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解説記事2021年11月01日 SCOPE 東京地裁、課税仕入れの主体ではないとして消費税還付認めず(2021年11月1日号・№904)

原告宛の領収証の発行は事実の仮装と認定
東京地裁、課税仕入れの主体ではないとして消費税還付認めず


 衣料品等の輸出入・販売等を行う原告(法人)が台湾法人N社に輸出する目的で行った衣料品等の課税仕入れは、原告ではなく複数の台湾の小売業者が行ったものであるとして、原告の消費税還付申告が認められなかった事案で、東京地裁民事51部(清水知恵子裁判長)は令和3年10月19日、「本件各課税仕入れの主体が原告であったと認めることはできない」として、更正処分等の取消しを求めた納税者の請求を棄却した。

東京地裁、買付けの決定や資金の支払、買付け後の商品の支配で主体を判断

 前提事実によると、台湾で衣料雑貨の小売業等を営み、N社の登録を受けた複数の事業者(本件各台湾事業者)は、来日して本件各国内事業者の店舗に赴き、衣料品等の商品を買い付けるとともに、本件各国内事業者から原告宛の領収証の発行を受け、それを台湾に持ち帰っていた。本件各領収証はN社に引き渡され、N社が取りまとめた後、原告に郵送されていた。原告は、受領した本件各領収証に基づき仕入明細表等を作成し、消費税等の還付申告を行っていた。
 東京地裁はまず、「本件各商品の買付けは、本件各台湾事業者が自らの意思で購入する商品やその数量を決定し、代金も基本的に自己資金で支払っていたものであり、原告が本件各商品の買付け自体に関与していたことをうかがわせる事情は認められない」と判断した。
 加えて、買付け後の商品の運搬及び輸出手続の状況や、その費用を負担したのが本件各台湾事業者であることなどから、「買付け後の本件各商品は、一貫して、本件各台湾事業者ないしその代行者であるN社の支配下に置かれていた」こと、また、「本件各国内事業者のうち少なくとも3社は、原告を買主ではなく、単なる運搬業者ないし輸出代行業者として認識していた」ことなどを指摘。さらに、「原告とN社との間の基本契約によれば、還付金額の75%以上をN社に支払うこととされていて、原告が受け取った消費税等の還付金はその大半がN社を介して本件各台湾事業者に分配されていたこと」「原告とN社との間の本件各基本契約の内容は、商品の購入に関するものではなく、集荷・配送、税還付申告を含む輸出業務に関するものであったこと」その他の認定事実から、「原告は、本件各台湾事業者が購入した本件各商品について、輸出代行業務や消費税等の還付の手続の代行等の業務を行い、その手数料として消費税等の還付金の一部を収受していたものと認めるのが相当である」との判断を下し、「本件各課税仕入れの主体が原告であったと認めることはできない」と結論づけた。

各台湾事業者は代理人・使者にあらず
 原告は、「本件各台湾事業者は、原告の代理人又は使者として本件各商品を買い付けていたもので、本件各台湾事業者が本件各商品を自己資金で購入していたのは原告に代わって立替払をしていたものである」「その上で、原告が本件各商品をN社へ輸出販売する際の売買代金と、N社が本件各台湾事業者に販売する際の売買代金を、本件各国内事業者から仕入れた際の代金額と同額とし、本件各台湾事業者に対する原告の立替金債務、原告に対するN社の買掛金債務、N社に対する本件各台湾事業者の買掛金債務を互いに相殺することなどを内容とする本件合意をしていた」旨を主張していた。
 しかし、東京地裁は、原告が主張する「確認書」が審査請求の段階で作成されたものであることや、本件各台湾事業者が同確認書の名義人となっていないことなどを指摘し、原告と本件各台湾事業者との間にそのような関係があったことを裏付ける証拠はないと判断した。さらに、「そもそも、原告が主張する本件合意の内容は、原告が、本件各国内事業者からの仕入金額に販売利益を上乗せすることなく同額でN社へ販売すること、本件各台湾事業者は、自ら本件各国内事業者の店舗に赴いて買付けを行い、自己資金によって代金を支払ったにも関わらず、N社を通じて、改めて本件各商品を購入し、その代金債務を原告及びN社との三者間の相殺により処理することなど、通常の経済活動として極めて不自然」と指摘し、台湾の営業税が考慮されていないことや、元帳に立替金債務に関する記載がないことなども踏まえて、原告の主張を斥けた。
 また、東京地裁は、原告が本件各課税仕入れの主体でないにもかかわらず、本件各台湾事業者に原告宛の本件各領収証の発行を受けさせ、これに基づき集計した仕入高等を元帳に計上したことは事実の仮装に当たるとして、重加算税の賦課決定処分も適法と判断した。
令和2年にも同種事案で納税者敗訴
 本件と同種の事案として、令和2年1月17日東京地裁判決があるが、当該事案でも納税者は、各台湾事業者について、審査請求時には「代理人」、裁判では「使者」であると主張していた。しかし、やはり当該事案でも、「確認書」は作成時期などから信用性は低いと判断され、台湾事業者が自らの意思で決定し自己資金で購入している実態などから「代理人」又は「使者」ではないと判断されている。
 本件では、課税仕入れの主体の判断に際して、「買付け及びその後の状況、売主である本件各国内事業者の認識、本件各基本契約の内容及び消費税等の還付に関する関係者の認識等」が考慮された。たとえ外形を整えたとしても、実態が伴わなければ否認される可能性が高く、さらに事実を仮装したと認定され得ることを肝に銘じておく必要があろう。

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