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解説記事2021年06月21日 ニュース特集 Q&A 改訂CGコード(2021年6月21日号・№887)

ニュース特集
企業から質問が多かった事項について独自取材に基づき回答
Q&A 改訂CGコード


 6月11日、東証は改訂コーポレートガバナンス・コードの確定版を公表し、同日施行した。
 5月7日に締め切られたパブリックコメントには637もの意見が寄せられ、これに対し東証が回答を示した「市場区分の再編に係る第三次制度改正事項に寄せられたパブリック・コメントの結果について」は300ページ近くにも及んでいる。最も多くの意見が寄せられたのは「取締役会の機能発揮等」に関するもので175、次いで「サステナビリティを巡る課題への取組み」に関するものの121となっている。
 本特集では、改訂コーポレートガバナンス・コードのうち企業から質問が多かった事項について、東証の回答では明記されていない内容を含む独自取材に基づく回答をQ&A形式でお届けする。また、改訂コーポレートガバナンス・コードとともに確定した「投資家と企業の対話ガイドライン」の改訂版についても、改訂案から変更があった点をとり上げる。

取締役会の機能発揮

スキル・マトリックス
Q

 改訂補充原則4−11①では、取締役の有するスキル等の組み合わせを開示することが求められていますが、同原則で例示されている「スキル・マトリックス」以外の様式の使用は可能でしょうか?

<補充原則4-11①> ※赤字が改訂部分(以下同)

 取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、 取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

A
 改訂補充原則4−11①における「スキル・マトリックスをはじめ」という表現から分かるように、スキル・マトリックスは「スキル等の組み合わせ」を開示する手段の一つとして例示されているに過ぎません。したがって、「スキル等の組み合わせ」の開示には必ずしもスキル・マトリックスを使う必要はなく、形式・様式は企業に委ねられています。場合によっては、表を用いず、文章により説明することも考えられます。

Q
 改訂補充原則4−11①によるスキルの組み合わせの開示対象者は社外取締役のみでしょうか、あるいは全取締役でしょうか。
A
 改訂補充原則4−11①では、「経営戦略に照らして」自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役の有するスキル等の組み合わせを開示することを求めています。「経営戦略に照らして」と前置きしていることを踏まえれば、スキル等の組み合わせの開示対象者は、社内取締役を含む全取締役(社内取締役及び社外取締役)となります。

指名委員会・報酬委員会
Q

 改訂補充原則4−10①では、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない監査役会設置会社または監査等委員会設置会社に対し指名委員会・報酬委員会の設置を求め、さらにプライム市場上場会社には、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とすることを促していますが、「基本とする」との表現からすると、独立社外取締役が過半数いなくても同原則をコンプライすることは可能ということでしょうか?

<補充原則4-10①>

 上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名(後継者計画を含む)・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した指名委員会・報酬諮問委員会を設置することにより、指名や・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり、ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、これらの委員会の独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。
 特に、プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。

A
 可能です。「基本とする」という文言は、各委員会の構成員の過半数が独立社外取締役でなくても同原則をコンプライできるよう、あえて入れられたものです。

Q
 改訂補充原則4−10①では、プライム市場に上場する監査役会設置会社または監査等委員会設置会社に対し、指名委員会・報酬委員会の「権限・役割等」を開示することを求めていますが、ここでいう「権限・役割」は指名委員会等設置会社における指名委員会・報酬委員会と同じものと考えればよいでしょうか?
A
 改訂補充原則4−10①における「指名委員会・報酬委員会」はあくまで任意のものであるため、指名委員会等設置会社における指名委員会・報酬委員会と全く同じ権限・役割を付与することはできません。例えば、指名委員会等設置会社における指名委員会は株主総会に提出する取締役の選任及び解任に関する議案の内容を決定することができ(会社法400条①)、報酬委員会は執行役等の個人別の報酬等の内容を決定することができますが(同③)、任意の指名委員会・報酬委員会でこれらを「決定」することはできません。
 ただし、任意の指名委員会・報酬委員会の権限や役割を、指名委員会等設置会社における指名委員会・報酬委員会を参考に検討することはあり得ます。

企業の中核人材の多様性の確保

Q
 コーポレートガバナンス・コードの改訂により新設された補充原則2−4①では、女性とともに「外国人」「中途採用者」の管理職への登用等について測定可能な目標と達成状況の開示が求められていますが、ここでいう「外国人」には海外子会社の人材は含まれますか? また、「中途採用者」の定義を教えてください。

<補充原則2-4①> 

 上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。
 また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

A
 コーポレートガバナンス・コードはあくまで日本企業を対象としたものであるため、同原則にいう「外国人」には海外子会社に所属する外国人は含まれません。
 「中途採用」の定義は特段決まっていないため、各社が自主的に決めることになります。例えば、新卒時はアルバイトとして入社した人材を数年後に正社員に登用した場合や、一度退職し、再入社した社員などを「中途採用者」に含めるかどうかは各社の判断に委ねられます。ただし、一旦決めた定義には継続性が求められます。

Q
 補充原則2−4①が開示を求める「測定可能な目標」は、「測定可能な」という文言を踏まえると、数値目標を示すことは必須でしょうか?
A
 必須ではありません。そもそも詳細な数値目標を立てること自体が困難なケースや、例えば国内事業に集中しているため、外国人を増やす予定がないといったケースも考えられます。こうした各社の事情を踏まえ、下記のような記載方法も認められます。
・現状の数値を示した上での、「現状より増加させる予定」あるいは「現状を維持する予定」といった定性的な記載
・女性の管理職登用は〇%、中途採用者は現状より〇%増加させていく方針といった形で数値目標を示すが、外国人の登用については、自社の事業が国内中心であるという特性に鑑みて、測定可能な目標は示さない方法(目標を示さない理由を開示する方法)
・現状の数値を示した上での、「将来的に〇%、あるいは、〇人程度まで拡充する予定」といった記載

