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解説記事2020年01月20日 SCOPE 相続財産は金銭で見積り可能な経済的価値あるものすべて(2020年1月20日号・№819)

審判所、条件未成就の停止条件付権利も課税財産
相続財産は金銭で見積り可能な経済的価値あるものすべて


 和解契約に基づく和解金の請求権が相続財産に含まれるか否かが争われた事案で、国税不服審判所は、相続税法上、相続財産の範囲は相続により取得した財産で金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものであるとの見解を示した。和解金請求権は相続により取得した財産であり、和解金の支払に関する履行状況等からすれば経済的価値が存するものと認められることから、本件権利が停止条件付債権であるか否かにかかわらず、相続税の課税財産に該当すると判断した(平成31年4月19日、一部取消し)。

利益計上が条件の和解金は相続税の課税対象になるか?

 今回の事案は、請求人の父の相続に係る相続税の更正処分等において、原処分庁が和解契約に基づく和解金の請求権は相続財産に含まれるとして課税価格に算入したが、請求人らは、当該請求権は条件未成就の停止条件付権利であるから相続税の課税対象にはならないなどとして、原処分の全部の取消しを求めたものである。請求人の父は産業廃棄物最終処分場の事業を開始するために取得を企図した土地に係る紛争に関し、相手側法人と和解契約を締結していた。
請求人、評価額は零円と主張
 請求人らは、被相続人が受領していた和解金は和解契約上、和解金を支払う相手側法人の税引後利益が上がらなければ支払われないものであることなどを理由として、和解金を受ける権利は条件未成就の停止条件付の権利であることから相続税の課税対象となる財産とはならないなどと主張。仮に相続税の課税対象となる財産を構成するとしても、その評価額は零円であるとしていた(参照)。

【表】当事者の主張(本件権利は相続税の対象となるか。該当するとすればその評価額はいくらか)

原処分庁 請求人
 次の理由から、本件権利は、相続税の課税対象となる財産を構成し、その評価額は××××××となる。
・相続税法2条1項は、相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し相続税を課する旨規定し、また、相続税法基本通達11の2-1は、相続税法に規定する「財産」とは、金銭に見積ることができる経済的価値のあるものすべてのものをいう旨定めているところ、相続税法上の「財産」とは、相続税が財産の無償取得により生じる担税力の増加を課税の根拠としていることからすると、法律上の権利の有無にかかわらず、金銭に見積ることのできる経済的価値のある被相続人に係るすべての財産をいい、また、物権、債権、債務のような現実の権利義務に限らず、財産上の地位も含まれると解される。
  したがって、相続税法上の財産には、いまだ明確な権利とはいえない財産上の地位、期限未到来の始期付権利及び条件未成就の停止条件付権利が含まれると解される。
・本件相続税の課税価格の計算上、本件権利の評価額を算出すると、評価通達204《貸付金債権の評価》及び同通達《貸付金債権等の元本価額の範囲》に基づき、本件相続開始日において○○○○○の事業経営が破たんしている等の事情は認められず、本件和解金残額の元本である××××××となる。
 次の理由から、本件権利は、相続税の課税対象となる財産を構成しない。仮に、相続税の課税対象となる財産を構成するとしても、その評価額は零円である。
・条件未成就の「停止条件付権利」は、いまだ「権利」として存在しないものであるから、相続税の課税対象の財産には該当しない。
  停止条件付権利は、条件の成就によって初めて「その効力を生ずる」(民法127条1項)旨規定されていることから、条件が未成就の間は「権利」として存在しないことは明らかである。このことは、評価通達に「停止条件付債権」にかかる評価方法の定めがないことからも明らかである。
・条件未成就の「停止条件付債権」は、その性質上、「権利」ですらなく、将来においても「権利」となるかどうか分からないものであって、その価額が「不特定多数の当事者間における自由な取引によって通常成立」するものと考えることは困難であり、「時価」が観念できず、評価することができないものといわざるを得ないのであるから、たとえそれが相続財産であっても、その評価額は零円とならざるを得ない。

財産法上の法的地位なども課税財産
 審判所は、相続税の課税財産とは金銭的に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものをいい、既に存在する物権や債権のほか、いまだ明確な権利とはいえない財産法上の法的地位なども含まれると解するのが相当であり、これには相続開始時において期限未到来の始期付権利や条件未成就の停止条件付権利も含まれるとの見解を示した。
 その上で審判所が本件権利の経済的価値について検討したところでは、相手側法人が和解契約の締結によって被相続人に対し支払うと約した和解金の総額は10億円であり、本件相続開始日まで実際に被相続人に対して和解金が支払われていたことなどから経済的価値があったものと認められると指摘。相続税法上、本件相続税の課税対象となる財産を構成することになるとした。
相続から支払期日までの支払金ごとに評価
 また、本件権利は相続開始日後の相手側法人の各事業年度の税引後利益に応じて和解金残高の支払を受けられる債権であり、和解金の支払に関しては無利息であったことなどからすると、無利息の金銭債権に類似するものであると指摘した。
 その上で本件権利に係る支払の態様は、暦年通算で支払われる金額に上限があることから、相続開始日以降、一括で支払われるものではなく、相手側法人の利益に連動して金額が決定し複数回にわたり支払われるものであり、本件権利の相続開始日における現在価値を算定するに当たっては、相続開始日からそれぞれ支払期日まで個々に支払われた支払金ごとに、相続開始日から支払期日まで、各別に中間利息を控除する方法によって算定することが合理的であるとした。
 具体的には、営業権の評価の際に用いられる平均利益金額の計算を定めた評価通達166《平均利益金額等の計算》を準用し、過去3年間の和解金の支払額の平均値を指標とし、相続開始日以降の各支払期日に支払われる金額を算定し、これに通常の利率を基に算出した複利原価率を乗ずる方法で行うべきとした。
原処分庁は和解契約による金額で評価も
 原処分庁は、本件権利の相続開始時における価額は和解契約により支払を受けることができる金額(和解金の総額からすでに支払われた金額を差し引いた残額)で評価すべきであると主張していたが(参照)、これを斥け原処分庁の更正処分を一部取り消した。

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