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コラム2019年12月16日 未公開判決事例紹介 マンション販売事業者の仕入税額控除問題(2・了)(2019年12月16日号・№815)

未公開判決事例紹介
マンション販売事業者の仕入税額控除問題(2・了)
東京地裁、共通課税仕入れに該当

 読者からの反響が大きかった本誌808号(2019.10.21)8頁で紹介した税務訴訟の判決全文について、仮名処理した上で2回に分けて紹介する(1回目は本誌814号参照)。

○販売用の居住用マンションに係る消費税の仕入税額控除の用途区分などが争われた消費税更正処分等取消請求事件。不動産の買取再販売を主な事業とする株式会社である原告(納税者)は、個別対応方式における用途区分の判定は、課税仕入れの時点における事業者の最終的な目的によって行うべきであるなどと主張したが、東京地方裁判所(鎌野真敬裁判長)は、本件各課税仕入れは共通課税仕入れに該当するというべきであるなどとし、原告の請求を棄却する判決を下した(令和元年10月11日、棄却)。(再掲)

第4 当裁判所の判断
1 争点1(住宅用賃貸部分を含む建物の購入が控除対象仕入税額の計算において共通課税仕入れに区分されるとした本件各更正処分は適法であるか)について

(1)個別対応方式における用途区分の判定について
 ア 個別対応方式における用途区分の判定について
  消費税は、広く公平な税負担を求めるという観点から、ほとんど全ての国内において行われる取引を課税の対象として、その最終的な税負担をいわゆる最終消費者に求める税であるが、納税義務者は、生産や流通等の各段階において課税資産の譲渡等を行う各事業者であり、消費者は、こうした各事業者が生産や流通等の各段階で物品やサービスの価格に順次転嫁していった消費税の税額に相当する額を最終的に負担することとなる。そこで、生産や流通等の各段階における取引で二重、三重に税が課されて税に相当する負担が累積することがないように、消費税法は、国内において課税仕入れを行った日の属する課税期間中の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額(控除対象仕入税額)を控除するものとしている(同法30条1項)。
  そして、この控除対象仕入税額の計算に当たっては、原則として当該課税期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額を控除することができるとされる(同項)ところ、これは、課税仕入れに係る消費税額を控除する趣旨が上記に述べたとおりいわゆる課税の累積を排除することにあることからすれば、課税仕入れに対応する売上げに係る取引がその他の資産の譲渡等に当たるものであるときには課税の累積が生じないため当該課税仕入れに係る消費税額を控除の対象とする必然性はないものの、納税義務者の納税関係の事務の負担への配慮等といった観点から、当該課税期間における課税売上高が5億円以下である場合で、かつ課税売上割合が95パーセント以上である場合は、課税仕入れと売上げに係る取引との個別的な対応関係を問うことなく、当該課税期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額の控除を認めたものであると解される。
  他方、当該課税期間における課税売上高が5億円を超える場合、又は、課税売上割合が95パーセントに満たない場合は、同法30条2項1号に規定する個別対応方式又は同項2号に規定する方式のいずれかの方法により控除対象仕入税額を計算するものとされるところ、これは、このように、大企業であって事務処理能力が高い場合、又は、売上げに係る取引の大部分が課税資産の譲渡等に当たるといえない場合については、上記に述べた原則のとおりに、その他の資産の譲渡等に要する課税仕入れに係る消費税額は控除の対象とはならないとの前提に立って控除対象仕入税額を計算すべきであるとしたものであると解される。
  そして、国内において行われた課税仕入れについて個別対応方式により控除対象仕入税額を計算するときは、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」の税額(同項1号イ)に「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに課税売上割合を乗じて計算した金額」(同号ロ)を加算する方法によるものとされるところ、その課税仕入れの区分の判断については、同号の文言等に即して、当該課税仕入れが行われた日の状況に基づいてその取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちのどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解するのが相当である。
 イ 個別対応方式における用途区分の判定に係る原告の主張について
