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解説記事2019年12月23日 ニュース特集 注目の改正項目は? 令和2年度税制改正大綱が決定(2019年12月23日号・№816)

ニュース特集
過去最高レベルの所得控除率も
注目の改正項目は? 令和2年度税制改正大綱が決定


 与党は12月12日、令和2年度税制改正大綱を取りまとめた(今号23頁参照)。昨年度改正の残された課題であった未婚のひとり親に対しては、死別・離別の場合と同様、寡婦(夫)控除を適用することとしたほか、5G(第5世代移動通信システム)に対する税制では、特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、30%の特別償却と15%の税額控除との選択適用を認めることで最終決着した。本特集では前号の「実務に直結する令和2年度の納税環境整備」に引き続き、令和2年度税制改正大綱の概要を紹介する。

オープンイノベーション税制は2年間の時限措置

 令和2年度税制改正の目玉の1つがオープンイノベーション税制の創設だ(図表1参照)。本税制では、事業会社が令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に、一定のベンチャー企業の株式(特定株式)を出資の払込みにより取得した場合には、その株式の取得価額の25%の所得控除を認めるというもの(特別勘定として経理した金額を限度)。払込金額は1億円以上、中小企業の場合は1,000万円以上とし、外国法人への払込みは5億円以上としている。株式は5年間保有することが要件となる。仮に当該株式を譲渡した場合や配当の支払いを受けた場合には、特別勘定のうち対応する部分を取崩し、益金に算入することになる。

税額控除15%の5G導入促進税制
 次の移動通信システムである5G(第5世代移動通信システム)設備の導入を促す観点から5G導入促進税制が創設されることになった。具体的には、特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、30%の特別償却又は15%の税額控除を認めるというもの(図表2参照)。税額控除の15%はこれまでの設備投資減税では最高レベルの控除率となっている。対象は、青色申告書を提出する法人で一定のシステム導入を行う同法の認定特定高度情報通信等システム導入事業者となる。同法の施行の日から令和4年3月31日までに取得等した特定高度情報通信認定設備となる。対象設備は、全国基地局の前倒し整備として「送受信装置」「空中線(アンテナ)」「通信モジュール」「コア設備」「光ファイバ」などが想定されている。

ムチ税制、減価償却費の3割超に

 その一方では、大企業における内部留保を活用させるという観点から、平成30年度税制改正で導入された「ムチ税制」の要件を厳格化する。
 大企業においては、①その大企業の平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を超えること、②その大企業の国内設備投資額が当期の減価償却費の1割の金額を超えることの要件のいずれにも該当しない場合(大企業の所得金額が前事業年度の所得金額以下の場合は対象外)には、研究開発税制、地域未来投資促進税制の適用をすることはできないとされているが、②の要件について、「当期の減価償却費の1割の金額を超えること」から「3割の金額を超えること」に引き上げることにした。
 これに加えて、不適用措置の対象に、前述した5G導入促進税制の税額控除(15%)が追加されることになった。
特例要件を従業員数500人以下に厳格化
 また、接待飲食費に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長することにしたものの、対象法人から資本金の額等が100億円を超える大企業を除外。中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例についても適用期限が2年延長されたが、対象法人から連結法人が除外されたほか、対象法人の要件のうち常時使用する従業員の数の要件が500人以下(現行:1,000人以下)に引き下げられた。そのほか、大企業向けの賃上げ及び投資促進税制(適用期限:令和3年3月31日)では、設備投資要件を国内設備投資額について当期の減価償却費の総額の95%以上(現行90%以上)に引き上げる。

エンジェル税制、設立5年未満の企業も対象に

 いわゆるエンジェル税制(特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例及び特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等)の見直しでは、事業化まで長期に渡って研究開発を続けるベンチャー企業に対する資金供給を強化する。
 エンジェル税制では、投資段階では①対象企業への「投資額-2,000円」をその年の総所得金額から控除(優遇措置A)、②対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除できる(優遇措置B)という2つの優遇措置が設けられている。
 このうち①の優遇措置Aについては、設立3年未満の中小企業者であることの要件が付されているが、これを資金調達ニーズが高いとされている設立後「3年以上5年未満」に要件を緩和する(図表3参照)。

