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解説記事2023年01月09日 新会計基準解説 改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の概要(2023年1月9日号・№961)

新会計基準解説
改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等の概要
 企業会計基準委員会 専門研究員 花澤徳裕

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2022年10月28日に、次の3つの企業会計基準及び企業会計基準適用指針(以下、これらを合わせて「本会計基準等」という。)の改正基準を公表(脚注1)した。
・企業会計基準第27号
「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)
・企業会計基準第25号
 「包括利益の表示に関する会計基準」(以下「包括利益会計基準」という。)
・企業会計基準適用指針第28号
 「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)
 本稿では、本会計基準等の改正の概要を紹介する。なお、本会計基準等は日本公認会計士協会の実務指針等にも影響するため、ASBJで検討の上、同協会に改正を依頼しており、当該依頼を踏まえ、2022年10月28日に同協会より実務指針等の改正(脚注2)について公表されているため、併せてご確認いただきたい。
 また、文中の意見に関する部分は筆者の私見であり、ASBJの見解を示すものではないことをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 本会計基準等の改正の経緯

 ASBJでは、2018年2月に企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等(以下「企業会計基準第28号等」という。)を公表し、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のASBJへの移管を完了したが、その審議の過程で、次の2つの論点について、企業会計基準第28号等の公表後に改めて検討を行うこととしていた。
1.税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税)
2.グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果
 移管の完了後、まずは、その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分について審議を開始したが、2020年度の税制改正においてグループ通算制度が創設されたことに伴い、グループ通算制度を適用する場合の取扱いについての検討を優先し、審議を中断していた。その後、2021年8月に実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」を公表した後に、その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分について検討を再開するとともに、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いについても検討を開始した。本会計基準等は、当該検討を行った結果、改正に至ったものである。

Ⅲ その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分に関する改正の概要

1 対象となる取引と論点
 その他の包括利益に計上された取引又は事象(以下「取引等」という。)が課税所得計算上の益金又は損金に算入され、法人税、住民税及び事業税等が課される場合がある。このような場合として、例えば、次のような場合が想定される。
(1)グループ通算制度(従来の連結納税制度を含む。)の開始時又は加入時に、会計上、評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額が計上されている資産又は負債に対して、税務上、時価評価が行われ、課税所得計算に含まれる場合
(2)非適格組織再編成において、会計上、評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額が計上されている資産又は負債に対して、税務上、時価評価が行われ、課税所得計算に含まれる場合
(3)投資をしている在外子会社の持分に対してヘッジ会計を適用している場合などにおいて、税務上は当該ヘッジ会計が認められず、課税される場合
(4)退職給付について確定給付制度を採用しており、連結財務諸表上、未認識数理計算上の差異等をその他の包括利益累計額として計上している場合において、確定給付企業年金に係る規約に基づいて支出した掛金等の額が、税務上、支出の時点で損金の額に算入される場合
 上記のような場合に生じる法人税、住民税及び事業税等について、2017年に公表した法人税等会計基準では、当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等は、法令に従い算定した額を損益に計上することとしているため、取引等についてはその他の包括利益に計上される一方で、これに対して課される法人税、住民税及び事業税等は損益に計上されることとなり、税引前当期純利益と税金費用の対応関係が図られていないのではないかとの意見が聞かれた。
 そこで、改正法人税等会計基準においては、このようなその他の包括利益に対して課される法人税、住民税及び事業税等のほか、株主資本に対して課される法人税、住民税及び事業税等も含めて、所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分についての見直しを行った(改正法人税等会計基準第25−2項)。
 なお、株主資本に対して課税される場合については、従来から税効果適用指針等において取扱いが示されており、4.(4)に記載の場合を除き、本会計基準等の改正による会計処理による影響はない。

2 その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分についての原則
 所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分に関して、次の2つの考え方がある。
(1)当該法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等の処理と整合させ、所得を課税標準とする税金については、損益、株主資本及びその他の包括利益の各区分に計上する考え方
(2)法人税、住民税及び事業税等の支払は、税金の発生源泉となる取引等の処理にかかわらず、課税当局(国又は地方公共団体)への納付であるため、当該法人税、住民税及び事業税等は損益に計上する考え方
 このような考え方について、(1)を採用した場合、税引前当期純利益と所得に対する法人税、住民税及び事業税等の間の税負担の対応関係が図られ、税引前当期純利益と税金費用から算定される税負担率を基礎として将来の当期純利益を予測することが可能となるため、将来の業績予測に資する情報が提供され得ると考えられる。
 また、税効果会計における税効果額についても(1)の考え方と同様に取り扱っており、国際的な会計基準においても、この考え方と同様に処理することとされている。
 そのため、改正法人税等会計基準では、次の原則(以下「法人税等の計上区分についての原則」という。)を定めることとした(改正法人税等会計基準第5項、第5−2項、第8−2項、第29−2項及び第29−3項)。