  原告は、個別対応方式における用途区分の判定は、課税仕入れの最終的な目的によって行うべきであるとして、事業者が課税資産の譲渡等を最終的な目的として行った課税仕入れについては、仮に付随的な目的としてその他の資産の譲渡等が含まれていたとしても、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当すると解すべきであると主張する。
  しかしながら、用途区分の判定において課税仕入れの目的が考慮されるとしても、消費税法30条2項1号の文言や個別対応方式における用途区分に共通課税仕入れが設けられていることに照らすと、ここで考慮される課税仕入れの目的が、原告が主張するような最終的ないし主たる目的に限定されると解すべき理由はない。
  原告は、①その他の資産の譲渡等は付随的な目的にすぎず、当該課税仕入れに係る資産の譲渡等による売上げ全体に占める非課税売上げの割合が非常に小さい場合にまで、共通課税仕入れに区分した上で課税売上割合によって控除対象仕入税額を計算するのは、課税の累積が生じ得ることから妥当ではなく、また、②課税仕入れの時点では、課税資産の譲渡等の目的しかなかったものの、その後の事情の変化によって、一時的にその他の資産の譲渡等に供することとなった場合には「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分されるのに対し、課税仕入れの時点で、付随的にその他の資産の譲渡等の目的を有する場合に、形式的・機械的に共通課税仕入れに区分することとすると、取引実態に実質的な違いのない各事例で仕入税額控除上の差異を容認することとなり、不合理であると主張する。
  しかしながら、仕入税額控除において、課税の累積の排除をいかに実現するかについては立法政策に委ねられていると解されるところ、個別対応方式において共通課税仕入れと判定される課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る資産の譲渡等による売上げ全体に占める非課税売上げの割合が非常に小さい場合が生じるとしても、そのことが課税の累積の排除の観点から直ちに許容されないとまではいえず、上記アのとおり個別対応方式における用途区分が当該課税仕入れの行われた日の状況に基づいて判断すべきものであることや、控除対象仕入税額(共通仕入控除税額)は課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合によって計算する余地もあることからすると、原告の主張する解釈によらなければ直ちに不合理な結果が生じるとまではいえないのであって、原告の主張には理由がない。
 ウ 原告が指摘する税務当局の取扱いについて
  原告は、平成元年発行一問一答集及び平成元年発行質疑応答集の記載に基づいて、個別対応方式における用途区分の判定は、事業者の課税仕入れの最終的な目的によって行われるべきであると主張する。
  しかしながら、上記各記載は、直ちに法令解釈の根拠となるものとはいい難い。この点を措くとしても、平成元年発行一問一答集の記載においては「『課税資産の譲渡等にのみ要するもの』とは、課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいう。すなわち、直接、間接を問わず、また、実際に使用する時期の前後を問わず、その対価の額が最終的に課税資産の譲渡等のコストに入るような課税仕入れ等である。」と説明されているが(甲43添付4)、これは「光熱費、事務用品などに課されている税額も『課税資産の譲渡等にのみ要するもの』はすべて控除できるというが、課税資産の譲渡等にのみ要するとはどのような意味か。」という問いに対して、直接経費のみならず間接経費であっても課税資産の譲渡等を行うために必要な課税仕入れ等に含まれることを説明する趣旨と解されるのであって、ここから原告が主張する解釈を読み取るのは困難といえる。また、平成元年発行質疑応答集の記載においては「質問の造成工事の費用については、販売の目的で取得した土地に行った造成費用ですから、一時的に自社の資材置場として使用しているとしても、『非課税資産の譲渡等にのみ要するもの』となります。」と説明されているが(甲43添付8)、これは「(略)S市M地区の宅地開発を行うこととして、用地を取得し、一部造成工事を行いましたが、宅地の販売開始が翌々事業年度となるので、一時的に当社の資材置場として使用しています。この場合、当期に行った造成工事の費用は、個別対応方式により仕入税額控除を計算するに当たって、①課税売上げにのみ要するもの、②非課税売上げにのみ要するもの、③課税・非課税売上げに共通して要するもののいずれに該当することになるのでしょうか。」という問いに対する回答であって、その問いからは、必ずしも当該課税仕入れがされた日に当該土地を自社の資材置場として使用することが予定されていたことを読み取ることはできないことからすると、やはり、ここから原告が主張する解釈を読み取るのは困難といえる(なお、これと同様の記載は、平成元年8月発行の「建設業、不動産売買・仲介業、不動産賃貸業、テナント これが一番新しい消費税Q&A」〔財団法人大蔵財務協会発行。甲43添付9〕、平成2年4月発行の「消費税法取扱通達逐条解説」〔同通達11-1-23の解説部分。甲43添付10〕、平成10年発行一問一答〔甲43添付14〕、平成30年3月発行の「消費税法基本通達逐条解説」〔同通達11-2-15の解説部分。甲21、43添付11〕にも認められるところ、これらの記載についても同様といえる。この点は後記2(2)でも述べる。)。したがって、上記各記載に基づく原告の主張には理由がないといえる。
