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解説記事2021年02月15日 SCOPE 東京高裁も販売用土地と認定、収用等の所得控除適用できず(2021年2月15日号・№870)

収用等の特例、会計検査院の指摘事項にも注意
東京高裁も販売用土地と認定、収用等の所得控除適用できず


 収用等の場合の課税の特例をめぐり、対象資産が特例の不適用となる棚卸資産に該当するか否かが争われた事案で、東京高裁第23民事部は令和3年2月3日、一審判決(東京地裁令和2年8月6日判決)を支持し、原告の控訴を棄却した。
 また、本特例に関する昨今の注目すべき動きとして、会計検査院の指摘を受けて、税務当局の事務が変更されていることにも注意が必要だ。基本的な考え方の認識誤りや、煩雑な手続面の見落としがないよう、実務上、より慎重な対応が必要と言えるだろう。

第三者への貸付けや自らの使用なく、土地の所有は第三者への販売目的と認定

 不動産の売買及び賃貸等を行う法人である原告は、その所有する土地に送電線路の仮設等を目的とする地役権を設定し、その対価として東京電力から補償金を受領したが、当該補償金が所得の特別控除(措法65条の2)の対象となり損金算入すべきであったのにしていなかったとして更正の請求を行った。本件は、これに対する処分行政庁の「更正をすべき理由がない旨の通知処分」を不服とした納税者が提訴した事案である。
 所得の特別控除の対象となる資産は、「法人の有する資産(棚卸資産を除く)」とされており(措法64条1項)、棚卸資産には適用できない。本件で争われたのは、対象となった土地が棚卸資産か否かという点だ。
 東京地裁はまず、「不動産の売買等を業とする法人が販売の目的をもって所有する土地は、当該法人にとって商品の性質を有するものであるから、棚卸資産に該当するというべきであり、他方、当該法人が自身で使用したり第三者に賃貸したりする目的を持って所有する土地は、棚卸資産には該当しない」との解釈を示した。
 その上で、①原告は、本件地役権設定契約の締結前に、本件土地を含む本件S土地を宅地として造成した場合の図面をK設計会社に作成させた上で、東京電力との間で、原告が地役権設定登記以降に本件土地全体を宅地造成することとし、開発許可を受けた場合には東京電力が原告に追加補償として4200万円を支払うこととする条項のある本件地役権設定契約に係る契約書を作成し、これに当該図面を添付していること、②本件地役権設定契約締結後も、K設計会社に対し、本件S土地の開発・宅地造成工事に関する業務等を委託し、その報酬の一部を支払っていること、③D社に本件S土地を売却していることなどの契約書の内容や契約締結前後の状況、経理処理等から、原告は、地役権設定契約締結時点では、第三者に販売する目的で本件S土地を所有していたと判断した。
 原告の、「原告は本件S土地を宅地造成する意思を有しておらず、東京電力の担当者から補償金を多く支払うためと言われたため宅地造成することを前提とした条項等が存在する」との主張や、「原告は、本件S土地上に老人ホームを建設し、事業者に賃貸して運営してもらうことや、駐車場として本件土地を利用することを検討していた」との主張は、証拠からは認められないとされ、すべて一蹴された。
会計検査院の指摘により当局の事務変更
 また、収用等の場合の課税の特例をめぐっては、昨今の注目すべき動きとして、のとおり、会計検査院の指摘を受けて、税務当局の事務が変更されている。本誌857号では、税務当局が公共事業施行者に対する事後監査(特例を受ける者にとっての反面調査)の積極的な実施を指示していること等をお伝えしたところだ。基本的な考え方の認識誤りや、煩雑な手続面の見落としがないよう、実務上はより慎重な対応が必要と言えるだろう。

【表】

会計検査院が指摘したケース
施行地外建物移転補償金に対する課税の特例の適用
 公共事業施行者が交付する建物等移転補償金には、買取り等の対象となる土地(施行地)の上にある建物等に対する補償金(施行地内建物等移転補償金)と施行地の上にない建物等に対する補償金(施行地外建物等移転補償金)があり、施行地内建物等移転補償金については課税の特例の適用対象としている一方、施行地外建物等移転補償金については、交付対象となっている建物が施行地の上にある建物と接続していて施行地内建物等移転補償金と同様の取扱いが認められる場合等を除き、課税の特例の対象としていないところ、施行地の上にある建物と接続していない建物に係る施行地外建物等移転補償金を特例の対象として申告していたケース
初回提示年月日から資産の買取り等の日までの期間が6月を超える者に対する5000万円控除の適用
 個人又は法人が、公共事業施行者から最初に買取り等の申出のあった日(「買取申出年月日」)から6か月以内に資産を譲渡した場合は、5000万円を限度として所得から控除又は損金の額に算入でき(「5000万円控除」)、納税者は公共事業施行者から交付された「買取申出証明書」に記載された「買取申出年月日」に基づいて申告するところ、買取申出証明書上の買取申出年月日が、補償金の額を最初に提示したとされている日(初回提示年月日)ではなく、補償金の額を最後に提示等した日となっていたため、初回提示年月日から資産の買取り等の日までの期間が6か月を超えていた可能性があるケース
国税庁が講じた改善の処置
 国税庁は、令和2年5月に国税局等に対して通達を発するとともに同年6月に事務提要を改正するなどして、次のような処置を講じた。
ア 国税局等に対して、事前協議の際に施行地外建物等移転補償金の交付予定の有無を公共事業施行者から聴取し、交付予定がある場合には、交付対象となる資産の所在地等を表示する事前協議明細や図面等の提出を求めたり、施行地外建物等移転補償金を交付する旨を買取証明書の適用欄に記載することなどを説明したリーフレットを事前協議の際に公共事業施行者に送付したりなどするよう指導した。
イ 国税局等に対して、買取申出証明書に記載する買取申出年月日の判定基準について参考事例を用いるなどして説明したリーフレットを事前協議の際に公共事業施行者に送付したり、実際の買取申出年月日の把握に資するものとして同庁が定めた様式の提出を公共事業施行者に求めたりなどするよう指導した。また、事後監査の対象事業の選定に当たり買取申出年月日に着目した留意すべき例を示した上で、これを踏まえるなどして事後監査を適切に実施するよう指導した。
ウ 同年5月に、ア及びイのリーフレットの内容をホームページに掲載して、公共事業施行者に対して周知した。

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