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解説記事2021年06月14日 未公開判決事例紹介 マンション販売事業者の仕入税額控除、控訴審判決(2021年6月14日号・№886)

未公開判決事例紹介
マンション販売事業者の仕入税額控除、控訴審判決
東京高裁、更正処分は適法も過少申告加算税は取消し

 本誌881号13頁で紹介した消費税更正処分等取消請求控訴事件の判決について、仮名処理した上で紹介する。なお、原審の判決は本誌814号及び815号に掲載。

○販売用の居住用マンションに係る消費税の仕入税額控除の用途区分などが争われた消費税更正処分等取消請求事件の控訴審判決。東京高等裁判所(秋吉仁美裁判長)は令和3年4月21日、本件各課税仕入れは共通課税仕入れに該当するというべきであるなどとし、原審と同じく不動産の買取再販売を主な事業とする株式会社である控訴人(納税者)の請求を棄却する判決を下した(令和元年(行コ)第281号、同第282号)。ただし、過少申告加算税の賦課決定処分については「税務当局が過去の見解を変更したのに納税者への周知などの必要な措置を講じていなかった」として処分を取り消した。

主  文

1 令和元年10月11日言渡しの原判決を次のとおり変更する。
2(1)N税務署長が控訴人に対し平成29年7月31日付けでした控訴人の平成25年から平成27年までの各年1月1日から各年12月31日までの課税期間分の各過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
 (2)控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。
3 令和元年10月16日言渡しの原追加判決に対する控訴を棄却する。
4 訴訟費用は、令和元年10月11日言渡しの原判決に関するものは、原審及び当審を通じて、これを10分し、その9を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とし、同月16日言渡しの原追加判決に関する控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨
1
 令和元年10月11日言渡しの原判決(以下「原判決」という。)及び同月16日言渡しの原追加判決(以下「原追加判決」という。)をいずれも取り消す。
2(1)N税務署長が控訴人に対し平成29年7月31日付けでした控訴人の平成25年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成25年12月課税期間」という。)分の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の更正処分(以下「平成25年12月課税期間更正処分」という。)のうち、消費税の還付金の額に相当する税額4152万7959円及び地方消費税の還付金の額に相当する税額1038万1989円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
 (2)N税務署長が控訴人に対し平成29年7月31日付けでした控訴人の平成26年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成26年12月課税期間」という。)分の消費税等の更正処分(以下「平成26年12月課税期間更正処分」という。)のうち、消費税の還付金の額に相当する税額9120万5943円及び地方消費税の還付金の額に相当する税額2449万9345円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
 (3)N税務署長が控訴人に対し平成29年7月31日付けでした控訴人の平成27年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「平成27年12月課税期間」といい、平成25年12月課税期間、平成26年12月課税期間と併せて「本件各課税期間」という。)分の消費税等の更正処分(以下「平成27年12月課税期間更正処分」といい、平成25年12月課税期間更正処分、平成26年12月課税期間更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)のうち、消費税の還付金の額に相当する税額7849万7202円及び地方消費税の還付金の額に相当する税額2117万2577円を超える部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
3(1)N税務署長が控訴人に対し平成28年12月27日付けでした控訴人の課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請の却下処分を取り消す。
 (2)K税務署長は、控訴人に対し、控訴人が平成28年11月15日付けでした課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請を承認せよ。

第2 事案の概要(略称は、原判決のものを用いる。)
1 事案の概要

 本件は、中古不動産の買取再販売を主な事業とする控訴人が、次の各請求をした事案である。
(1)原審第1事件
 控訴人が、本件各課税期間の消費税等について、販売目的で行った課税仕入れである建物の購入のうち、購入時にその全部又は一部が住宅用として賃貸されている建物(本件各建物)に係るもの(本件各課税仕入れ)につき、消費税法30条2項1号イ所定の「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に区分されることを前提として、同条1項の課税標準額に対する消費税額から控除する課税仕入れに係る消費税額(控除対象仕入税額)を計算し、算出した納付すべき税額に基づき確定申告(本件各確定申告)をしたところ、N税務署長から、本件各課税仕入れは、同条2項1号ロ所定の「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ」(共通課税仕入れ)に区分されるとして、本件各更正処分及びこれらに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)を受けたことから、これらの取消しを求めた事案である。
(2)原審第2事件