 エ 原告が指摘するその他の税務当局の取扱いについて
  原告は、別紙4に記載された複数の事例において、従前から、事業者の課税仕入れの最終的な目的によって用途区分の判定を行い、課税仕入れに伴い副次的に収受する対価をその判定において考慮していないのであって、このような取扱いは、消費税法の立法者の意思に沿うものである旨主張するが、上記各事例における取扱いは、直ちに法令解釈の根拠となるものとはいい難く、以下に述べるとおり、上記各事例をもって、原告が主張する解釈を採用すべきとはいえない。
(ア)分譲マンション購入費用事例について
 分譲マンション購入費用事例については、当該課税仕入れがされた日に、当該マンションを賃貸の用に供することが予定されていたかどうかが必ずしも明らかでなく、当該事例をもって、直ちに原告が主張する解釈を読み取ることは困難といえる。
(イ)賃貸中マンション購入費用事例について
 賃貸中マンション購入費用事例は、本件各課税仕入れと同様の事例において、法人の処理及び販売活動等から、マンションを転売目的で取得したことが明らかであることから、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに該当し、仕入税額控除が認められるとされており、概ね、原告が主張する解釈によった事例ともいうことができる。
 もっとも、仮に、平成9年頃、このような事例に基づく取扱いがあったとしても、個別事例の一つにすぎず、これをもって直ちに原告が主張する解釈を採用すべきということはできない。
(ウ)土地購入仲介手数料事例について
 土地購入仲介手数料事例では、当該土地の所有権の取得が、課税売上げである建物の販売と非課税売上げである土地の販売の両方に要するものとして、当該土地の所有権の取得に係る仲介手数料が共通課税仕入れに該当する旨の回答がされているところ、当該土地が取得時に賃貸に供されていたことは、用途区分の判定に影響しなかったものといえることから、同事例は、原告の主張する解釈に基づく取扱いを示したものとはいえない。
(エ)ガス管移設工事費事例について
 ガス管移設工事費事例における他受工事補償金は、事業者がガス管移設工事をしたことの対価として交付されるものではなく、ガス管移設工事費用の支出を行うことによって事業者に生じた経済的損害を補てんするためのものであることからすると、これが用途区分の判定において考慮されないのは、その性質によるものともいえるのであって、同事例は、原告の主張する解釈に基づく取扱いを示したものとはいえない。
(オ)株式委託売買手数料事例について
 株式委託売買手数料事例における配当金は、株式を購入した時点で確実に予定されているものとはいえないことからすると、これが用途区分の判定において考慮されないのは、その性質によるものともいえるのであって、同事例は、原告の主張する解釈に基づく取扱いを示したものとはいえない。
オ その他の原告の主張について
 原告は、仮に課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等の双方を目的とする課税仕入れは共通課税仕入れに該当すると解するのが原則であるとしても、課税の累積の排除という仕入税額控除の趣旨からすると、それぞれの目的や当該課税仕入れに係る資産の譲渡等による売上げ全体に占める非課税売上げの割合、その他諸般の事情を考慮し、当該課税仕入れが「課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ」と実質的に同視することができるときは、当該課税仕入れは「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することが認められるべきであると主張する。
 しかしながら、かかる主張についても、消費税法30条2項1号の文言や個別対応方式における用途区分に共通課税仕入れが設けられていることに照らして採用することはできない。また、原告は、上記のとおり解釈するのが消費税基本通達11-2-19の趣旨に合致すると主張するが、同通達は、共通課税仕入れ等について、例えば、原材料、包装材料、倉庫料、電力料等のように生産実績その他の合理的な基準によって「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」とその他の資産の譲渡等にのみ要するものとに区分することが可能な場合についての定めであって、そのような区分ができない場合について何ら定めるものではないことから、原告の主張には理由がない。
