税務ニュース2021年05月14日 東京高裁、納税者の相続税軽減目的認定(2021年5月17日号・№882) 節税目的の不動産購入は「特別の事情」を基礎づける事実に該当
本件は、相続人らが財産評価基本通達の定める評価方法により評価して本件相続に係る相続税の申告をしたところ、処分行政庁が、本件相続に係る相続財産のうち一部の土地及び建物の価額について評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められるとして、本件相続税の各更正処分等をしたことから、相続人らが本件各更正処分等の取消しを求めていた事案である。原審は、相続人らの請求をいずれも棄却したため、相続人らは控訴した。
控訴人らは、「本件各更正処分は、国民の租税に対する予測可能性を著しく失わせる不当なものであり、租税法律主義の趣旨に反し、評価通達6の適用に関する行政庁の裁量を著しく逸脱するものであるから、違法である。」「通達評価額と実際の取引価格との間にかい離がある事例が多数存在する以上、かい離があることは『特別の事情』を基礎づける事実にはなり得ない。」などと主張した。
東京高裁第7民事部(足立哲裁判長)は、次のとおり判示し、控訴人らの主張を斥けた。
「控訴人らは、予測可能性を問題とするところ、亡A(相続人)は、相続税を減少させる目的で本件不動産を相続開始時の直前に15億円で購入しているのであるから、評価通達の定めによる評価額と現実の取引価格との間に著しいかい離があることは十分認識していたというべきであり、現実の取引価格によって課税されることについて予測可能性がなかったということはできない。」「本件不動産の本件通達評価額は、本件鑑定評価額の2分の1にも達しておらず、金額にして5億円以上も少ないから、そのかい離の程度は著しいといわざるを得ないところ、本件全証拠によってもこのような著しいかい離の存在が一般的であると認めることはできない。」「本件不動産の購入及びそのための借入れは3億円を超える相続税の圧縮効果を生じさせるものであるところ、亡Aがかかる相続税の圧縮を認識し、これを期待して15億円を借入れ、本件不動産を購入したことは、租税負担の実質的な公平という観点から見た場合、本件通達評価額によらないことが相当と認められる特別の事情を基礎づける事実に当たるというべきである。」
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