 当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等に応じて、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上する。

3 複数の区分に関連することにより、株主資本又はその他の包括利益に計上する金額を算定することが困難な場合の取扱い
 審議の過程において、1.対象となる取引と論点の(4)に記載した退職給付に関する掛金等の額に対する課税に関して、会計上、掛金等の額は退職給付に係る負債の減額として扱われ、当該退職給付に係る負債は連結財務諸表上、その他の包括利益として計上した未認識数理計算上の差異等を含むことから、その他の包括利益に対して課税されていることになるか否かについて検討を行った。
 この点、掛金等の額は確定給付企業年金制度等に基づいて計算されているが、当該計算上、掛金等の額には予想と実績の差異に対する部分が含まれる。そのため、掛金等の額には会計上の数理計算上の差異等に類似する部分が含まれるが、当該計算と会計上の退職給付計算は、その方法や基礎が異なることから、掛金等の額を数理計算上の差異等と紐づけることは困難であり、掛金等の額に数理計算上の差異等に対応する部分が含まれるか否かは一概には決定できず、そのような金額の算定は困難であると考えられる。また、仮に、何らかの仮定に基づいて金額の算定を行うこととした場合、そのような仮定に基づいて会計処理された情報の有用性は限定的であると考えられる。
 そこで、退職給付に関しては例外を定めることとして検討を行った。この点、現時点においてはその他の領域で同様の論点が生じる状況は限定的であると考えられるものの、今後、税法等の改正によってそのような状況が生じる可能性があることから、次のような例外的な取扱いを定めることとした(改正法人税等会計基準第5−3項(2)、第29−6項及び第29−7項)。

 課税の対象となった取引等が、損益に加えて、株主資本又はその他の包括利益に関連しており、かつ、株主資本又はその他の包括利益に対して課された法人税、住民税及び事業税等の金額を算定することが困難である場合には、当該税額を損益に計上することができる。

 なお、当該定めに該当する取引として、本会計基準等においては、退職給付に関する取引を想定していることを記載することで、現時点における当該例外的な定めの対象を明確化することとしている。

4 その他の会計処理
(1)重要性が乏しい場合の取扱い

 審議の過程において、法人税等の計上区分についての原則を一律に求める場合、コストが便益に見合わないこともあるとの意見が聞かれたことを踏まえ、損益に計上されない当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性が乏しい場合には、当該法人税、住民税及び事業税等を当期の損益に計上することができることとした(改正法人税等会計基準第5−3項(1)及び第29−5項)。
(2)株主資本及びその他の包括利益に計上する金額の算定に関する取扱い
 法人税等の計上区分についての原則において各区分に計上する金額をどのように算定するかが論点となる。この点、株主資本に対して課税される場合については、従前から税効果適用指針等において、法人税、住民税及び事業税等を株主資本に計上することを定めているが、このうち、子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合の、親会社の持分変動による差額として計上される資本剰余金から控除する法人税等相当額については、具体的な測定方法を定めている。
 当該測定方法の定めは、税務上の繰越欠損金がある場合など複雑な計算を伴う場合があることから、実務に配慮しつつ、個々の状況に応じて適切な判断がなされることを意図したものであると考えられるが、このような実務上の配慮は、税効果適用指針で定める取引以外についても同様に必要になると考えられることなどから、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、株主資本又はその他の包括利益に区分して計上する場合についても、同様に取り扱い、次のように定めることとした(改正法人税等会計基準第5−4項及び第29−8項)。

 株主資本又はその他の包括利益の区分に計上する法人税、住民税及び事業税等は、課税の対象となった取引等について、株主資本又はその他の包括利益に計上した金額に、課税の対象となる企業の対象期間における法定実効税率を乗じて算定する。
 ただし、課税所得が生じていないことなどから法令に従い算定した額がゼロとなる場合に株主資本又はその他の包括利益の区分に計上する法人税、住民税及び事業税等についてもゼロとするなど、他の合理的な計算方法により算定することができる。

