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解説記事2023年05月29日 税務マエストロ インボイスQ&A~令和5年4月改訂を検証する!(3)(2023年5月29日号・№980)

税務マエストロ
インボイスQ&A~令和5年4月改訂を検証する!(3)
#288
 税理士 熊王征秀

追加されたQ&Aの解説とコメント(2)

○登録番号の効率的な確認方法

問22 当社は取引先が多いため、登録番号の有効性の確認を効率的に実施したいと考えています。どのような方法がありますか。【令和5年4月追加】

【答】の要約
 登録番号の有効性を効率的に確認する方法として、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」のWeb-API機能又は公表情報ダウンロード機能を利用する方法のほか、これらの機能に対応している会計ソフト等を導入するなどの方法を紹介している。

○令和5年10月1日前後の取引に係る適用関係

問38 適格請求書等保存方式の下では、仕入税額控除の適用を受けるためには、課税仕入れ等に係る帳簿及び適格請求書等の保存が原則として必要になるとのことですが、令和5年10月1日前後の取引において、売手における売上げの計上時期と買手における仕入れの計上時期が異なる場合、適格請求書等の保存の要否についてどのように考えればよいでしょうか。【令和5年4月追加】

【答】(筆者作成)
 売手が令和5年9月30日までに売上計上した取引については、売手はインボイスの交付義務はない。ただし、売手における売上げの計上時期と買手における仕入れの計上時期が一致しないことにより、買手が令和5年10月1日以後に課税仕入れを計上する場合には、区分記載請求書等保存方式により仕入控除税額を計算することができる。

<実務上の留意点>
1 令和5年10月1日前でも売手は登録番号を記載したインボイスを発行することができる。
2 令和5年10月1日にまたがる電気料金などについては、検針日基準により売上げ(仕入れ)を計上することができるので、令和5年10月1日前後の取引を区分する必要はない。
3 未成工事支出金及び建設仮勘定に係る課税仕入れについては、目的物の完成が令和5年10月1日以後であったとしても、令和5年10月1日前の課税仕入れについては区分記載請求書等保存方式により仕入控除税額を計算することができる。

4 短期前払費用については、インボイスの保存を条件に、支出時に仕入税額控除の対象とすることができる。また、支出時にインボイスの交付を受けられなかったとしても、事後に交付されるインボイスの保存を条件に、支出額を仕入税額控除の対象とすることが認められている(インボイスQ&A問96)。
 よって、令和5年10月1日前に同日以後の費用を前払いした場合には、区分記載請求書等保存方式により仕入控除税額を計算することができる。

参考 短期前払費用(消基通11−3−8)
  事務所家賃などの賃貸借契約では、その月分の賃料を前月末日までに支払う契約とするのが一般的である。所得税、法人税の計算では、期末において翌月(翌期)分の家賃を前払費用として資産に計上せずに、継続して費用処理している場合には、これを認めることとしている。そこで、消費税の計算においても、所得税、法人税の計算で短期前払費用として必要経費や損金に計上したものについては、その支出した日の属する課税期間において仕入税額控除の対象とすることができることとしたものである。
  この取扱いは、支払日から1年以内に提供を受ける家賃や事務機器の保守料などについて、その支払額を継続してその支払日の属する年又は事業年度の経費として処理したときに認められる。

○対価を前受けした場合の適格請求書の交付時期

問39 当社はシステム保守を業としています。この点、定期保守については、月額22,000円(税込み)であるところ、1年間分を保守開始前に相手方から支払ってもらうこととしており、当該代金請求時において請求書を交付しています。
  適格請求書等保存方式の下では、この請求書を適格請求書とする予定ですが、問題ありませんか。【令和5年4月追加】

【答】の要約
 インボイスは売上金を前受けした時点で交付することができる。

○資産の譲渡等の時期の特例と適格請求書の交付義務

問40 工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例(工事進行基準)など、資産の譲渡等の時期の特例を適用した場合、適格請求書の交付義務はどのようになるでしょうか。【令和5年4月追加】