 控訴人が、仮に、本件各課税仕入れが共通課税仕入れに区分される場合、控除対象仕入税額の計算に当たり、本件各課税仕入れに係る消費税額に乗ずべき消費税法30条3項の課税売上割合に準ずる割合として算出した割合(本件割合)は合理的に算定されたものであると主張して、N税務署長に対してその適用承認申請(本件承認申請)をしたところ、N税務署長から、本件承認申請を却下する旨の処分(本件却下処分)を受けたことから、その取消しを求めるとともに、本件割合の適用承認の義務付けを求めた事案である。
2 原審は、本件割合の適用承認の義務付けを求める部分を却下し(原追加判決)、その余の請求について棄却したところ(原判決)、控訴人がいずれに対しても控訴をした。なお、当審の審理中に控訴人の納税地が異動し、管轄する税務署長がK税務署長に代わったことから、原審第2事件の義務付け訴訟の請求の趣旨がK税務署長に対するものに変更されている。
3(1)関係法令等の定め及び前提事実は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要等」の2から4までに記載のとおりであるので、これを引用する。
 ア 原判決4頁16行目の「4の3」を「3」に改める。
 イ 原判決5頁2行目の「収受していた」の次に「(乙4、弁論の全趣旨)」を加える。
 ウ 原判決49頁12行目の「13号」の次に「(令和2年法律第8号による改正前のもの)」を加える。
 エ 原判決50頁26行目の末尾の次に、「また、同項2号は、1号に掲げる場合以外の場合について、当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法(以下、当該方法を「一括比例配分方式」ということがある。)による旨定めている。」を加える。
 オ 原判決53頁11行目の末尾の次に改行の上、以下のとおり加える。
 「4 消費税法基本通達11−2−20(課税仕入れ等の用途区分の判定時期)は、個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物を課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分は、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日の状況により行うことになるが、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日において、当該区分が明らかにされていない場合で、その日の属する課税期間の末日までに、当該区分が明らかにされたときは、その明らかにされた区分によって消費税法30条2項1号(個別対応方式による仕入税額控除)の規定を適用することとして差し支えない旨定めている。」
 カ 原判決53頁12行目の「4」を「5」に、同17行目の冒頭の「5」を「6」にそれぞれ改める。
 (2)争点及び争点に係る当事者の主張は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要等」の5及び「第3 争点に係る当事者の主張」に記載のとおりであるので、これを引用する。
 ア 原判決15頁10行目以降の「消費税基本通達」を「消費税法基本通達」に改める。
 イ 原判決23頁17行目から18行目にかけての「裁決」の次に「(以下「平成17年裁決」という。)」を、同18行目の「裁決」の次に「(以下「平成22年裁決」という。)」をそれぞれ加える。

第3 当裁判所の判断
1
 当裁判所は、本件各課税仕入れが控除対象仕入税額の計算において共通課税仕入れに区分されるとした本件各更正処分は適法であるが、本件各確定申告における申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると認められるので本件各賦課決定処分は違法であり、本件割合は、控訴人の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものとは認められないので本件却下処分は適法であって、本件割合の適用承認の義務付けを求める訴えは不適法であると判断する。その理由は、次のとおり原判決を補正し、後記2のとおり控訴人の控訴理由に対する判断及び後記3のとおり被控訴人の主張に対する判断を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中「第4 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決31頁18行目の末尾の次に「さらに、控除対象仕入税額を計算するについては、課税仕入れに係る消費税のうち、控除の対象となる課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(その他の資産の譲渡等)にのみ要するもの、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合に限って、個別対応方式を認め、それ以外の場合には、当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法である一括比例配分方式で算出することとされ、課税売上割合は、当該課税期間中における資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちの課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合であって、その分母にはその他の資産の譲渡等の対価の額を加えることとされている(消費税法30条2項、6項)。」を加える。
(2)原判決32頁8行目の冒頭から同12行目の末尾までを次のとおり改める。
 「しかしながら、①消費税法30条1項が仕入税額控除を認めた趣旨は、いわゆる課税の累積を排除することにあり、課税仕入れに対応する売上げに係る取引がその他の資産の譲渡等に当たるものであるときには課税の累積が生じないため仕入税額控除を認める必要がないこと、②消費税法30条2項が、当該課税期間における課税売上高が5億円以下である場合で、かつ課税売上割合が95パーセント以上である場合に、課税仕入れと売上げに係る取引との個別的な対応関係を問うことなく、控除対象仕入税額の全額控除を認めたのは、あくまで納税義務者の納税関係の事務の負担への配慮等の観点からであって、上記の要件に該当しない場合には、原則のとおりに、その他の資産の譲渡等に要する課税仕入れに係る消費税額は控除の対象とはならない(すなわち、控除の対象はあくまでも課税資産の譲渡等に要する課税仕入れに係る消費税額に限定して、控除対象仕入税額を計算すべきである。)