 要件としては、前事業年度までの営業活動によるキャッシュフローが赤字であり、試験研究費等が収入金額の5%超であることとされている。ただし、投資家ごとの年間控除対象投資額は1,000万円から800万円に引き下げられる。令和3年1月1日以後から適用される。

NISAは「2階建て」に制度設計を変更

 NISA制度については大きく制度設計が見直されることになった(図表4参照)。まず、一般NISAについては、つみたてNISAを行っている場合には別枠の非課税投資を可能とする2階建て制度とし、口座開設可能期間を5年延長する。合計すると610万円の非課税枠となる。また、つみたてNISAについても5年間延長し、非課税期間を20年間とする。なお、ジュニアNISAは利用実績が乏しいことから新規の口座開設を2023年までとする。

 また、企業年金・個人年金制度等の見直しに伴い税制上の措置の見直しも行われる(図表5参照)。

【図表5】企業年金・個人年金制度等の見直しに伴う税制上の所要の措置

(1)DC(企業型・個人型)の加入可能要件の見直しと受給開始時期等の選択肢の拡大
① 企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入可能年齢の見直し
 【現行】厚生年金被保険者のうち65歳未満のもの ⇒【見直し案】厚生年金被保険者(70歳未満)
② 個人型確定拠出年金(個人型DC(iDeCo)の加入可能年齢の見直し
 【現行】国民年金被保険者のうち60歳未満のもの ⇒【見直し案】国民年金被保険者(※)
(※)①第1号被保険者:60歳未満、保険料納付済期間等が480月未満の者は任意加入が可能(65歳未満) 
   ②第2号被保険者:65歳未満、③第3号被保険者:60歳未満
(※)農業者年金(第1号被保険者)についても同様に加入可能年齢の見直しを行う。
③ 確定拠出年金(企業型DC・個人型DC(iDeCo))の受給開始時期の選択肢の拡大
 【現行】60歳から70歳の間で個人が選択可能 ⇒【見直し案】公的年金の見直しに併せて上限年齢を70歳以降に拡大
④ 確定給付企業年金(DB)の支給開始時期の設定可能範囲の拡大
 【現行】60歳から65歳の間で企業が設定可能 ⇒【見直し案】柔軟な制度運営を可能とするため設定可能範囲を70歳に拡大

(2)中小企業向け制度(簡易型DC・iDeCoプラス)の対象範囲の拡大
 【現行】100人以下⇒【見直し案】300人以下

(3)企業型DC加入者の個人型DC(iDeCo)加入の要件緩和
○ 企業型DC加入者がiDeCoに加入できるのは、現行は労使合意に基づく規約の定めがある企業に限られているが、これを改め、従業員本人が希望すれば、iDeCoに加入できるように改善を図る。

(4)ポータビリティの改善
○ これまで企業年金・個人年金制度間の資産の持ち運び(ポータビリティ)を順次可能としてきたが、DB終了時にiDeCoへの持ち運びが認められていないなど改善の予定があることから、ポータビリティの改善を図る。

(5)その他所要の見直し
○ iDeCoの加入申込みや変更手続をオンラインで行うことを可能にするなど、DC・DBにおける各種手続面の改善を図る。

(出典:財務省)

未婚のひとり親にも寡婦控除を適用

 昨年の税制改正大綱からの宿題となっていた未婚のひとり親への対応に関しては、寡婦(夫)控除を適用することで決着が付いた(図表6参照)。死別・離別の場合と同様、寡婦(夫)控除を適用することとした。また、子ありの寡夫の控除額は現行27万円とされているが、これを子ありの寡婦と同額の35万円に引き上げる。令和2年分以後の所得税について適用される。ただし、寡婦に寡夫と同じ所得制限(所得500万円(年収678万円))を設けるほか、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者を対象外とする。
 なお、税制措置を講じることにより、「未婚の児童扶養手当受給者に対する臨時・特別給付金」の支給は実施されないことになる。

消費税の申告期限、1月延長が可能に

 企業の事務負担の軽減や平準化を図るため、法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人については、消費税の申告期限も1月延長する特例が創設される(図表7参照)。

