金の額に算入されることになる。
 この点、請求人は、××××から本件事業年度中の平成28年8月31日に本件債務免除を受けたものである。また、請求人と××××は、いずれも個人である代表者一族が発行済株式の全部を保有しているため、両法人の間には法人による完全支配関係がなく、本件債務免除の額には法人税法第25条の2第1項の規定が通用されない。したがって、本件債務免除の額は、請求人の本件事業年度の所得の計算上、益金の額に算入すべきである。
 ハ 本件債権放棄の額の損金算入について
 債権放棄は、反対給付を受けず一方的に債務者に経済的利益を与えるものであるから、法人税法第37条第1項及び第7項によれば、債権放棄により供与する経済的利益の額は、法人税法基本通達9-4-1《子会社等を整理する場合の損失負担等》などの規定が適用されない限り寄附金として取り扱われ、同条第2項の規定が適用されない限り、寄附金の損金算入限度額の範囲内で、当該放棄のあった日の属する事業年度の損金の額に算入されることになる。
 この点、請求人は、××××に本件事業年度中の平成28年8月31日に本件債権放棄を行ったものであり、上記通達の規定が適用されることを認めるに足りる証拠もないから、本件債権放棄の額は寄附金として取り扱われる。また、請求人及び××××は、いずれも個人である代表者一族が発行済株式の全部を保有しているため、両法人の間には法人による完全支配関係がなく、本件債権放棄の額には法人税法第37条第2項の規定が適用されない。したがって、本件債権放棄の額は、請求人の本件事業年度の所得金額の計算上、寄附金の損金算入限度額までの金額について損金の額に算入すべきである。
(3)請求人の主張
イ 請求人は、本件各規定の適用がないと認識していれば本件債務免除及び本件債権放棄を行わなかったことから、本件各規定の適用がない以上、本件債務免除及び本件債権放棄は行われていない旨主張する。しかしながら、請求人が主張する認識、動機のいかんによって、本件債務免除及び本件債権放棄の存否に係る前記判断が左右されるものではなく、請求人の上記主張は採用することができない。
  なお、請求人の上記主張が、本件債務免除及び本件債権放棄について、その動機に課税負担の錯誤があることから、無効である旨主張する趣旨であったとしても、次のとおり、採用することができないことに変わりはない。
  すなわち、申告納税制度を採り適正な申告がされることを期待されている中、安易に納税義務の発生の原因となる法律行為の錯誤無効を認めて納税義務を免れさせることは、納税者間の公平を害するとともに、租税法律関係を不安定にするものといえる。そうすると、納税義務の発生の原因となる私法上の法律行為を行った場合において、同法律行為の際に予定していなかった納税義務が生じることが判明したとしても、納税義務者は、その法定申告期限を経過した後に、かかる課税負担の錯誤が同法律行為の動機の錯誤であるとして、同法律行為が無効であることを主張することは許されないと解するのが相当である。
  したがって、本件債務免除及び本件債権放棄について、その動機に課税負担の錯誤があることを理由に無効を主張することは許されず、請求人の主張は採用することができない。
ロ また、請求人は、本件債務免除及び本件債権放棄は、株主総会や取締役会の決議を経ていないから、行われていない旨主張する。
  しかしながら、××××は特例有限会社であり取締役会を設置することができないから、これを設置しておらず、その他の本件グループ法人も、いずれも取締役会を設置していない(原処分関係資料、当審判所の調査の結果)。そして、会社法上取締役が決定し執行することができる本件債務免除及び本件債権放棄(同法第348条《業務の執行》第1項、第2項)について、本件グループ法人の株主総会の決議を要することをうかがわせる証拠はない。
  したがって、本件債務免除及び本件債権放棄が株主総会や取締役会の決議を経ていないことは、それらの存否に係る前記判断やそれらの効力に何らの影響を与えるものではなく、請求人の主張は、採用することができない。
(4)小括
 以上のとおり、本件事業年度の所得金額の計算上、本件債務免除の額を益金の額に算入し、また、本件債権放棄の額のうち寄附金の損金算入限度額までの金額を損金の額に算入すべきである。

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