(2)本件各課税仕入れの用途区分について
 ア 本件においては、前提事実(1)(2)のとおり、①原告は、不動産の買取再販売を主な事業としていること、②原告は、本件各建物をいずれも事業として購入し、いずれも会計システムに棚卸資産として入力していること、③本件各建物の全部又は一部は、購入時に住宅用として賃貸されており、購入によって、原告は、賃貸人としての地位を承継し、引渡日以降の賃料を収受していたことが認められる。
   これらの事情を踏まえ、本件各課税仕入れが行われた日の状況に基づいて検討すると、本件各建物は、本件各課税仕入れが行われた日の状況において、販売に供されるとともに、一定の期間、住宅用の賃貸にも供されるものであったと認められることから、課税資産の譲渡等にのみ要するものとはいえず、また、その他の資産の譲渡等にのみ要するものともいえないのであって、本件各課税仕入れは、共通課税仕入れに該当するというべきである。
 イ 原告は、棚卸資産として計上した建物についてできるだけ短期間で販売することを事業方針とし、本件各課税期間以前に販売した建物に関する平均事業期間は7か月以下であったとして、本件各建物の全部又は一部が購入時に住宅用として賃貸されていたことは考慮されるべきではない旨主張する。
   しかしながら、原告の主張を前提にしたとしても、本件各建物は、その購入当時に一定の期間は住宅用貸付けに供され、原告が賃貸料を収受することが見込まれていたといえるのであって、購入当時に、具体的に住宅用貸付けが短期間で終了することが予定されていたような事情も見当たらないことも踏まえると、やはり、本件各課税仕入れは共通課税仕入れに該当するというべきであって、原告の主張は採用することができない。
(3)租税平等主義違反の主張について
 ア 原告は、別紙4に記載された複数の事例における取扱い等を挙げた上で、税務当局は、本件課税仕入れについて「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するとの処理を容認し、また、課税仕入れの最終的な目的によって用途区分の判定を行い、課税仕入れに伴い副次的に収受する対価をその判定において考慮しない取扱いをしていることから、本件各更正処分は、租税平等主義に違反すると主張する。
 イ しかしながら、前記(1)エのとおり、分譲マンション購入費用事例、土地購入仲介手数料事例、ガス管移設工事費事例、株式委託売買手数料事例は、いずれも原告の主張する解釈に基づく取扱いを示したものとはいえない。
   また、賃貸中マンション購入費用事例は、本件と同様の事例において、原告が主張する解釈に基づく対応を示すものといえるものの、仮に平成9年頃にこのような取扱いをした事例があったとしても、これをもって、直ちにそのような取扱いが一般的に是認されていたとまでは認め難い。さらに、原告は、平成31年3月13日に開催された不動産関連事業の会社や税理士等を対象とするセミナーの参加者に対するアンケート結果等(甲52)に基づき、本件課税仕入れを「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分することにつき、税務当局の税務調査での対応は区々になっているなどと主張するが、そもそも上記アンケートの回答における事案の詳細は明らかでないこと等からすると、やはり原告の主張する解釈に基づく取扱いが広く一般的にされているとまでは認められない。
   したがって、本件各更正処分について、租税平等主義に違反するということはできない。
(4)信義則違反の主張について
 ア また、原告は、土地購入仲介手数料事例、株式委託売買手数料事例について、課税仕入れの最終的な目的によって用途区分の判定を行い、課税仕入れに伴い副次的に収受する対価をその判定において考慮しない取扱いを公的見解としてウェブサイト上で表示しており、原告は、これを信頼して、本件各課税仕入れを「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するものと判定して税務申告をしてきたとして、本件各更正処分は、信義則に違反すると主張する。
 イ しかしながら、前記(1)エのとおり、土地購入仲介手数料事例、株式委託売買手数料事例は、いずれも原告の主張する解釈に基づく取扱いを示したものとはいえず、本件において、税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したとはいえない。
   したがって、本件各更正処分について、信義則に違反するということはできない。
(5)小括
 以上のとおり、本件各課税仕入れは共通課税仕入れに区分されるものであって、本件各更正処分は適法である。
2 争点2(本件各更正処分が適法である場合、本件各確定申告における申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるか)について
