解説記事2023年11月06日 SCOPE 印紙税、家族組合員も「出資者」に該当し領収書が非課税に(2023年11月6日号・№1002)
裁決で一部取消し後、地裁でさらに一部取消し
印紙税、家族組合員も「出資者」に該当し領収書が非課税に
消費生活協同組合である原告が、運営する総合病院及び介護老人保健施設において作成した領収書や契約書等が、印紙税法上の課税文書に該当するかどうかが争われた事案で、東京地裁民事3部(市原義孝裁判長)は令和5年3月8日、裁決により一部取り消された後の課税処分を、さらに一部取り消した。
東京地裁は、原告は「会社以外の法人で、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることとなっているもの」に該当し、その「出資者」以外の者に対して行う事業については、17号文書の非課税規定から除かれる「営業」に該当するとしたものの、家族組合員も組合員同様、「出資者」に該当するため、本件各領収書のうち家族組合員が利用した分については課税文書には当たらないとして、この部分に係る課税処分を違法とした。
一般的な営利性の有無は、印紙税法上の「営業」該当性の判断には影響せず
一般的に領収書等は、印紙税法上、別表第1に掲げる17号文書に該当し課税の対象となるが、表のとおり、「営業に関しない受取書」は非課税とする旨が定められている。その上で、「会社以外の法人で、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることとなっているものが、その「出資者」以外の者に対して行う事業」については「営業」に含まれるとされている(本件非課税規定の括弧書き)。

この点について東京地裁は、原告は生協法に基づき設立された組合で「会社以外の法人」に該当すること、「法令の規定」(生協法52条)及び定款の定めにより剰余金の割戻しができることとなっていることを指摘し、原告が「出資者」以外の者に対して行う事業については、印紙税法上の「営業」に該当するとの判断を下した。その上で、本件各領収書は、本件非課税規定にいう「営業に関しない受取書」には該当しないと結論づけた。
原告は、原告の行う医療事業及び福祉事業にはそもそも営利性がなく、印紙税法上も「営業」に当たらないと主張したが、東京地裁は、本件非課税規定の括弧書きの趣旨は、印紙税法上の「営業」には、通常の意味の営業に含まれないものを含み、その反面本来営業に含まれるものであっても、印紙税法上の「営業」に含まれないものがあることを規定したものであり、これによれば、会社以外の法人については、まずは利益金又は剰余金の配当又は分配の可否によって「営業」に該当するか否かが区分されるとして、その主張を斥けた。
生協法は、組合の事業の利用については「家族組合員」を組合員とみなす
一方、裁決では、17号の1文書であるとされた領収書のうち組合員に対するものは、原告がその「出資者」に対して行う事業において作成して交付した領収書であることから課税文書に当たらないとして、課税処分が一部取り消されていたが、本件裁判では、家族組合員についても「出資者」に該当するかどうかが争われた。
東京地裁は、生協法12条2項が、組合員と同一の世帯に属する者は、組合の事業の利用については、これを組合員とみなすと規定している点を指摘。そして同項の文言に照らせば、組合の事業の利用に関する法律関係については、生協法が直接適用される場合に限られず、広く家族組合員を「組合員」とみなすこととしたものであるとの解釈を示した。
その上で、本件各領収書のうち家族組合員に対するものは、原告が運営する本件各施設を利用した家族組合員に対し作成・交付されたものであるから、原告の事業の利用に関するものに該当することは明らかであり、家族組合員は、印紙税法上の「出資者」に該当するとの判断を下した。
また、生協法12条2項が家族組合員を組合員とみなすこととした趣旨について、組合が家庭を中心とした生活の共同体組織であることから、事業の利用については世帯を中心とする家族を組合員に準ずるものとみることが適当であるとされたものであると解されるから、生協法は、組合の事業の利用に関しては、世帯を取引単位として把握しているとの考えを示した。そして、組合の事業の利用に関して印紙税法が適用されるに当たっても、世帯を取引単位として担税力の有無を区別するのが相当であるとした。その上で、組合員と世帯を同一にする家族組合員との間には、実質的な担税力に差異はないと考えられるから、印紙税法上も家族組合員を「組合員」たる「出資者」に該当すると解するのが相当であるとした。
以上の結果、東京地裁は、本件各領収書のうち家族組合員が利用した分については課税文書には当たらないとしてその部分を取り消す判決を下した。
なお、そのほかの契約書等については2号文書及び7号文書に該当するとして、裁決同様、課税処分を適法とした。
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