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解説記事2021年10月18日 SCOPE 有利な金額での株式取得、平均株価の90%以下かで判定(2021年10月18日号・№902)

債務超過会社から第三者割当てで株式取得
有利な金額での株式取得、平均株価の90%以下かで判定


 第三者割当てにより取得した株式の権利が有利な金額かどうかなどが争われた事案で、国税不服審判所は取得した株式は有利な金額によるものであり、経済的利益は一時所得に該当するとの判断を示し、請求人の請求を棄却した(令和2年10月1日裁決)。有利な金額での株式取得に該当するかどうかは、市場における平均株価と払込額との差額が当該平均株価の10%相当額以上であるかにより判定するとの見解を示している。

株主間の経済的衡平を図る措置はなく「株主に与えられた場合」に該当せず

 本件は、請求人が発行会社から与えられた株式を取得する権利について、原処分庁が当該権利は有利な金額で株式を取得する権利(現行:所令84③三)に該当し、当該権利に係る経済的利益が一時所得に当たるとして所得税等の更正処分等を行ったもの。請求人は、債務超過となった発行会社を救済する目的で第三者割当てにより普通株式を引き受けており、当該権利は有利な金額で株式を取得する権利に該当しないなどとして原処分の一部の取消しを求めたものである(参照)。

【表】主な争点と当事者の主張

(争点1)本件権利の付与は「株主等として与えられた場合」に該当するか否か

原処分庁 請求人
 臨時株主総会においては、株式発行に係る議案について請求人以外の株主も議決権を行使しており、請求人以外の株主が存在するにもかかわらず、本件権利が請求人に対してのみ与えられていることからすれば、本件権利は株主等の有する株式の内容及び数に応じて平等に与えられておらず、株主等として与えられたとは認められない。  本件株式発行は、会社法上、第三者割当てとしての形式を具備した上で実行されているものの、本件権利は実質的には発行会社の株主である請求人に対して与えられたものであり、請求人以外の株主は事実上失権状態にあることから、所得税法施行令84条柱書に規定する「株主等として与えられた場合」に該当する。

(争点2)本件権利は「株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合における当該株式を取得する権利」に該当するか否か

原処分庁 請求人
 「株式と引換えに払い込むべき額を決定する日の現況におけるその発行法人の株式の価額」の算定について、所得税基本通達23~35共-7は具体的な算定方法を定めていないものの、所得税基本通達23~35共-9の(1)が定める金融商品取引所に上場されている株式の公表価格は客観的なものであり、その取引日の終値は一般に時価として広く認識され利用されており、これを時価とすることが課税の公平を確保する観点からも最も妥当であることに照らすと、同通達に基づき算定するのが合理的である。  上場企業の事業再生においては、市場参加者が短期的な思惑で売買を繰り返し、市場株価と合理的な株式価額が乖離する事態が生ずるため、スポンサーが市場価格による株式の引受けをするのは現実的ではなく、発行会社が割り引いた価額による第三者割当てを実施することはやむを得ないことからすれば、本件のように事業再生の局面において独立した当事者間で形成された引受価額(払込金額)は、発行当時の種々の事業を踏まえた合理的な金額である。以上からすると、本件株式発行に係る1株当たりの払込金額は合理的であり、所得税基本通達23~35共-7の注書2の「株式と引換えに払い込むべき額を決定するための基礎として相当と認められる価額」に該当する。

 審判所は、請求人は本件契約書の約定に基づき本件権利を与えられたものであるが、本件については①株式の発行は第三者割当ての方式により発行会社の普通株式を対象として行われていること、②契約書の約定には株式の発行に際して発行会社の普通株式の株主及び各種種類株式の株主間の経済的衡平を図るために必要な措置はないこと、③請求人が株式の全てを取得した結果、請求人の発行会社発行の各種株式の合計持株比率が株式発行の前後において増加することになったことから、請求人に対する本件権利の付与は、発行会社の株主の有する株式の内容及び数に応じて平等に与えられた場合とは認められず、株主間において経済的な衡平が図られた状態とも認められないとし、「株主等として与えられた場合(当該発行法人の他の株主等に損害を及ぼすおそれがないと認められる場合に限る。)」(現行:所令84③)には該当しないとの判断を示した。
 その上で審判所は、当該権利が「株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合における当該株式を取得する権利」に該当するか否かは、上場株式の場合、株式市場における株価は日々変動するものであり、また、日本証券業協会の「第三者割当増資の取扱いに関する指針」では、払込金額は直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、株式の発行に係る取締役会決議の日から払込金額を決定するために適当な期間(最長6か月)を遡った日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができるとされ、実務上広く定着していることを勘案すると、一定期間の市場における平均株価と払い込むべき額との差額が当該平均株価の10%相当額以上であるかどうかにより判定することには合理性が認められるとした。
有利な金額での取得に該当
 本件では、「その株式と引換えに払い込むべき額を決定する日」の終値と同日前1か月間の終値の平均値はいずれにおいても株式と引換えに払い込むべき額との差額は各判定価額の10%以上であるため、当該権利は「株式と引換えに払い込むべき額が有利な金額である場合における当該株式を取得する権利」に該当すると結論付け、請求人の請求を棄却した。
 また、本件権利に係る経済的利益の価額については、所得税法施行令84条に基づき、本件権利の行使により取得した株式の本件権利に基づく払込み又は給付の期日における価額(終値)から本件権利の行使に際し払い込むべき本件株式1株当たりの額を控除した金額に、本件権利の行使により取得した本件株式の株数を乗じて算出した金額になるとしている。

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