(1)過少申告加算税は、過少申告による納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対して課されるものであり、これによって、当初から適正に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、過少申告による納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置である。この趣旨に照らせば、過少申告があっても例外的に過少申告加算税が課されない場合として国税通則法65条4項が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁、最高裁平成16年(行ヒ)第86号、第87号同18年4月25日第三小法廷判決・民集60巻4号1728頁参照)。
(2)掲記の各証拠によると、次の事実が認められる。
 ア 平成元年5月発行の「消費税一問一答」(国税庁・部内限り)には、「副次的に発生する非課税売上げがある場合の課税仕入れの区分」として、土地購入仲介手数料事例と同様の問いに対する回答として、「土地の賃貸収入がある場合でも、質問の場合のように、分譲用のマンションの建設計画に基づいて土地の所有権を取得していることが明らかであるときには、その取得に際して支払った仲介手数料は、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに該当する。」と記載されている(甲43添付13)。
   その後、平成10年発行一問一答には、土地購入仲介手数料事例について、別紙4のとおり共通課税仕入れに区分する旨記載されている。
 イ 平成元年8月発行の「建設業、不動産売買・仲介業、不動産賃貸業、テナント これが一番新しい消費税Q&A」(財団法人大蔵財務協会発行)には、「個別対応方式で造成費の取り扱いは?」として、「不動産業ですが、土地の造成費と土地仲介手数料は、土地の購入時の使用目的によって、消費税の取り扱いが異なると聞きました。これを具体的に説明して下さい。」という問いに対する回答として、「個別対応方式による場合は、課税仕入れを、課税売上げのみに要するもの、非課税売上げにのみ要するもの、課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの、に区分して仕入控除税額を算出します。この区分は、土地の購入時の使用目的によって行います」、「また、その土地を販売の目的で取得し、一時的に自社の資材置場等として使用しているときは、最終的な使用目的が販売用ですから、非課税売上げにのみ必要な課税仕入れとなります。」と記載されている(甲43添付9。以下「土地造成費等事例」という。)。
   このような内容は、平成元年発行質疑応答集(甲43添付8)、平成2年4月発行の「消費税法取扱通達逐条解説」(同通達11-1-23の解説部分。甲43添付10)、平成10年発行一問一答(甲43添付14)のほか、平成30年3月発行の「消費税基本通達逐条解説」(同通達11-2-15の解説部分。甲21、43添付11)にも記載されている(もっとも、平成元年発行質疑応答集では、当該事案の造成工事の費用が非課税資産の譲渡等にのみ要するものになる理由として、最終的な使用目的が販売用である旨の記載まではされていない。
   また、国税庁のウェブサイト(平成30年11月9日印刷)には、「副次的に発生する非課税売上げがある場合の課税仕入れの区分」として、土地造成費等事例と同様の問いに対する回答として、「質問の造成工事の費用については、販売の目的で取得した土地についての造成費用ですから、一時的に自社の資材置場として使用しているとしても、その他の資産の譲渡等にのみ要するものとなります」と記載されているが、そこでは、最終的な使用目的が販売用である旨の記載まではされていない(甲43添付15)。
 ウ 税務当局は、平成9年頃、賃貸中マンション購入費用事例において「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分するとしたことがあった(甲43添付20)。
 エ 原告は、平成23年4月にN税務署による税務調査を受け、消費税等について、非課税売上げに対応する課税仕入れを課税売上げに対応するものとして処理していた誤りを指摘されて追納をしたが、このとき、本件課税仕入れの用途区分については指摘を受けることはなかった。その後、東京国税局は、平成28年9月に開始した税務調査において、原告に対し、本件各課税仕入れは共通課税仕入れに区分すべきである旨指摘し、修正申告を勧奨した(甲32・8、9頁)。
 オ 原告と同種事業を営む事業者(2社)は、本件課税仕入れについて、従前は「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に区分していたが、平成29年11月以降、又は平成30年11月以降に実施された税務調査を経て、共通課税仕入れに区分されるとの見解に基づく更正処分を受けた(甲20、55。なお、原告は、このほかにも、税務当局から同様の指摘を受けた事業者が複数存在すると主張し、これに関する証拠を提出するが〔甲19、52、53〕、いずれについても、その事案の経緯や詳細は必ずしも明らかでないといわざるを得ない。)。
