税務ニュース2023年06月02日 国内築古物件を利用した節税商品が出現(2023年6月5日号・№981) 鑑定評価額と固定資産税評価額で土地建物比率が乖離、課税リスクも
令和3年分の申告以降封じられた国外中古建物節税スキームと類似の節税効果を、土地5:建物5(あるいは土地4:建物6)の比率となる国内の築古物件を利用して実現することを謳う商品が販売されている。一般的な仕組みは以下の通りだ。まず、商品の販売業者が築古の賃貸アパート等の物件を土地建物一体で買上げる。その後リフォーム等を行い「建物価値を向上」させたうえで、投資家に土地5:建物5(あるいは土地4:建物6)の比率で転売する。この土地建物比率に近い鑑定評価書が、物件購入に際して投資家に交付されることもあるようだ。
この物件を取得した個人投資家は、築古物件であることから簡便法による中古耐用年数を使用し、不動産所得の申告上、4〜5年かけて建物部分の減価償却費を計上。それにより発生した損失を給与所得等と相殺し、所得を圧縮する。建物価値の向上のための工事は投資家が購入する前に販売業者が済ませているため、投資家側で「資本的支出」と考える必要はないという仕組みだ。
ただ、本スキームでは日本国内の物件を扱っているため、当然ながら土地建物それぞれに固定資産税評価額が付されており、固定資産税評価額ベースで土地建物比率を算出すると、鑑定評価額ベースに比べて土地の比率が増加することになる。本スキームに一部類似した事案について国税不服審判所は、売買契約書に記載された築古物件の土地及び建物の価額の比率が「土地3:建物7」であることは「著しく不合理」であり、固定資産税評価額の価額比に基づいて建物の取得価額を算定すべきとする令和4年9月9日裁決をウェブサイトで公表している。この裁決事例では、販売業者による建物価値向上後の転売や、物件の鑑定評価が出されていた事実は見受けられないため、本スキームと全く同一視することはできない。しかし、土地建物の評価という、後々極めて問題になりやすい論点を含んでいるという点は共通している。節税志向の強い個人の顧問先からこのような商品について照会を受けた場合、実務家は本スキームを実行した場合に想定される課税リスクについて事前に説明しておく必要があるだろう。
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