とされていること、③控除対象仕入税額を計算するについては、用途区分が明らかにされている場合に限って、個別対応方式が認められ、それ以外の場合には、課税期間における課税仕入れに係る消費税額の合計額に、その課税期間の課税売上割合を乗じて計算する一括比例配分方式を採用することとされているところ、その課税売上割合の分母にはその他の資産の譲渡等の対価の額を加えることとされていること、④課税仕入れの用途区分は課税仕入れを行った日の状況により行うことと解されるところ、目的が仕入れの日に確定しているとは限らないこと、⑤ベン図的にも、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」と「その他の資産の譲渡等にのみ要するもの」と「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」との3区分があるのであるから、課税資産の譲渡等に「のみ」要するというのは、その他の資産の譲渡等には要しないものと解するのが自然であることを前提とすると、規定の趣旨からも規定の文言からも、消費税法30条2項1号の「課税資産の譲渡等にのみ要する」とは、課税の累積が生じる場合である課税資産の譲渡等に要することが課税仕入れを行った日を基準として見込まれており(ないしは予定されており(以下同じ。))かつその他の資産の譲渡等に要することが課税仕入れを行った日を基準として見込まれていないことを意味するものと解釈するのが相当である。要することが見込まれるかどうかの判断要素の一つとして課税仕入れの「目的」が挙げられるとしても、課税の累積は、課税仕入れの目的が課税資産の譲渡等であったことによって生じるものではなく、課税資産の譲渡等が行われることの結果によって生じるものであるから、「最終的な目的」や「主たる目的」に限定されると解すべき根拠はなく、その他の資産の譲渡等が行われることが見込まれるのであれば、そこには課税の累積が生じないのであるから、課税資産の譲渡等にのみ要するものと扱うことは相当でない。以上によれば、用途区分の判定を課税仕入れの「最終的目的」によって判断し、事業者が課税資産の譲渡等を最終的な目的として行った課税仕入れについては、仮にその他の資産の譲渡が見込まれていたとしても、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するとする控訴人の主張は採用できない。事業者に課税資産の譲渡等の目的があり、その他の資産の譲渡等の目的がなかったとしても、課税仕入れを行った日において将来その他の資産の譲渡等が確実に見込まれ、その他の資産の譲渡等に要する課税仕入れとなることが明らかである場合には、共通課税仕入れに該当すると解釈するのが相当である。」
(3)原判決32頁25行目の「個別対応」から同33頁8行目の末尾までを次のとおり改める。
  「①については、非課税売上げの割合が非常に小さい場合であっても、課税売上高が5億円を超える場合には、消費税法30条2項は、同条1項の規定に関わらず、その他の資産の譲渡等に要する課税仕入れに係る消費税額は控除の対象とはならないとの原則を採用しているのであり、立法政策の問題であって、その点で主張は採用できないのみならず、消費税法30条2項2号は、用途区分が明らかにされていない場合には、一括比例配分方式を採用することとしており、個別対応方式による場合や、さらには課税売上割合に準ずる割合による場合と比較して、控除対象仕入税額が事業者に不利になる場合があることは予定しているものと認められるので、主張は採用できない。②については、課税仕入れの行われた日の状況に基づいて判断した結果、その他の資産の譲渡等に要すると判断される以上、消費税法30条2項1号の規定するところと言わざるを得ず、立法政策の問題であって、主張は採用できない。」
(4)原判決33頁19行目以降の各「甲43添付」を「甲43別添」に改める。
(5)原判決34頁11行目の「できないこと」の次に「、回答においても、最終的な目的によってのみ判定する旨を述べているものではないし、課税仕入れを行った日において、将来自社の資材置場として使用することが確実に見込まれた場合であったとしても非課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当する旨述べているものではないこと」を加える。
(6)原判決35頁1行目の「取扱いは、」の次に「税務当局が当該課税仕入れの性質や特徴に応じて事業者の不利にならないような配慮をしつつ用途区分の判定をした事例であって、」を加え、同7行目の「明らかでなく、」の次に「最終的な目的によってのみ判定し、課税仕入れを行った日において、賃貸することが確実に見込まれた場合であったとしても課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに該当する旨述べているものではないことからすると、」を加え、同8行目の「読み取ること」を「示したものと認めること」に改め、同14行目の「も」及び同15行目の「仮に、」をそれぞれ削り、同16行目の「個別事例の一つにすぎず、」を「平成9年当時の税務当局の個別事例の一つの回答、あるいは、取扱いにとどまり、」に改める。
(7)原判決36頁5行目の「されないのは、」の次に「他受工事補償金が対価ではないという」を加え、同行目の「のであって、」を「。この事例が本件住宅貸付けと同種の事例であるとは解されないので、」に改め、同10行目の「されないのは、」の次に「確実に予定されていないという」を加え、同10・11行目の「のであって、」を「。この事例が本件住宅貸付けと同事例であるとは解されないので、」に改め、同22行目の「消費税法30条」から同23行目の末尾までを「前述した消費税法30条2項の趣旨や文言」に改める。
(8)原判決37頁16行目の「認められることから、」の次に「本件各課税仕入れは、」を加え、同18行目「本件各課税仕入れは、」を削る。
(9)原判決37頁25行目の「としても、」の次に「短期間で販売できない建物が存在することは否定できないのであり、さらに、」を加え、同38頁1行目の「ことが」の次に「確実に」を加え、同行目の「購入当時に、」から同3行目の「踏まえると、」までを削る。
(10)原判決38頁6行目の「原告は、」の次に「前記(1)ウの事例(自社の資材置場の事例)及び」を、同12行目の「しかしながら、」の次に「前記(1)ウの事例は、前記のとおり、控訴人の主張する解釈に基づく取扱いを直接示したものとはいえない。さらに、」をそれぞれ加え、同17行目の「仮に」を削り、同18行目の「これをもって、」を「平成9年当時の個別事例での回答にとどまり、これをもって、その後も」に改め、同19行目の「認め難い」の次に「(少なくとも、平成17年裁決が出された後は、一般的に是認されていたとは評価できない。)」を加え、同25行目の「等」を「、控訴人の主張によっても、共通課税仕入れに該当するとの指摘は控訴人にのみなされていること等」にそれぞれ改める。