(3)その他の包括利益の組替調整(リサイクリング)に関する取扱い
 法人税等の計上区分についての原則に従って、法人税、住民税及び事業税等をその他の包括利益累計額(又は評価・換算差額等)に計上する場合、その他の包括利益累計額に計上された法人税、住民税及び事業税等を組替調整(リサイクリング)するか否かが論点となる。
 この点、これまで我が国においては、当期純利益の総合的な業績指標としての有用性の観点から、その他の包括利益に計上された項目については、当期純利益にリサイクリングすることを会計基準に係る基本的な考え方としていることを踏まえ、当該法人税、住民税及び事業税等が課される原因となる取引等が損益に計上された時点で、対応する税額についてもリサイクリングを行い、損益に計上することとした(改正法人税等会計基準第5−5項及び第29−9項)。
 なお、当該リサイクリングに関連し、その他の包括利益累計額に計上された法人税、住民税及び事業税等について、リサイクリングが行われるまでに税法の改正に伴い、法人税、住民税及び事業税等の税率が変更される場合において、税率の変更に係る差額をリサイクリングすべきか否かについて、税効果会計における税率の変更に関する取扱いとの整合性の観点から論点となったが、次の理由で、税率変更に係る差額はリサイクリングしないこととした(改正法人税等会計基準第29−10項)。
・税率が変更された場合、税効果会計においては繰延税金資産及び繰延税金負債の再計算に伴い資産及び負債が変動するのに対して、その他の包括利益累計額に計上された過年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等については、関連する資産又は負債である未収還付法人税等又は未払法人税等は通常は税率変更の時点では確定した税額として還付又は納付済みであると考えられ、資産及び負債の変動はないことから、税法の改正時に税率の変更に係る差額をリサイクリングする必然性はない。
・税率の変更に係る差額をリサイクリングする処理は、過年度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等を損益に計上した時点における税引前当期純利益と税金費用の比率を法定実効税率に近似させることを重視する観点からは考え得るが、税引前当期純利益と税金費用の比率は必ずしも法定実効税率とは一致せず、両者の差異の主要な要因を注記により開示することになり、当該処理を採用しない場合であっても、注記により情報提供が可能である。
・税率の変更に係る差額をリサイクリングする処理は、実務上煩雑であるとの意見が聞かれている。
(4)関連する繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合の取扱い
 2018年に公表した税効果適用指針(以下「2018年税効果適用指針」という。)では、親会社の持分変動による差額に係る連結財務諸表固有の一時差異について繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合、資本剰余金を相手勘定としている一方で、子会社に対する投資の売却時に当該親会社の持分変動による差額に係る一時差異が解消することにより繰延税金資産又は繰延税金負債を取り崩すときは、対応する額を法人税等調整額に計上することとしていた。
 当該会計処理は、法人税、住民税及び事業税等を原則として損益に計上することとしていたことを前提として定められたものと考えられるが、法人税等の計上区分についての原則に従えば、株主資本に対して課税される場合には、法人税、住民税及び事業税等を株主資本の区分に計上することになることから、このような会計処理を求める必要性は乏しくなったものと考えられる。
 そのため、このような繰延税金資産又は繰延税金負債の取崩しは、資本剰余金を相手勘定として取り崩すこととしている(改正税効果適用指針第9項(3)、第30項、第31項及び第123項から第124項)。
 また、併せて、繰延税金資産又は繰延税金負債の取扱いに関して、税効果適用指針第9項の定め及び法人税等の計上区分についての原則との整合を図る観点から、発生源泉となる取引等に応じて各区分に計上する取扱いを追加している(改正税効果適用指針第51項及び第154項、並びに企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」第10項)。

5 その他の包括利益の開示に関する取扱い
 法人税等の計上区分についての原則に従って、法人税、住民税及び事業税等をその他の包括利益に計上する場合に、包括利益計算書においてどのように表示するかが論点となる。
 この点、その他の包括利益に計上する「税効果の金額」については、その他の包括利益の内訳項目から控除するとともに、内訳項目別に「税効果の金額」を注記することとしているが、その他の包括利益に計上する法人税、住民税及び事業税等についても、その他の包括利益に関する税金に係る項目である点は税効果と同様である。そのため、その他の包括利益の内訳項目から控除する「税効果の金額」及び注記する「税効果の金額」について、「その他の包括利益に関する、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金及び税効果の金額」に改正することとした(改正包括利益会計基準第8項及び第30−2項)。
 また、貸借対照表の純資産の部におけるその他の包括利益累計額及び評価・換算差額等の内訳項目から控除する税効果の金額についても、「当期までの期間に課税された、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金」も併せて開示することとし、関連する他の会計基準等についても修正を行っている(改正包括利益会計基準における2022年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正参照)。
 さらに、日本公認会計士協会の実務指針等についても、関連する箇所の修正を依頼し、改正がなされている。