(3)以上を踏まえて検討するに、税務当局においては、平成元年当時、土地購入仲介手数料事例と同様の事例につき、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」として取り扱うことを記載した文献が存在していたほか、土地造成費等事例について、土地を販売の目的で取得し、一時的に自社の資材置場等として使用しているときは、最終的な使用目的に従って、非課税売上げにのみ必要な課税仕入れとして取り扱うことを記載した文献も存在していたのであって、これらによると、税務当局は、個別対応方式における用途区分において、主たる目的又は最終的な使用目的を考慮して用途区分を判定していたとも理解され得るのであり、平成9年頃の賃貸中マンション購入費用事例も、このような取扱いと整合するものとみることもできる。
  しかしながら、このうち土地購入仲介手数料事例と同様の事例については、平成10年3月発行一問一答では共通課税仕入れに区分する旨に変更されている(土地購入仲介手数料事例)。また、土地造成費等事例については、平成30年3月発行の「消費税基本通達逐条解説」(同通達11-2-15の解説部分)においても、平成元年8月発行の「建設業、不動産売買・仲介業、不動産賃貸業、テナント これが一番新しい消費税Q&A」(財団法人大蔵財務協会発行)と同様の記載が認められるものの、前記1(1)ウでも述べたとおり、本件課税仕入れとは事案を異にしており、また、国税庁のウェブサイトには、当該事案の造成工事の費用がその他の資産の譲渡等にのみ要するものになる理由として、最終的な使用目的が販売用である旨の記載まではされていない。そして、本件各確定申告当時には、本件課税仕入れについて共通課税仕入れに区分されることを示唆する裁判例(東京地方裁判所平成24年9月7日判決〔乙9〕、さいたま地方裁判所平成25年6月26日判決〔甲43添付7〕、名古屋地方裁判所平成26年10月23日判決〔甲43添付25〕)や国税不服審判所の裁決(国税不服審判所平成17年11月10日裁決〔乙14の1〕、同平成22年11月8日裁決〔乙14の2〕、平成24年裁決)が存していたほか、文献又は雑誌の記事においても、本件課税仕入れについて共通課税仕入れに当たることを示すものが存していたことが認められる(乙15、20、22、23)。
  また、原告は、平成23年4月のN税務署による税務調査における経緯を指摘するが、このときに本件課税仕入れの用途区分について具体的なやり取りがされたとまでは認められない。
  これらの事情を考慮すると、本件各確定申告において、原告が、本件各課税仕入れを「課税資産の譲渡等に要するもの」に区分した上で控除対象仕入税額の計算をしたことについては、真に原告の責めに帰することのできない客観的な事情があり、過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお原告に過少申告加算税を賦課することは不当又は酷になるとまではいえない。
(4)したがって、本件各確定申告における申告額が過少であったことにつき、国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとはいえず、本件各賦課決定処分は適法である。
3 争点3(本件割合は、原告が営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであるか)について
(1)課税売上割合に準ずる割合について
 ア 個別対応方式により控除対象仕入税額を計算するに当たっては、その課税期間の課税仕入れのうち、共通課税仕入れに対応する部分については、課税売上割合を乗じて計算することになるが、事業者が課税売上割合に代わる他の合理的な割合につき所轄税務署長の承認を受けている場合には、その承認を条件として、その承認を受けた合理的な割合(課税売上割合に準ずる割合)を乗じて仕入税額控除の計算ができるとされる(消費税法30条3項)。これは事業者における事業状況が、その課税仕入れのあった課税期間の課税売上割合に必ずしも反映していない場合があることから、かかる事例に対処するため、課税売上割合よりもより合理的な割合を適用することがその事業者にとって適切であるならば、その合理的な割合を認めることを妥当とする趣旨によるものと解される。
 イ 課税売上割合に準ずる割合は、その事業者の営む事業の種類又はその事業に係る販売費、一般管理費、その他の費用の種類に応じて合理的に算定されることが必要とされるところ、事業者の事業の実態を適正に反映させるものであることが必要であり、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものの性質に応ずる合理的な基準により算出される必要があると解するのが相当である(消費税基本通達11-5-7参照)。
