税務ニュース2023年12月29日 ラップ口座契約者没、株譲渡の所得区分(2024年1月1日号・№1009) 国税庁質疑応答により誤解も譲渡所得に該当、取得費加算特例も適用可

  • 投資一任口座(ラップ口座)の株式の譲渡による所得は、国税庁の質疑応答事例によると「事業所得又は雑所得」に該当。しかし、ラップ口座の契約者が死亡した場合、口座内の上場株式は強制的に譲渡され、所得の継続性がないため、譲渡所得に。相続税の取得費加算の特例の適用も可。

 上場株式の譲渡というと「譲渡所得」と考えがちだが、国税庁の質疑応答事例「投資一任口座(ラップ口座)における株取引の所得区分」によると、投資一任契約に係る株式の譲渡による所得は「事業所得又は雑所得」に該当する(42頁参照)。
 この質疑応答を踏まえ実務家の間で議論があるのが、ラップ口座の契約者が死亡したことに伴い投資一任契約に基づき口座内にあった上場株式が譲渡された場合における所得区分だ。この問題は、相続税の取得費加算の特例(措法39条)の適用の可否とも関係する。相続税の取得費加算の特例の適用は、相続又は遺贈により取得した財産に係る「譲渡所得」についてのみ認められるからだ。仮に「事業所得又は雑所得」に該当するとなれば、取得費加算の特例の適用はできない。
 ラップ口座の契約者が死亡した場合には、投資一任契約の定めにより、当該契約者の相続人等は口座内にあった上場株式を取得することができず、上場株式は証券会社等によって譲渡され、その譲渡代金が当該契約者の相続人等に支払われることになる。しかし、民法上の相続財産はあくまで「当該上場株式」であることに変わりはない。したがって、ラップ口座の契約者が死亡した場合には、口座内にあった上場株式は一旦当該契約者の相続人等が取得し、その後、譲渡されたものとみるのが相当であり、当該譲渡に係る所得は相続人等に帰属することになると解される。
 問題は、株式の譲渡に係る所得が、事業所得、雑所得、譲渡所得のいずれに当たるのかだが、この判断は、措置法施行令25条の8の規定ぶりからすれば、「譲渡者」ごとではなく、「各取引」ごとに行うことになる。すなわち、ラップ口座の契約者が死亡した場合には、投資一任契約に基づき、口座内にあった上場株式は強制的に譲渡されることになるため、当該譲渡に係る所得は継続的なものとは言えず、仮に、当該契約の相続人等が、事業的規模等で株式の売買を行う者であったとしても、当該譲渡に係る所得は「譲渡所得」に該当する。また、「譲渡所得」に該当する以上、相続税の取得費加算の特例の適用もできることになる。

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