Ⅳ グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果に関する改正の概要

1 税務上の取扱い
 税務上、内国法人が有する譲渡調整資産(脚注3)を他の完全支配関係(脚注4)がある内国法人に譲渡した場合には、グループ法人税制が適用され、課税所得計算上、譲渡時点において売却損益を計上せず、繰り延べられることとされている(法人税法第61条の11)。
 当該繰り延べられた売却損益については、譲受法人において、当該資産の譲渡等の事由が生じたとき(脚注5)に、譲渡法人の課税所得計算上、売却損益を益金の額又は損金の額に算入することとされている(法人税法第61条の11)。
 なお、このようなグループ法人税制の取扱いは、要件を満たすすべての法人に適用されることから、グループ通算制度のように、適用が法人の任意の選択にゆだねられるものではない。

2 対象となる取引と論点
 本会計基準等は、このようなグループ法人税制が適用される場合のうち、次の図1のような子会社株式等の売却を行った場合を取り扱っている。

 このようなグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却について、これに係る改正前の税効果の取扱いについては、次のように定めていた。
(1)売却元企業の個別財務諸表において、税務上繰り延べられた売却益(又は売却損)について将来加算一時差異(又は将来減算一時差異)が生じ、繰延税金負債(又は繰延税金資産)が計上される(脚注6)。
(2)(1)で計上した繰延税金負債(又は繰延税金資産)は、連結決算手続上、修正しない。
 この点、税引前当期純利益と税金費用を合理的に対応させることが税効果会計の目的とされている中で、2018年税効果適用指針での取扱いは、連結決算手続上、消去される取引に対して税金費用を計上するものであり、税引前当期純利益と税金費用が必ずしも適切に対応していないとの意見が聞かれた。こうした意見を踏まえ、検討を行った結果、取扱いの見直しをすることとした。

3 会計処理の見直し
(1)連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の連結財務諸表における取扱い

 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却については、当該売却に係る連結財務諸表上の税引前当期純利益と税金費用との対応関係の改善を図る観点から、連結財務諸表において次の処理を行うこととしている(改正税効果適用指針第39項、第143項及び第143−2項)。

・子会社株式等を売却した企業の個別財務諸表において、売却損益に係る一時差異に対して繰延税金資産又は繰延税金負債が計上されているときは、連結決算手続上、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を取り崩す。
・購入側の企業による当該子会社株式等の再売却等、法人税法第61条の11に規定されている、課税所得計算上、繰り延べられた損益を計上することとなる事由についての意思決定がなされた時点において、当該取崩額を戻し入れる。

(2)子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の取扱い
 子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異について、2018年税効果適用指針では、他の子会社への売却を含む子会社に対する投資の売却等の意思もしくは意思決定の有無に応じて、繰延税金資産又は繰延税金負債を計上するか否かを定めていた。
 この点、上記(1)の見直しに伴い、予測可能な将来の期間にグループ法人税制が適用され、売却損益を繰り延べる場合に該当する子会社株式の売却を行う意思決定又は実施計画が存在しても、当該一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上しないこととしている(改正税効果適用指針第22項、第23項、第105−2項及び第106−2項)。
 また、これと併せて、関連会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異の取扱いに関する日本公認会計士協会の実務指針等についても、関連する箇所の改正が行われている。
(3)連結会社間における子会社株式等の売却に伴い生じた売却損益を税務上繰り延べる場合の個別財務諸表における取扱い
 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却についての個別財務諸表の取扱いについては、次の理由から見直さない(すなわち、繰り延べる売却損益に係る一時差異について、税効果適用指針第8項及び第9項に従って繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する)こととしている(改正税効果適用指針第143−2項)。
・当該子会社株式等の売却により将来加算一時差異が生じているにもかかわらず繰延税金負債を計上しない取扱いは、一部の場合を除き、一律に繰延税金負債を計上する税効果適用指針の取扱いに対する例外的な取扱いとなるため、その適用範囲は限定することが考えられる。
・個別財務諸表においては、連結財務諸表とは異なり、売却損益が消去されないことから、税金費用を計上しないこととした場合には税引前当期純利益と税金費用との対応関係が図られないこととなると考えられる。