(11)原判決39頁3行目の末尾の次に、改行の上、以下のとおり加える。
  「ア 「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原理が貫かれるべき租税法律関係においては、右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理の適用の是非を考えるべきものである。そして、右特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したことにより、納税者がその表示を信頼しその信頼に基づいて行動したところ、のちに右表示に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか、また、納税者が納税官庁の右表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかという点の考慮は不可欠のものであるといわなければならない。」(最高裁昭和60年(行ツ)第125号同62年10月30日第三小法廷判決・集民第152号93頁参照)。」
(12)原判決39頁4行目「ア また、」を「イ」に、同11行目「イ」を「ウ」にそれぞれ改め、同14行目の末尾の次に「また、賃貸中マンション購入費用事例も、東京国税局が、照会に対して回答した事例にとどまり(甲43別添20)、納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したとまでは認められない。むしろ、本件と争点を同一にする平成17年裁決、平成22年裁決、平成24年裁決において、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」であることが是認されていることも考えれば、納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存するとは認められない。」を加える。
(13)原判決40頁1行目の「措置である。」を「措置であり、主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないものである。」に、同26行目の「売上げのみに」を「売上げにのみ」にそれぞれ改め、同41頁14行目の末尾に「)。」を加え、同15・16行目の「副次的に」から同16行目の「仕入れの区分」までを「転売目的で取得した土地を資材置場として利用している場合の造成費」に改める。
(14)原判決41頁22行目の「税務当局は、」の次に、「平成7年2月頃、分譲用マンションの購入費用に関する事例において「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分したことがあり(甲43別添18)、さらに、」を加える。
(15)原判決42頁14行目の「(3)」を削り、同23行目の「しかしながら、」を「(3)一方、」に改める。
(16)原判決43頁10行目の「〔乙9〕」の次に、「(以下「東京地裁平成24年判決」という。)」を、同行目の「〔甲43添付7〕」の次に「(以下「さいたま地裁判決」という。)」を、同11行目の「〔甲43添付25〕」の次に「(以下「名古屋地裁判決」という。)」をそれぞれ加え、同12行目の「国税」から同行目の「〔乙14の1〕、」までを「平成17年裁決、」に、同13行目の冒頭から同行目の「〔乙14の2〕、」までを「平成22年裁決、」にそれぞれ改める。
(17)原判決43頁20行目の冒頭から同44頁1行目の末尾までを以下のとおり改める。
  「(4)以上を前提に、本件各確定申告における申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるかにつき検討する。平成9年頃、賃貸中マンション購入費用事例について、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」との回答をしており、税務当局が、個別対応方式における用途区分において、主たる目的又は最終的な使用目的を考慮して用途区分を判定したとも理解し得るような事実が認められることは、前記(2)に指摘のとおりである。その後、税務当局は、本件と争点を同一にする平成17年裁決、平成22年裁決、平成24年裁決において、用途区分を「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」であると主張して、これが是認されており、遅くとも平成17年頃には上記回答の見解を変更したことが窺われるが、税務当局として、従来の見解を変更したことを納税者に周知するなど、これが定着するよう必要な措置を講じるのが相当であったと解されるにもかかわらず、そのような措置を講じているとは認められない。平成9年以降の事例における回答の変更や、裁判例、裁決、文献及び雑誌の記事において共通課税仕入れに区分されることが示唆されたり、示されたりしているが、なお裁判においてその適法性は争われており、上記必要な措置が講じられたものと評価することもできない。以上のとおり、税務当局の従前の対応例、これを根拠とする紛争が継続している事情の下では、本件各確定申告において、控訴人が、本件各課税仕入れを「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分した上で控除対象仕入税額の計算をしたことについては、真に控訴人の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお、控訴人に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるというのが相当である。
  (5)したがって、本件各確定申告における申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるということができ、本件各賦課決定処分は違法である。」
(18)原判決44頁13行目の「していない」を「されていない」に改める。
(19)原判決47頁2行目の末尾の次に、行を改めた上、以下のとおり加える。
  「4 本件割合の適用承認の義務付けを求める訴えについて