【答】の要約
 資産の譲渡等の時期の特例の適用を受ける場合には、売手の売上計上時期にインボイスの交付を連動させる必要はない。

○軽減対象資産の譲渡等である旨の記載方法

問71 適格請求書の記載事項である「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載方法について教えてください。【令和5年4月追加】

【答】
 適格請求書の記載事項である「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載については、軽減税率が適用された課税資産の譲渡等であることが客観的に明らかであるといえる程度の表示がされていればよく、個々の取引ごとに適用税率が記載されている場合のほか、例えば、以下のような場合も認められます(軽減通達18)。
① 同一の適格請求書において、軽減対象資産の譲渡等に該当する取引内容ごとに軽減対象資産の譲渡等であることを示す記号、番号等を表示し、かつ、当該適格請求書において当該記号、番号等が軽減対象資産の譲渡等に係るものであることとして表示されている場合
② 同一の適格請求書において、軽減対象資産の譲渡等に該当する取引内容を区分し、当該区分して記載された軽減対象資産の譲渡等に該当する取引内容につき軽減対象資産の譲渡等であることが表示されている場合
③ 軽減対象資産の譲渡等に係る適格請求書と軽減対象資産の譲渡等以外のものに係る適格請求書とが区分して作成され、当該区分された軽減対象資産の譲渡等に係る適格請求書に、記載された取引内容が軽減対象資産の譲渡等であることが表示されている場合

<コメント>
 軽減対象資産の譲渡等である旨の記載方法については『消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)令和2年9月改訂』の問13で既に公表されている。
 問い合わせがあったのかどうかは定かではないが、追加された問71は、このQ&Aをほぼそのまま載せたものである。

○所有権移転外ファイナンス・リース取引で賃借人が賃貸借処理した場合の適格請求書の保存

問97 所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産の譲渡時に適格請求書の交付義務が生じるとのことですが、当該リース取引につき賃借人が賃貸借処理し、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合、リース譲渡時に交付を受ける適格請求書の保存により仕入税額控除の適用を受けることができますか。【令和5年4月追加】

【答】(筆者作成)
1 一括控除と分割控除

 「所有権移転外ファイナンスリース」については、物件の引き渡しを受けた時にリース資産を取得したものとして取り扱うことになる。
 したがって、賃借人は、リース資産の取得時にリース料の総額を仕入税額控除の対象とすることが原則とされている(消基通5−1−9(注)(1)・11−3−2(注))。
 ただし、所得税、法人税では、リース資産を減価償却資産として認識せずに、支払リース料を賃借料として経費(損金)処理することが例外的に認められていることから、賃借人は、下記のいずれかの方法により課税仕入れを認識することもできる(国税庁質疑応答事例−仕入税額控除(課税仕入れの範囲)20より)。

 なお、リース物件を資産計上し、減価償却する場合には、分割控除は認めないこととされているので注意が必要だ。
2 インボイスの保存義務
 リース物件に係るインボイスは、賃貸人(譲渡人)から賃借人(譲受人)にリース物件が引き渡される際に発行され、賃借人の経理処理に関係なく、リース料の総額が計上されることになる。よって、賃借人(譲受人)は、物件取得時に交付されたインボイスを保存することにより、一括控除と分割控除のいずれかの方法で仕入控除税額を計算することができる。
 また、令和5年10月1日前に物件の引き渡しを受け、同日後も引き続き分割控除の適用を受ける場合には、区分記載請求書等保存方式によることが認められることから改めてインボイスの交付を受ける必要はない。
<疑問点>
 【答】の後半に分割控除を適用した場合のインボイスの保存期間として、「……なお、当該適格請求書等については、リース料の最終支払日(移転外リース取引について賃貸借処理により計上する最後の課税仕入れ)の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。……」との記載がある。
 一方で、インボイスの保存期間については新消費税法施行令50条1項で、「……その受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間……保存をしなければならない。……」と定めており、分割控除をした場合の特段の定めはない。
 そもそもが、分割控除という仕入税額控除の手法は法令や通達に定められたものではなく、実務に配慮して特別に認められたものである。「インボイスの受領をした日=最終支払日」ではないことから、このQ&Aの一文は法律の垣根を越えたところの取扱いと理解すべきなのであろうか……?


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