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解説記事2023年02月06日 SCOPE 信託型SOスキーム権利行使時課税 従来の理解を覆すことに(2023年2月6日号・№965)

課税当局、4月以降に正式見解の公表を検討
信託型SOスキーム権利行使時課税 従来の理解を覆すことに


 法人が従業員等にストックオプション(以下「SO」)を付与する方法の一つに、信託型SOスキームがある。このスキームに基づき信託の受益者である被付与者に付与されたSOについては、権利行使時には課税が行われず、SOから転換した株式を売却した時点で値上がり益の全額が譲渡所得として分離課税の対象になるというのが、実務家や同スキームの販売者の間での一般的な理解となっている。しかし、本誌の取材により、課税当局は、信託型SOスキームにより付与されたSOについても権利行使の時点で課税対象とされるとの見解を有していることが判明した。当局は4月以降にこの見解を公表することを検討しているという。これまでの一般的な理解を覆す見解だけに、詳細情報の公表が待たれる。

スキーム販売者は「権利行使時に課税はない」との前提で信託を組成


 一般的に信託型SOスキームでは、 (1)受益者を定めず「受益者の存しない信託」として、税務上は法人税法2条29号の2ロに該当する法人課税信託となる信託を組成し、(2)その信託に委託者が現金を拠出、(3)信託財産である現金で信託にてSOを発行会社から時価で購入、(4)後日SOの被付与者を受益者に指定し、信託からその受益者へSOが移転、(5)SOを付与された個人が行使価額を払い込み権利行使、(6)SOから転換した株を市場等で売却・換金、という流れが想定されている(参照)。

 上記について、現状、実務家の間で一般的に理解されている各時点の課税関係は以下の通りとなっている。まず(2)の時点で委託者より法人課税信託に拠出された現金は受託法人に対する贈与による資産の移転とみなされ(所法6条の3七)、法人課税信託として法人税の課税対象とされるが、(3)においてはSOを時価で取得するため、税務上、有価証券を信託財産である現金で取得したものとして扱われる。その後、(4)の時点で受益者が指定されることに伴い法人課税信託から受益者等課税信託へと税務上の属性が変更されるが、受益者に指定された被付与者である従業員等には、SOは簿価、かつ、無税で引き継がれることになる(所法67条の3①②)。そして、被付与者がSOの権利行使を行う(5)の時点においては、時価で取得したSOについて、適正な権利行使価額の払込みを行ったうえで権利行使をしていることから、権利行使時課税はなくSOの取得価額と権利行使価額の合計額を株式の取得価額としたうえで(所令109条①一)、(6)の売却時点で譲渡益が分離課税の対象になると考えられている。このように信託型SOスキームには、値上り益の全額が譲渡益として分離課税の対象とされる一方で、税制適格SOのような金額制限等もないという税制上のメリットがあると考えられていた。さらに、権利行使価額も、信託においてSOを時価で購入した時点で設定された価額でよいと理解されている。実際、これら一連のメリットを前面に押し出し、権利行使時課税はないとの想定の下で、これまで信託型SOスキームの販売が行われてきた。
 しかし、本誌の取材により、課税当局は、信託型SOスキームについても、所得税法施行令84条3項2号に該当するため権利行使時(上記(5)の時点)に課税が発生するとの見解を有していることが判明した。所得税法施行令84条3項には、SOのうち「権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されているもの」が該当することになるが、課税当局は信託型SOスキームにより取得するSOも「その他特別の条件が付されているもの」に該当し、同条の射程範囲であると考えているようだ。課税当局はこの見解について、4月以降、SOに関する税制改正に伴う通達の改正を行うタイミングで公表することを検討しているという。
 信託型SOスキームについて権利行使時課税が行われるとなれば、税務的には、法人課税信託の組成・維持費用等、いわば余計なランニングコストが発生する税制非適格SO、という位置付けになってしまうことになり、実務へ大きな影響を与えることになるだろう。所得税法施行令84条3項に定める「その他特別の条件」という、解釈次第でその射程範囲も大きく異なるともいえる部分に該当するかどうかで、課税上の取り扱いが大きく分かれることになるが、課税当局が信託型SOスキームのどのような点について「その他特別の条件が付されている」と考えているのか、また、すべての信託型SOスキームが権利行使時課税の射程に含まれるのか、さらには既に組成済の信託型SOスキームも対象になるのか等、詳細は4月以降公表予定の情報を待つ必要がある。しかし、現時点で信託型SOスキームの導入を検討している場合は、少なくとも公表される情報を確認してから導入の是非を判断した方がよさそうだ。

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