  本件割合の適用承認の義務付けを求める訴えは、行訴法3条6項2号の申請型義務付けの訴えと解される。法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされたことを前提とする同号に基づく訴えは、行訴法37条の3第1項2号により、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在である場合に限り、提起することができるとされており、これは訴訟要件と解されている。本件割合の適用承認の義務付けを求める訴えが前提とする本件却下処分は既に述べたとおり適法であるから、上記の訴訟要件を満たさないこととなり、不適法却下を免れない。」
2 控訴人の控訴理由に対する判断
(1)争点(1)(本件各更正処分の適法性)について

 ア 控訴人は、別件東京地裁令和2年判決(甲73・20、22頁)を引用して、「消費税法30条2項1号が課税仕入れ等の用途区分につき「要するもの」という文言を用いているのは、①課税仕入れ等に対応する取引(資産の譲渡等)が必ずしも当該課税期間中に行われるとは限らないことや、②課税仕入れ等が事業者による経済活動の一環として行われるものである以上、将来における一定の取引を目指したものということができ、実際に当該課税仕入れ等に対応するどのような取引が行われたか(あるいは行われなかったか)を見るまでもなく、当該課税仕入れ等がどのような取引を目指して行われたかを見れば、用途区分を判定するのに十分であることによるものと解される。」、「一般に、事業者が課税仕入れ等を行う場合に、当該活動が本来得ることを目的としている収入(課税資産の譲渡等)のほかに、当該活動の過程で生じる他の収入(その他の資産の譲渡等)が見込まれることにより、当該課税仕入れ等が共通対応課税仕入れに区分されることとなるのか否かについては、一義的に解するのではなく、①他の収入が当該事業者の経済活動におけるどのような過程で得られ、その活動全体の中でどのように位置付けられているのか、②他の収入が見込まれることが、課税仕入れ等やこれに対応する取引にどのような影響を及ぼしているのか、③全体の収入の見込額のうちに他の収入の見込額が占める割合など、当該事業者が行う経済活動に関する個別の事情を踏まえ、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らし、他の収入が見込まれることをもって当該課税仕入れ等につき「その他の資産の譲渡等」にも要するものと評価することが相当といえるか否かを考慮して判断すべきである。」と主張する。しかしながら、消費税法30条2項の趣旨は、その他の資産の譲渡等に要した課税仕入れに係る消費税額は、税負担の累積を招くことがないので控除の対象とする必要がないが、当該課税期間中に課税資産の譲渡等やその他の資産の譲渡等が行われるとは限らないことから、課税仕入れを行った日を基準にして将来の多様な取引のうちどのような取引に「要する」といえるかどうか、どのような取引が将来見込まれているかを客観的に判断すべきこととしたものであって、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点からすれば、仕入れを行う動機や目的といった主観的事情よりは、仕入れによってその後どのような取引が見込まれているか(予定されているか)という客観的事情を重視するのが相当であり、その他の資産の譲渡等が将来確実に見込まれることが課税仕入れを行った日において明らかであれば、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れではなく共通課税仕入れに該当するとした上で、消費税法30条3項の課税売上割合に準ずる割合の利用によって合理的な結論を得ようとするのが消費税法30条2項及び3項の立場と解されるので、控訴人の主張は採用できない。
 イ 控訴人は、別件東京地裁令和2年判決(甲73・22頁)を引用して、収益不動産を転売する際には、建物だけでなく、敷地の譲渡(土地の譲渡は非課税)も合わせて行われるのが通常であるため、課税売上割合が低いものとならざるを得ず、課税売上割合と、賃料収入額が売上げ全体に占める割合とのギャップが生じ、この問題を、課税売上割合に準ずる割合の利用によって解消しようとしても、被控訴人は、従前、本件割合が、消費税法30条3項に規定する事業や費用の種類ごとに区分して算出するものではないことなどを理由に課税売上割合に準ずる割合に該当しないと主張しており、ギャップの問題を解消する手段が全く無かったのであるから、以上を考慮すれば、本件課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものと判断されるべきであると主張する。しかしながら、上記のようなギャップの問題は、消費税法30条3項の課税売上げ割合に準ずる割合の利用によって解消すべきものであり、ギャップの問題を解消する手段が全くないとはいえず、ギャップの問題を理由に、本件課税仕入れを課税資産の譲渡等にのみ要するものに区分しなければならないとまではいえない。控訴人の主張は、税務当局の対応ないし被控訴人の主張を非難するものに過ぎず、直ちに法令解釈の根拠となるものとも言い難い。本訴において、本件割合が合理的算定と判断されなかったのは、原判決(46頁14行目から25行目まで)を引用して認定したとおり、本件割合が本件各課税期間における賃貸料収入によっていない点で課税売上割合に準ずる割合として正当と認められなかったからであり、被控訴人の対応が原因であるとは認められない。控訴人が本件各課税期間における賃貸料収入によって課税売上割合に準ずる割合として適用承認の申請をしていれば、訴訟手続を利用して最終的には課税売上割合に準ずる割合として認められた可能性はあったと推測できる。したがって、課税売上割合と、賃料収入額が売上げ全体に占める割合とのギャップの問題を考慮しても、本件課税仕入れを共通課税仕入れに区分したことが違法とはいえず、控訴人の主張は採用できない。
 ウ 控訴人は、消費税法基本通達11−2−12において、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」の意義は、「課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等」をいうものとされているところ、「行うために」との表現の「に」の意味は、「動作・作用が何を目的として行われるかを表す」ものとして使用されている(甲62)ので、行為の目的の意味と解するほかないと主張する。しかしながら、上記基本通達の表現が直ちに法律解釈の根拠となるとは認められない上、建物の賃貸を行うためには建物を取得することが必要といえるのであるから、上記表現から行為の主たる目的を意味するものと限定して解釈することはできない。控訴人の主張は採用できない。