   また、課税売上割合に準ずる合理的な割合を適用する場合には、その事業者について同一の割合を適用する必要はなく、例えば、①その事業者の営む事業の種類の異なるごとに区分して課税売上割合に準ずる合理的な割合を適用する方法、②その事業者の事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとに区分して課税売上割合に準ずる合理的な割合を適用する方法、③その事業者の事業に係る事業場の単位ごとに区分して課税売上割合に準ずる合理的な割合を適用する方法、④その他上記①~③の方法に準ずる方法によることも可能と解される(消費税基本通達11-5-8参照)。
(2)本件割合の合理性について
 ア 課税売上割合は、当該事業者が当該課税期間中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちに当該事業者が当該課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合として政令で定めるところにより計算した割合をいう(消費税法30条6項)。
   原告における売上げ(資産の譲渡等の対価)は、主に、①土地及び建物の販売収入、②土地及び建物の事業用貸付けに係る賃貸料収入、③土地及び建物の住宅用貸付けに係る賃貸料収入であると認められるところ、課税売上割合は、概ね、当該課税期間における①~③の合計額のうち、課税資産の譲渡等の対価(建物の販売収入、建物の事業用貸付けに係る賃貸料収入)の合計額の占める割合として計算される(甲3、5、6、8の1~4、弁論の全趣旨)。
   一方、本件割合は、本件課税仕入れに係る控除対象仕入税額の計算のみを対象として、①各課税期間に譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物の販売収入、②各課税期間に譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物について仕入日から譲渡日までに生じた事業用貸付けに係る賃貸料収入、③各課税期間に譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物について仕入日から譲渡日までに生じた住宅用貸付けに係る賃貸料収入の合計額のうち、①及び②の合計額の占める割合として計算されるものである。
 イ そこで検討するに、本件課税仕入れは、住宅用賃貸部分を含む建物の購入であって、課税売上げである販売代金及び事業用貸付けに係る賃貸料、非課税売上げである住宅用貸付けに係る賃貸料に共通して要することから共通課税仕入れに区分されるところ、その共通仕入控除税額を計算するに当たって、土地の販売収入及び賃貸料収入を算定の基礎に含めることは、その事業状況を適切に反映するものとはいえず、建物の販売収入及び賃貸料収入に基づく割合によって計算することは、課税売上割合によって計算するよりも合理的といえる(なお、その上で本件課税仕入れ以外の共通課税仕入れについては課税売上割合を適用することとしても、不合理な結果は生じないといえる。)。
   もっとも、課税売上割合は、当該課税期間における売上げ等によって計算することとされていること(消費税法30条6項)に照らすと、課税売上割合に準ずる割合を建物の販売収入及び賃貸料収入によって計算するに当たっては、当該販売収入及び賃貸料収入は、当該課税期間における各収入によるのが相当といえる。
   これに対し、本件割合は、当該課税期間に譲渡した住宅用賃貸部分を含む建物に着目した上で、当該建物に係る販売収入及びその仕入日から譲渡日までに生じた賃貸料収入によって計算するものであるが、このような計算によると、当該建物が譲渡されない限り、その賃貸料収入は課税売上割合に準ずる割合に反映されないこととなるところ、このような計算方法によることの合理性は明らかにされているとはいい難い。
   原告は、本件各課税期間等において本件割合を計算した場合に、当該課税期間における建物の販売収入及び賃貸料収入によって計算した場合と、ほぼ同じ割合が算出されると主張するが、仮に、そのような事実が認められるとしても、これらが常に同様の数値を示す関係にあるとまではいえないことからすると、やはり本件割合は合理的に算定されるものとはいえないというべきである。
 ウ したがって、本件割合は、原告が営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものということはできず、本件却下処分は適法である。
第4 結論
 以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないことからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第38部
裁判長裁判官 鎌野真敬
   裁判官 網田圭亮
   裁判官 野村昌也

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