 現行、例えば、申告期限の特例を受けている3月決算法人では、5月末の消費税の申告期限に間に合わせるため、本来は6月末までに行えばよい法人税の申告調整業務を前倒して行わなければならないという弊害が生じていたものだ(本誌800号参照)。

【参考】令和2年度 与党税制改正大綱の概要

1.デフレ脱却と経済再生
○オープンイノベーションに係る措置 ・企業の事業革新につながるオープンイノベーションを促進するため、事業会社から一定のベンチャー企業に対する出資について、その25%相当額の所得控除ができる措置を創設する。その際、一定期間(5年)内に、出資した株式を売却等した場合には、対応する部分の金額を益金に算入する仕組みとする。
○投資や賃上げを促す措置 ・収益が拡大しているにもかかわらず賃上げにも投資にも消極的な大企業に対する研究開発税制などの租税特別措置の適用を停止する措置の設備投資要件について、国内設備投資額が当期の減価償却費総額の3割超(現行:1割超)とする。
・大企業に対する賃上げ及び投資の促進に係る税制の設備投資要件について、国内設備投資額が当期の減価償却費総額の95%以上(現行:90%以上)とする。
○エンジェル税制の見直し ・エンジェル税制について以下の見直し等を行い、ベンチャー企業に対する資金の流れを強化。
 -法定の項目に拠らず「成長性」を確認し、都道府県に代わってエンジェル税制対象企業の証明を行える者に、認定クラウドファンディング業者を追加。
 -投資額を総所得金額から控除する優遇措置の対象に、設立後3年以上5年未満で一定の試験研究を行っているベンチャー企業を追加。
○国立大学法人等に対する個人寄附の促進 ・日本のイノベーション・エコシステムの中核となる国立大学法人等の研究力強化に向け、若手研究者の育成を促進するとともに、国立大学法人等の更なる外部資金調達努力を後押しするため、国立大学法人等への個人寄附の税額控除の対象事業に、イノベーティブな研究に挑戦する若手研究者(ポスドク・大学院生等)に研究費を助成する事業等を追加。
○5G導入促進税制 ・安全性・信頼性が確保された5G(第5世代移動通信システム)設備の導入を促す観点から、①超高速・大容量通信を実現する全国5G基地局の前倒し整備、及び②ローカル5Gの整備に係る一定の投資について、税額控除(15%)又は特別償却(30%)ができる措置を創設する。
○連結納税制度の見直し ・連結納税制度について、制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、企業の事務負担の軽減等の観点から簡素化等の見直しを行う。具体的には、企業グループ全体を1つの納税単位とする現行制度に代えて、企業グループ内の各法人を納税単位としつつ、損益通算等の調整を行う仕組みとする。(グループ通算制度への移行)
2.経済のグローバル化・デジタル化への対応
○経済のデジタル化への対応 ・国際的な議論におけるわが国の基本的考え方として以下を明記。
 ① 安定的かつ予見可能な投資環境の構築
 ② 企業間の公平な競争環境の整備
 ③ 新ルールの適用対象の明確化等
 ④ 過大な事務負担及び二重課税の防止
 ⑤ 法人の引下げ競争への対抗
 以上に示した考え方を踏まえ、国際的な合意に向け一層主導的な役割を果たして行く。
○国際的な租税回避・脱税への対応 ・子会社配当の非課税措置と子会社株式の譲渡を組み合わせた税務上の譲渡損失を創出する租税回避に対し、配当益金不算入制度の適用を受けて非課税とされる金額を子会社株式の帳簿価額から引き下げる等の見直しを行う。
3.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
○私的年金等に関する公平な税制のあり方 ・人生100年時代を迎える中で、高齢期の長期化や就労の拡大・多様化等を踏まえ、私的年金について以下の見直しを行う予定。これに伴い、現行の税制上の措置を適用。
 -DC(企業型・個人型)等の加入可能要件の見直しと受給開始時期等の選択肢の拡大
 -中小企業向け制度(簡易型DC・iDeCoプラス)の対象範囲の拡大
 -企業型DC加入者のiDeCo加入の要件緩和
 -ポータビリティの改善             等
