税務ニュース2023年09月08日 前々年上場株譲渡損の更正と連続申告(2023年9月11日号・№994) 課税当局、前年分申告時に明細書添付がない場合は繰越しを認めず
周知の通り、上場株式の譲渡損失の繰越しについては、措置法37条の12の2第7項により、いわゆる連続申告要件が課され、繰越対象となる上場株式等の損失が発生した年分からその損失を他の上場株式等の譲渡益と相殺するまでの期間、連続して所定の「明細書等」を添付した確定申告書の提出が要請される。過年度に発生した損失の申告を失念していた場合、措置法通達37の12の2−5より「更正により、新たに上場株式等に係る譲渡損失の金額があることとなった場合」も上場株式等の譲渡損失が生じたことになる。ただし、源泉徴収ありの特定口座で発生した過年度分の上場株式の譲渡損失についてはそもそも更正の請求は認められず、また、更正が時系列的に損失控除年分の確定申告書の提出より前に行われていなければ、“連続して”申告書を提出したことにはならないことに注意が必要だ。
ここで、前々年に上場株式等の譲渡損失が発生していたことを失念したまま同年分の確定申告を行い、前年分は株式の売却自体がなかったため明細書等を添付せず申告書を提出した後に、前々年分の損失が発覚した場合、今年分の確定申告を完了する前に前々年分と前年分の更正が受けられれば、前々年分の損失を今年にまで繰り越せるのか、という疑問が別途生じる。この点、課税当局への取材によれば、「前々年分の上場株式等の譲渡損失の発生自体は更正の請求をすることで損失が認められうる(同年内の損益通算は可能)が、前年分について明細書等の添付がなく確定申告が行われているため、その損失を繰り越すための前年分の更正の請求は認められない」とのことだ。つまり、明細書等を添付して連続して申告書を提出していること、という連続申告要件が前年分申告の段階で遮断されてしまっているため、上記事例の場合、前々年分の損失発生自体は更正の請求により認められるとしても、それを今年まで繰越すことはできない、ということである。上場株式等の譲渡損失については、連続申告要件の存在により後日の訂正については手続面で様々な税務リスクが発生するだけに、税理士としては慎重な対応が必要だろう。
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