Q
 持株会社が上場している場合、補充原則2−4①が求める測定可能な目標等は持株会社について設定し、開示すればよいのでしょうか?
A
 基本的には中核子会社について測定可能な目標等を設定し、開示することになります。これは、持株会社の役職員が少なかったり、子会社と掛け持ちしたりしている役職員が多い場合、当該持株会社について測定可能な目標等を設定・開示しても実質的な意味がないためです。
 なお、規模など「重要性」の観点から、持株会社傘下のすべての子会社を対象とせず、特定の子会社に対象を限定することも考えられます。

サステナビリティを巡る課題への対応

TCFD開示
Q
 コーポレートガバナンス・コードの改訂により新設された補充原則3−1③では、プライム市場上場会社に対し「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示」を促していますが、事実上TCFD開示が必須になったということでしょうか?また、開示媒体は有価証券報告書でしょうか?

<補充原則3-1③> ※太字が改訂部分(以下同)

 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。
 特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

A
 補充原則3−1③では「TCFDまたはそれと同等の枠組みに“基づく”開示」とされていることから、TCFD開示そのものを実施するよう求めているわけではありません。TCFD開示の4要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に留意して開示をすることは重要ですが、細目の開示まで求められているわけではありません。
 また、開示媒体は限定されていませんので、必ずしも有価証券報告書のような法定開示に組み込む必要はなく、統合報告書や環境報告書での開示も認められます。

国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応
Q

 改訂コーポレートガバナンス・コードと同時に「投資家と企業の対話ガイドライン」(以下、対話ガイドライン)の確定版が公表されましたが、対話ガイドラインの1−3には、経営戦略・経営計画等において適切に反映することを促す事項として、「案」の段階ではなかった「国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応」が加わりました。この変更の背景には何があるのでしょうか? また、具体的にどのような対応が求められるのでしょうか?

<対話ガイドライン1-3> ※新設(太字は確定版で追加された文言)

 ESGやSDGsに対する社会的要請・関心の高まりやデジタルトランスフォーメーションの進展、サイバーセキュリティ対応の必要性、サプライチェーン全体での公正・適正な取引や国際的な経済安全保障を巡る環境変化への対応の必要性等の事業を取り巻く環境の変化が、経営戦略・経営計画等において適切に反映されているか。また、例えば、取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか。

A
 最近の中国情勢などが背景にあるものと思われます。また、自民党が昨年12月16日に公表した『提言「経済安全保障戦略」の策定に向けて』と政策上の平仄を合わせたとも言えます。
 特に日本企業からの技術流出の防止が念頭に置かれている模様です。
 具体的な対応としては、例えば仕入や売上の中国依存を減らすことや、技術流出の防止策(採用面など)を経営戦略・経営計画に反映することが考えられます。

グループガバナンスの在り方

上場子会社の利益相反取引
Q

 上場子会社の利益相反取引の防止について規定した補充原則4−8③(新設)では、独立社外取締役が3分の1以上(プライム市場上場会社は過半数)いない上場子会社に、「特別委員会」の設置を求めています。この特別委員会は常設する必要があるのでしょうか? また、特別委員会のメンバーは全員が独立社外取締役でなければならないのでしょうか?

<補充原則4-8③>

 支配株主を有する上場会社は、取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。

A
 特別委員会は「利益が相反する重要な取引・行為」について審議・検討する場であるため、利益が相反する重要な取引・行為が生じた場合のみ設置すれば足りることになります(すなわち、常設する必要はなし)。
 また、特別委員会のメンバーは「独立社外取締役を“含む”独立性を有する者」とされていますので、メンバー全員が独立社外取締役である必要はありません。例えば独立社外取締役を1人、残りのメンバーを「独立性を有する者」とすることも可能です。ここでいう「独立性を有する者」とは、例えば大学教授などの有識者や弁護士などが考えられます。

Q
 補充原則4−8③が対象とする「利益が相反する重要な取引・行為」には具体的にどのようなものが該当するのでしょうか? 例えば部品の売買など、日常的に発生する親子会社間取引も該当しますか?
A
 特別委員会の審議対象となる「利益が相反する重要な取引・行為」としては、例えば子会社から親会社への営業譲渡が低額で行われた場合などが想定されます。特別委員会の常設は想定されていないことからしても、補充原則4−8③では「利益が相反する重要な取引・行為」が頻繁に起こることは前提としていないと言えるでしょう。
 ただし、部品の売買など日常的に発生する親子会社間取引であっても、取引価格が相場よりも明らかに低いような場合は「利益が相反する重要な取引・行為」に該当し得る点、注意が必要です。

監査に対する信頼性の確保/内部統制・リスク管理等

Q
 改訂補充原則4−13③では、いわゆるデュアル・レポーティング・システムの構築を求めていますが、この直接報告を行う先を監査役のうちの一人とすることは可能でしょうか?

<補充原則4-13③>

 上場会社は、取締役会及び監査役会の機能発揮に向け、内部監査部門がこれらに対しても適切に直接報告を行う仕組みを構築すること等により、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべきである。また、上場会社は、例えば、社外取締役・社外監査役の指示を受けて会社の情報を適確に提供できるよう社内との連絡・調整にあたる者の選任など、社外取締役や社外監査役に必要な情報を適確に提供するための工夫を行うべきである。

A
 可能です。監査役は独任制の機関であるため、直接報告する先が必ずしも「監査役会」である必要はありません。

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