税務ニュース2023年05月26日 非居住者による民泊事業の課税リスク(2023年5月29日号・№980) 課税当局は源泉徴収・確定申告の必要性を示唆

  • 非居住者である個人が日本に保有する不動産を民泊事業に使用し収入を得た場合の、支払側における源泉徴収及び受取側である非居住者の確定申告の要否について、課税当局はいずれも「不要」とは考えていないことを示唆。

 個人が民泊事業を行うことで得る所得は、国税庁公表の「住宅宿泊事業法に規定する住宅宿泊事業により生じる所得の課税関係等について(情報)」において、「一般的な不動産の貸付け(賃貸)とは異なる」という理由で、原則として雑所得に該当すると解説されている。この点から、非居住者に対して支払われる民泊事業による対価は、源泉徴収の対象となる所得税法161条1項7号の不動産賃料(7号所得)に該当せず、源泉徴収が不要なのではないかと考える実務家もいる。しかし、課税当局は「具体的に、その民泊事業がどういう事業なのか、主に不動産を貸し付けているのか、サービスの提供なのか等を確認しなければ、どちらとも言えない」との考えを示していることが本誌の取材により確認された。つまり、直ちに7号所得に該当しないと考えるべきではないということだ。
 また、民泊事業を行う非居住者側の問題として、確定申告は必要なのかとの疑問も聞かれる。実務家の間では、上記同様7号所得には該当しないのではないかとの見解や、7号所得に該当しない場合も、民泊施設自体を恒久的施設(PE)と捉え、所得税法161条1項1号のPE帰属所得と考えるのではないかとの見解がある。この点についても本誌が課税当局に取材したところ、まず、民泊事業による所得が7号所得に該当するか否かについては、源泉徴収同様に「実態判断」によるとのことであった。また、民泊施設がPEになり得るかについては「外形的に言えるものではなく、実態に応じて個別判断することになる」と前置きしつつも、所得税基本通達161−1の存在に触れ、「恒久的施設に含まれ得る」との見解が示された。さらに、161条1項17号の「前各号に掲げるもののほかその源泉が国内にある所得」に該当する可能性も考えられるとのことであり、これらを勘案すると、課税当局は少なくとも確定申告が不要とは考えていないことが窺える。
 一連の課税当局のコメントを踏まえると、支払側の源泉徴収、受取側の確定申告のいずれについても「不要」と判断するのは後々課税リスクを招く可能性が高いと言わざるを得ない。今後同様の事例の増加が見込まれる中、実務家からは課税当局が明確な指針を示すことを望む声が挙がっている。

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