  控訴人は、本件各課税仕入れの日に賃貸中であれば共通課税仕入れとなり、同日に賃貸中ではなく、その翌日に賃貸されれば、課税資産の譲渡等に要するものに区分されることは不当であると主張する。しかしながら、基準日をいつに設定するかは立法政策の問題であって、控訴人の主張は、課税仕入れを行った日をもって用途区分を判定するとの立場を採用している消費税法30条2項に対する批判であって、解釈論としては採用できない。また、控訴人が指摘する事例は、課税仕入れを行った日において賃貸の予定がなかった事例であるとすれば、消費税法30条2項に適合するものであって、不当とはいえない。
 エ 控訴人は、本件各課税仕入れの「目的」、すなわち「将来どのような取引をするために必要なものとして行ったのか」については、「販売」であって「本件住宅貸付け」ではなかったし、本件各課税仕入れが行われた際に、賃貸料の収受が見込まれていた事情は、付随的な「目的」としても無関係の事情であると主張する。しかしながら、「要する」という表現を解釈する際に、課税仕入れの「目的」という意味のみで解釈できないことは既に述べたとおりであり、控訴人の主張は採用できないものである。また、仮に、賃貸料の収受が一時的ないし少額であることなどを理由にして、消費税法30条2項の趣旨に照らして例外的に共通課税仕入れに該当しないと解すべき場合があるとしても、①控訴人は会社の目的として賃貸業を挙げ、従たる事業として不動産賃貸業を行い、事業案内(甲2・3頁)には、「買い取った物件は、原則として売却までの期間に賃貸収入を得られる事業スキームを構築しています。」と記載し、賃貸収入が得られることを売却や購買促進の要素として掲げていること、②有価証券報告書(甲3・5頁)にも、不動産賃貸事業を掲げた上で「「投資用不動産」及び「固定資産物件」の管理を株式会社△△△△へ委託することで、当事業(不動産賃貸事業)における収益力の向上と不動産買取再販事業における販売活動の効率化を推進しでおります。」と記載していること、③控訴人の売上げという観点からは、売買代金も賃料収入も差異はなく、本件各建物は、その購入時に賃貸されており、販売を終了するまでの間の賃料収入が確実に見込まれること、④課税期間中の住宅用賃貸部分を含む販売用建物に関する全売上高に対する賃料収入(非課税売上げに限る。)の割合は1割前後に及び(甲24の①から④まで)、控訴人の決算説明資料(甲6・6枚目)にも賃貸収入は安定収入として経営基盤を下支えするものと記載されていることからすると、賃貸料の収受が確実に見込まれていた事情は、必ずしも確実とはいえない販売を終了するまでの間、控訴人の経営基盤を支える効果があるものと認識され、客観的には売却できるまでの付随的な目的であると評価することも可能である。したがって、上記の事情に照らすと、仮に賃料収入が一時的ないし少額であることなどを理由にして、消費税法30条2項の趣旨に照らして例外的に共通課税仕入れに該当しないと解すべき場合があるとしても、本件各課税仕入れについて、例外的に共通課税仕入れに該当しないと解すべき場合に当たるとは認められない。
 オ 控訴人は、平成元年発行質疑応答集の記載事例(甲43別添8、資材置場の事例)は、当該課税仕入れがされた日に当該土地を自社の資材置場として使用することが予定されていた事案であり、資材置場として使用することが予定されていないのであれば、用途区分の判定は、課税仕入れの時点で行い、その後に課税仕入れの用途につき変更が生じたとしても、一旦判定した用途区分を変更する必要はないとの取扱いを説明すれば足りたはずであり、かつ、「最終的な使用目的が販売用であるので」などと回答することはないなどの反論をする。しかしながら、原判決(33頁24行目から34頁12行目まで)を補正の上引用して説示したとおり、当該事例の文章や回答の内容からは、課税仕入れが行われた日に、自社の資材置場として使用する予定があったか否かは明確ではなく、控訴人の反論は採用できない。
 カ 控訴人は、分譲マンション購入費用事例は、賃貸の用に供することが予定されている事案であり、賃貸の用に供することが予定されていないのであれば、用途区分の判定は、課税仕入れの時点で行い、その後に課税仕入れの用途につき変更が生じたとしても、一旦判定した用途区分を変更する必要はないとの取扱いを説明すれば足りたはずなどと反論する。しかしながら、原判決(35頁5行目から8行目まで)を補正の上引用して説示したとおり、当該事例の文章や回答の内容からは、課税仕入れが行われた日に賃貸の用に供する予定があったか否かは明確ではなく、さらに、当該事例は、分譲マンションの購入の日に賃貸の用に供されていないことは明らかであるので、本件各課税仕入れとはその点で異なり、控訴人の反論は採用できない。
 キ 控訴人は、賃貸中マンション購入費用事例について、当該事例は、東京国税局が平成9年頃に控訴人の主張に沿う解釈をしていたことを示しており、そのことが法令解釈の根拠となり、それと異なる現在の税務当局の解釈は根拠とならない旨の反論をする。しかしながら、原判決(35頁15行目から17行目まで)を補正の上引用して説示したとおり、平成9年当時の税務当局の個別事例での回答をもって直ちにそれが法令の解釈として正当ということはできず、控訴人の反論は採用できない。
 ク 控訴人は、土地購入仲介手数料事例において、当初の回答では、当該課税仕入れは「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するとされており、その回答によれば、土地の賃貸料という副次的に発生する非課税売上げを考慮していないのは明らかであると反論する。しかしながら、被控訴人の主張によれば、当初の回答は、土地の販売目的であることが考慮されていない点で誤っており、後に改められたということであり、当初の回答は維持されていないのであるから、これを根拠とする控訴人の反論は採用できない。
  控訴人は、上記事例の見出しは改められる前後において「副次的に発生する非課税売上げがある場合の課税仕入れの区分」のままであることから、副次的に発生する非課税売上げを考慮しないことを明らかにしたものであると主張する。しかしながら、上記見出しの記載によって、本件のように仕入れがされた日に確実に発生が見込まれる非課税売上げが存する場合や、付随的な目的を有している場合も考慮しないことを明らかにしたものとまでは認められず、控訴人の主張は採用できない。
