カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2023年07月10日 ニュース特集 不正事案続く輸出物品販売場制度見直しへ

ニュース特集
海外で採用の「リファンド方式」導入求める声も
不正事案続く輸出物品販売場制度見直しへ


 新型コロナウイルス感染症に対する制限緩和を受け、訪日外国人観光客の増加が見込まれている。政府も、観光戦略の新たな基本計画を示すなど、今年に入りインバウンド消費拡大を目指す動きが加速している。そのような中、輸出物品販売場制度は、観光立国を目指していく上で、その必要性が更に増していくことが想定される。
 しかし近年、当該制度を利用した不正還付事件や転売の増加などが問題となっており、国税当局も対策を強化している。本稿では、国税当局の不正事案に対する取組み、輸出物品販売場制度の見直し、海外で採用されている「リファンド方式」の導入の検討などについて詳報する。

訪日客への免税販売巡り百貨店業界への追徴課税相次ぐ

 先日、大丸松坂屋百貨店が、訪日外国人客への消費税の免税販売を巡り、免税の要件を満たしていないとして、約4億円超の追徴課税を受けたが、昨年秋にも、そごう・西武、小田急百貨店、松屋が同様の指摘を受けるなど、同種の事案が相次ぎ発生している。
 本誌でも、輸出物品販売場で外国人観光客に販売したように見せかけて不正に消費税還付を受けた事案など、輸出物品販売場制度を悪用した複数の消費税不正還付事案の判決についてお伝えしてきた(本誌840号、941号参照)。
 そもそも、消費税は国内での消費に課されるため、訪日客らが買った商品を国外に持ち出す場合は原則免税となる。免税販売を行った事業者は確定申告により、仕入れ時に課された消費税の還付を受けることができる。国内で消費されるのではなく確実に国外に持ち出されるものであることを担保するため、免税販売が認められるためにはのとおりの手続を行わなければならない。

 上記の百貨店における事案では、本人確認が不十分であったこと、必要書類を保管していなかったことのほか、転売目的が疑われるケースなどが問題とされた。
 このような指摘を受ける事案が相次ぐこととなったのは、事務負担軽減のために2020年4月から一部開始された免税手続の電子化(2021年10月から完全電子化)によるところが大きい。免税品を海外へ持ち込んだと仮装し消費税を不正に還付する者や国内で転売する者が相当数いることが問題となっていたところ、免税手続の電子化をきっかけに輸出免税制度や免税品を利用した消費税に関する事件が発覚したことを受け、消費税還付に係る行政指導や税務調査が全国規模で一斉に実施されることとなった。特に、国税当局が2023年1月、東京マテリアル通商など10社に対する免税販売許可の取消しを行うという異例の措置に踏み切ったことは大きな話題となった。

令和4年・5年改正による輸出物品販売場制度の見直し

 その一方で国税当局は、外国人旅行者等の満足度の低下を防ぐため、非居住者であることの確認手続の煩雑さ解消などを目的として、免税購入可能な者の明確化、デジタル技術の活用などの取り組みを進めてきた。
 令和4年改正(令和5年4月1日施行)では、まず、免税購入可能な者の範囲の見直しがのとおり行われた。改正前は、非居住者の在留資格によっては、パスポートに加えて海外に在住していることや日本で就労していないことについての確認書類等を求める必要があったが、改正により、原則としてパスポートのみを確認することにより免税購入対象者かどうかの判定ができるようになった。なお、改正前は外為法上の非居住者はすべて免税購入対象者とされていたが、改正により留学生などが除かれることとなった。背景には、留学生の不正事案への関与が問題となっていたことがあるとみられる。

 そのほか、外国人旅行者等が旅券等に係る情報を電子的に提供することができるようになった(の①)。具体的には、デジタル庁が管理する「Visit Japan Web」に事前に情報を取り込み、取り込んだ情報が記録された二次元コードを事業者が読み取る方法により提供できることとされた。
 また、税関では、免税購入をした者が出国する際に、免税購入した物品を輸出しないことが判明した場合には、その免除された消費税相当額を徴収することとされているが(即時徴収)、令和4年改正では、この即時徴収の権限などが税関長から所轄税関官署の長に委任できることとされた。
 さらに、この即時徴収については、出国時の税関での検査で、購入したはずの免税品を持っていないことが判明しても消費税相当額を徴収できていないことが問題となっており(2022年度は22億円に対して21億3,000万円が徴収できず)、令和5年改正により、免税品を買い取った側にも消費税の納付が義務付けられることとなった(令和5年5月1日~適用。消法8⑥)。

「リファンド方式」、国会で議論も導入の予定は見えず

 このような不正事案が問題となるたびに、特に税関で徴収できていないことへの対応策として、海外で導入されている「リファンド方式」を日本でも導入すべきではないかという声がたびたび上がっている。
 「リファンド方式」とは、税関で出国時に持ち出す物品の確認を受け、後で消費税の還付を受ける方法をいう。旅行者が物品を携帯して出国しない限り免税とされることはないため、免税販売を装う不正な還付を防ぐことができるとして、衆議院の財務金融委員会においても、2018年及び今年の3月に導入の可否が議論されている。政府は、現状の我が国の輸出物品販売場制度は、物品の販売段階で免税手続が一義的に完結するという他国に例のない方式で外国人旅行者の利便性が高い仕組みであることや、リファンド方式を導入した場合には、事後還付方法の検討や、還付手続のためのシステム改修等のコストが事業者や行政機関において生ずるといった課題があることを指摘しつつも、同方式について検討していきたいと答弁している。
 リファンド方式には、主にEU諸国で採用されている事業者(代行業者)が払い戻す方式と、オーストラリア、台湾、タイなどで採用されている政府機関が払い戻す直接還付方式があるが、EU方式であれば、政府機関の事務負担量の増加を避けることができるため、妥当なのではないかとの声もある。
 現行制度は、免税販売を行う事業者にとってもリスクや負担が大きい。事業用や販売用の購入と思われるような反復継続的な購入や、携帯できないほどの大量の購入ではないか、提示された旅券等とは別名義のクレジットカードやポイントカードが提示されていないかなど、不正事案とならないよう注意を払わなければならないからだ。不正防止のためのシステムの導入も行われ始めているようだ。
 外国人旅行者の増加が見込まれる中、不正防止のために、リファンド方式の導入を含め、時代に合った制度の見直しが求められているといえるだろう。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索