○NISA制度の見直し・延長 ・経済成長に必要な成長資金の供給を促すとともに、人生100年時代にふさわしい家計の安定的な資産形成を支援していく観点から、NISA制度について、少額からの積立・分散投資をさらに促進する方向で制度の見直しを行いつつ、口座開設可能期間を延長。
 -つみたてNISAは5年延長。(2023年まで20年の積立期間を確保)
 -一般NISAについては、より多くの国民に安定的な資産形成を促す観点から、一階で積立投資を行っている場合には二階で別枠の非課税投資を可能とする二階建ての制度に見直した上で、5年延長。
 -ジュニアNISAについては、利用実績が乏しいことから、延長せずに2023年末で終了。
○未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(夫)控除の見直し ・全てのひとり親家庭の子どもに対して公平な税制を実現するため、「婚姻歴の有無による不公平」と「男性ひとり親と女性のひとり親との間の不公平」を全て解消する。そのため、
 -未婚のひとり親に寡婦(夫)控除を適用する。
 -寡婦控除について、
・寡婦に寡夫と同等の所得制限(所得500万円(年収678万円))を設ける。
・住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある者を対象外とする。
・子ありの寡夫の控除額を子ありの寡婦と同額にする。(27万円⇒35万円)
4.円滑・適正な納税のための環境整備
○デジタル技術を活用した利便性の向上等 ・請求書等の電子化を推進し、企業等の生産性向上を後押しする観点から、電子帳簿保存法を見直し。電子的に受け取った請求書等をデータのまま保存する場合の要件について、ユーザーが自由にデータを改変できないシステム等を利用している場合には、タイムスタンプの付与を不要とするなど、選択肢を拡大する。
○消費税の申告期限の延長 ・企業の事務負担の軽減や平準化を図る観点から、法人税の申告期限の延長の特例の適用を受ける法人について、消費税の申告期限を1月延長する特例を創設する。
○利子税・還付加算金等の割合の引下げ ・市中金利の実勢を踏まえ、利子税・還付加算金等の割合を引下げ。(貸出約定平均金利+1%→貸出約定平均金利+0.5%)
○国外財産調書制度等の見直し ・国外において行われた取引等に関し、納税者による適切な情報開示を促す観点から、①国外財産調書制度及び②更正・決定除斥期間について、以下のとおり見直し。
 ① 税務調査において納税者が必要な資料を提示・提出しない場合は加算税を加重。
 ② 納税者が必要な資料を提示・提出せず、税務当局が外国税務当局に対して情報交換要請を行った場合、除斥期間にかかわらず、当該要請から3年間は更正・決定可。
○国外居住親族に係る扶養控除等の見直し ・国外居住親族について、所得要件(38万円未満)が国内源泉所得のみで判定されるために、国外で一定以上の所得を稼得している親族でも扶養控除の対象にされているとの指摘を踏まえ、令和5年分以後の所得税につき、留学生や障害者等を除く30歳以上70歳未満の国外居住親族について扶養控除の対象にしないこととする。
5.その他
○たばこ税の見直し ・紙巻たばこに類似したリトルシガーのような軽量な葉巻たばこについて、課税の公平性等を図る観点から、紙巻たばこと同等の税負担となるよう、最低税率を設定する。
・なお、激変緩和を図る観点から、たばこ税率の引上げスケジュールにあわせて、一定の経過措置を講じ、最低税率を2段階(2020年10月・2021年10月)で引き上げる。
○地方創生の充実・強化 ・地方拠点強化税制における雇用促進に係る措置について、移転型事業の上乗せ措置における雇用者1人当たりの税額控除額を3年間で最大120万円(現行:90万円)に拡充し、移転型事業による雇用の増加に対するインセンティブを強化する等の見直しをする。
○低未利用地の活用促進 ・取引の活性化を通じて低未利用地の活用を促進するため、保有期間5年超、上物を含めて譲渡価格500万円以下等の要件を満たす低未利用地の譲渡所得に100万円の特別控除を創設。
○日本酒の輸出拡大に向けた取組み ・日本酒の輸出拡大に向けた取組み等を後押しする観点から、日本酒輸出要の製造免許(最低製造数量要件の適用除外)を新たに設ける。

(出典:財務省)

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