 ケ 控訴人は、ガス管移設工事費事例で問題となっているのは、ガス管移設のための課税仕入れが他受工事補償金を得るために必要なものか否かであり、他受工事補償金について事業者がガス管移設工事をしたことの対価として交付されるものか否かを問題とする理由が不明であると反論する。しかしながら、他受工事補償金は対価ではないので、用途区分と何ら関係がないことを説明したものと理解できるほか、原判決(36頁1行目から6行目まで)を補正の上引用して説示したとおり、他受工事補償金に対する回答が、本件課税仕入れに対する回答をしたものとは解釈できないのであり、控訴人の反論は採用できない。
 コ 控訴人は、株式委託売買手数料事例について、仮に配当金の収受の確実な予定があるか否かが用途区分の判断の分かれ目になるのであれば、当該事例はそのことを踏まえたものになるはずであるが、実際にはそのような説明はなされていないなどの反論をする。しかしながら、原判決(36頁8行目から12行目まで)を補正の上引用して説示したとおり、収受の確実な予定がないことは配当金の性質によるもので、控訴人主張の説明を加える必要がないと解されるので、控訴人の反論は採用できない。
 サ 控訴人は、本件各更正処分が租税平等主義違反に該当する根拠として、用途区分の判定を目的のみで行うことが一般的に容認されていたと主張する。しかしながら、原判決(38頁12行目から39頁2行目まで及び43頁8行目から16行目まで)を補正の上引用して説示したとおり、平成17年以降は、一般的に容認されてきたとは認められない。控訴人は、少なくとも一部では容認されている者がいるので、控訴人との関係では租税平等主義違反に該当する旨の主張をする。しかしながら、控訴人の主張する容認されている者がどのような事例で容認されているか明らかではない上、仮に、一部では税務当局から指摘されておらず結果的に容認されているといえる者がいたとしても、一般的に容認されているとは認められない以上、租税平等主義違反に該当するとはいえない。
 シ 控訴人は、税務当局の取扱いが、控訴人の主張する解釈に基づく取扱いを示したものといえないとしても、用途区分の判定を目的のみで行う方法を公的見解として表示しているといえることや消費税法基本通達11−2−12及び同11−2−15も同様の判定方法を公的見解として表示しているといえること、本件課税仕入れの用途区分に関する取扱いは区々とされていることなどを指摘して、本件各更正処分が信義則に違反すると主張する。しかしながら、控訴人が指摘する税務当局の取扱いや指摘の通達の内容を検討しても、いずれも用途区分の判定を目的のみで行う方法や、本件課税仕入れが、課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当することを納税者に対して公的見解として表示したものとは認められないので、控訴人の主張は前提を欠き、採用できない。
(2)争点3(本件割合の合理性)について
 ア 控訴人は、本件割合について、「当該建物が譲渡されない限り、その賃貸料収入は課税売上割合に準ずる割合に反映されないこととなるところ、このような計算方法によることの合理性は明らかにされているとは言い難い」(原判決46頁14行目から25行目まで)との指摘に対して、例えば、事業者が購入する当該建物のうち購入してから販売するまでの期間が長期にわたる建物が多い場合、当該建物の購入から販売までの間に発生する当該建物の一部の事業用賃貸による売上げ及び当該建物の全部又は一部の住宅用賃貸による売上げの総額は、上記期間が短期の建物が多い場合に比して多額となるところ、かような場合には、本件割合は、課税期間単位の割合よりも、特定の課税期間における当該建物の販売による収入に比して多額の賃貸料収入を算定の基礎に含めることになる結果として低下することになるから、課税期間単位の割合よりも事業者の事業の実態を反映するものということができるし、仮に、本件割合が承認された後に、これを用いて住宅用賃貸部分を含む販売用建物の購入に係る仕入控除税額を計算することを不適当とする特別の事情が生じた場合、税務署長はこれを取り消すことができ、税務当局はこれによって事後的に弊害の発生に対処することも可能であることからすれば、上記の指摘は、本件割合の合理性を否定する理由にはならないと反論する。しかしながら、課税売上割合に準ずる割合を、課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとを合理的に区別するものとして課税売上げと非課税売上げの割合でもって算出しようとする以上、課税期間中の住宅用賃貸部分を含む販売用建物の賃貸料収入の全部を計上せず、さらに、課税期間前の住宅用賃貸部分を含む販売用建物の賃貸料収入の一部を計上することに合理的な理由は認められず、本件割合は、消費税法30条3項1号に規定する「合理的に算定されるもの」に該当するとは認められない。控訴人の反論のうち、譲渡されたときには賃貸料収入が多額となることをいうものは、当該建物が譲渡されない限り、その賃貸料収入は課税売上割合に準ずる割合に反映されないことの不合理に対する反論となっていないし、税務署長が後に取り消すことができる権限があるとしても、それで本件割合の合理性が説明されているものではなく、控訴人の反論は採用できない。
  控訴人は、本件割合は、控訴人の土地の販売収入を算入しない点で、控訴人の課税売上割合を採用することと比較してより合理的であるから、本件割合が、賃貸料収入について課税期間の枠組みを超えてもなお消費税法30条3項1号に規定する「合理的に算定されるもの」に該当する旨の主張をする。しかしながら、本件割合が、土地の販売収入を算入しないという点に限定すれば合理的であるといえても、本件割合は、本件各課税仕入れが課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものであるとの前提に立って、その性質に応じて対応する売上げによって区別しようとするものであるから、課税期間中の収入の全部を計上せず、すなわち、住宅用賃貸部分を含む建物を譲渡しない限り、その賃貸料収入を課税売上割合に準ずる割合に反映せず、一方で、課税期間前の収入の一部を計上することは、課税資産の譲渡等に要するものとその他の資産の譲渡等に要するものとを区別する方法として不合理であるといわざるを得ない。控訴人は、本件割合は、控訴人の土地の販売収入を算入しない点で、控訴人の課税売上割合を採用することと比較してより合理的である旨主張するが、上記の点に照らせば、より合理的であるとは直ちに認められず、控訴人の主張は採用できない。