Ⅴ 本会計基準等の適用時期等の概要

1 適用時期
 本会計基準等により、法人税等の計上区分については、その他の包括利益に対して課税される場合の会計処理などが変更になることから、一定の周知期間又は準備期間が必要となる一方で、早期適用への一定のニーズがあると考えられるため、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いも合わせて、次の適用時期とすることとしている(改正法人税等会計基準第20−2項及び第42項、改正包括利益会計基準第16−5項並びに改正税効果適用指針第65−2項及び第162項)。

原則適用:2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から
早期適用:2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から

2 適用初年度の経過措置
 本会計基準等で扱っている2つの論点については、いずれも、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当し、原則として、過去の期間のすべてに遡及適用することとなるが、対象となる取引等が異なり、遡及適用に関連する状況が異なると考えられることから、それぞれの定めについて経過的な取扱いを定めるか否かの検討を行った。
(1)法人税等の計上区分(その他の包括利益に対する課税)
 法人税等の計上区分についての原則を過去の期間に遡及適用することを求めた場合、新たな会計方針に従って過去の期間の会計処理を行った上で、開示についての組替などを行うことが必要となり、財務諸表作成者の過度な負担が生じる可能性がある。
 一方、過年度に生じた取引等についての累積的影響額を当期の財務諸表に反映しない場合、将来のリサイクリングを行う期間において、リサイクリング部分についての法人税等が損益に計上されないことから、当該期間における税引前当期純利益と税金費用の対応関係が図られないこととなる。
 そのため、過年度に生じた取引等についての累積的影響額を当期の財務諸表に反映させることが考えられるが、これは、新たな会計方針を過去の期間に遡及適用しない場合でも、当該累積的影響額を当期の財務諸表の期首時点の純資産の部に反映することによって達成されると考えられる。
 また、このような累積的影響額については、原則として、過年度において課税されたその他の包括利益の金額に、当該年度の法定実効税率を乗じて算定することになるが、このような情報は、過去の実績値であり、また、重要性が乏しい場合には、損益に計上することができることとしていることから、情報の入手は可能な場合が多いと考えられる。
 以上に加え、新たな会計方針を過去の期間に遡及適用することによる便益が限定的と考えられることも考慮し、次のような経過的な取扱いを定めることとしている(改正法人税等会計基準第20−3項及び第43項、改正包括利益会計基準第16−5項並びに改正税効果適用指針第65−2項及び第163項)。

 会計方針の変更による累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減するとともに、対応する金額を資本剰余金、評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額のうち、適切な区分に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができる。

(2)グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果
 グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却を行った売却元企業においては、税務申告書に譲渡損益調整勘定等として記載されているため、過去の期間における対象取引の把握は可能と考えられる。また、会計処理については、購入側の企業における再売却等についての意思の有無により判断することになるが、この点についても、過去の連結財務諸表における子会社等に対する投資に係る一時差異への税効果会計の適用において、一定の判断がなされていたと考えられる。したがって、遡及適用が困難となる可能性は低いと考えられるため、特段の経過的な取扱いを定めないこととしている(改正税効果適用指針第65−2項及び第163項)。

Ⅵ おわりに

 本会計基準等の改正は、2022年3月30日に公表した企業会計基準公開草案第71号(企業会計基準第27号の改正案)「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」等に対して寄せられたご意見を踏まえて、ASBJにおいて検討を行い、公表するに至ったものである。本稿が、本会計基準等の改正の概要やその趣旨をご理解いただくための一助となれば幸いである。

脚注
1 本会計基準等の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards/y2022/2022-1028.html)を参照のこと。
2 当該実務指針等については、日本公認会計士協会のウェブサイト(https://jicpa.or.jp/specialized_field/20221028ruy.html)を参照のこと。
3 固定資産、土地、有価証券等が含まれ、譲渡の直前の帳簿価額が1千万円に満たない資産及び売買目的有価証券は除かれる。
4 100%持株関係のことをいい、親会社と子会社の関係及び100%保有の子会社同士の関係が該当する。
5 完全支配関係がある他の法人に対する譲渡も含まれる。
6 当該繰延税金資産又は繰延税金負債の計上にあたっては、税効果適用指針第8項及び第9項に従うこととしている(税効果適用指針第17項)。

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