 イ 控訴人は、被控訴人が、課税期間単位の割合と同一の計算方法による割合であっても、課税売上割合に準ずる割合として承認していなかった事実を立証するためと主張して、「各国税局の調査課所管法人による、「居住契約付物件」の建物に係る取得費用又は当該建物に係る改修費等を適用範囲とする課税期間単位の割合と同一の計算方法による割合を課税売上割合に準ずる割合とすることについての承認申請に関する①課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請の却下通知書、②消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書、③上記承認申請に係る国税局作成の調査事績又は意見に関する資料」について、文書提出命令の申立てをした。しかしながら、本件割合は、既に述べたとおり、課税期間中の収入の全部を計上せず、さらに、課税期間前の収入の一部を計上する点において合理的であるとはいえないのであるから、その点において採用できず、被控訴人が、課税期間単位の割合と同一の計算方法による場合にも課税売上割合に準ずる割合を承認していなかったか否かは本件の結論を左右せず、文書の取調べの必要性が認められない。
  また、控訴人は、本件各課税期間当時の税務当局の解釈及び執行によれば、課税期間単位の割合について、消費税法30条3項の準ずる割合の承認を得ることは不可能であった事実、及び被控訴人が本件訴訟追行のための戦略的ないし政策的考慮に基づき同項に関する従前の解釈及び執行を覆して平成30年12月21日付けで控訴人のなした消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請を承認した事実を立証するためと主張して、「①S税務署長が平成26年11月26日付けで所管法人に対して行った課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請の却下に係る東京国税局作成の調査事績又は意見に関する資料、②N税務署長が平成28年12月27日付けで控訴人に対して行った課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請の却下に係る東京国税局作成の調査事績又は意見に関する資料、③N税務署長が平成30年12月21日付けで控訴人に対して行った課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請の承認に係る東京国税局作成の調査事績又は意見に関する資料」について、文書提出命令の申立てをした。しかしながら、本件割合は、既に述べたとおり、課税期間中の収入の全部を計上せず、さらに、課税期間前の収入の一部を計上する点において合理的であるとはいえないのであるから、その点において採用できず、課税庁が他の事例で消費税法30条3項の準ずる割合の承認をしなかった否かは本件の結論を左右せず、さらに、平成30年12月21日付けの承認の事実も、本件各更正処分後の事情であるので本件の結論を左右せず、文書の取調べの必要性が認められない。
(3)控訴人のその他の主張は、事実が認められないか結論を左右しないので、いずれも採用できない。
3 被控訴人の主張に対する判断
(1)争点2(申告額が過少であったことについての正当な理由)について

 ア 被控訴人は、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」が認められないことの根拠として、東京地裁平成24年判決、さいたま地裁判決、名古屋地裁判決、平成17年裁決、平成22年裁決及び平成27年裁決を挙げて、これらはいずれも本件課税仕入れが共通課税仕入れに区分されることを示唆するものであり、さらには、文献又は雑誌の記事においても、本件課税仕入れについて共通課税仕入れに当たることを示すものが存在していたことを挙げる。しかしながら、原判決(42頁14行目から23行目まで)を補正の上引用して説示したとおり、税務当局は、平成9年頃、本件課税仕入れを課税資産の譲渡にのみ要する課税仕入れに該当するとの回答をしていたことが認められることを前提とすると、その後、平成17年以降、本件各確定申告当時までにおいては、本件課税仕入れについて共通課税仕入れに当たることを示すものが存在していることを考慮しても、従来の見解を変更したことを納税者に周知するなど、これが定着するよう必要な措置を講じるのが相当であったと解されるが、そのような措置が講じられたとは認められない以上、控訴人には真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に該当するということができる。
 イ 被控訴人は、平成9年頃、本件課税仕入れを課税資産の譲渡にのみ要する課税仕入れと扱っていない旨の主張をする。しかしながら、証拠(甲43別添20)の記載内容は相当詳細かつ具体的である上、当時の税務当局職員の説明も存在すること、本件課税仕入れを共通課税仕入れであることを示唆する公的機関が作成した文書の存在も平成17年まで指摘できないことを踏まえると、平成9年頃、税務当局が、本件課税仕入れを課税資産の譲渡にのみ要する課税仕入れと扱っていた可能性は否定できず、被控訴人の主張は採用できない。被控訴人も、平成9年頃の照会回答について存在が確認できないと答弁するにとどまり、上記証拠が虚偽であるなどとして積極的にそのような回答が無かったと答弁することはしていない。さらに、被控訴人は、平成9年頃の照会回答について、誤った一事例の回答に過ぎないと反論するが、仮に、誤った一事例に過ぎないとすれば、その後、これを改めた正しい照会回答が複数存在するものと考えられるが、そのような証拠は見当たらないので、誤った一事例の回答にとどまるものとは認められない。平成8年8月30日に発行された書籍(乙20)には、本件課税仕入れが共通課税仕入れであることが記載されているものの、同記載は、平成17年11月5日に追加されたことが認められるので(甲58)、上記を否定するに足りない。
(2)被控訴人のその他の主張は、事実が認められないか結論を左右しないので、いずれも採用できない。

第4 結論

 以上によれば、控訴人の訴えのうち、適用承認の義務付けを求める部分は不適法であるのでこれを却下し、その余の請求のうち、本件各賦課決定処分の取消しを求める部分は理由があるのでこれを認容し、その余は棄却するのが相当であるところ、これと異なる原判決は一部相当ではないので、上記のとおり変更し、原追加判決は相当であるので、これに対する控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第5民事部
裁判長裁判官 秋吉仁美
裁判官 小西 洋
裁判官田村政巳は転補のため署名押印できない。
裁判長裁判官 秋吉仁美

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