解説記事2024年01月22日 ニュース特集 令和6年能登半島地震による国税の申告・納付等の期限延長(2024年1月22日号・№1011)
ニュース特集
石川県・富山県は地方税の申告等期限も自動延長
令和6年能登半島地震による国税の申告・納付等の期限延長
国税庁は1月12日、令和6年能登半島地震による被害発生に伴い、石川県及び富山県に納税地のある納税者(法人含む)について、国税に関する申告、申請・納付等の期限を延長することを決定した(令和6年国税庁告示第1号)。令和6年1月1日以降に到来する全ての税目について自動延長される。なお、石川県・富山県以外に納税地がある納税者で、今回の地震により被災し、申告・納付等をすることができない場合には、所轄の税務署に対して申請することで申告・納付等の期限の延長を受けることができる。
本特集では、国税の申告・納付等の期限延長の留意点を中心に、各種手続きの概要を紹介する。
相続税の場合は相続開始日の被相続人の住所地で判定
国税庁は1月12日、令和6年能登半島地震による被災状況等に鑑み、「地域指定」による申告・納付等の期限延長を行った。石川県及び富山県に納税地を有する納税者については、全ての税目について、令和6年能登半島地震が発生した令和6年1月1日以降に到来する申告・納付等の期限が自動的に延長される。納税者については、特に税務署等で手続きを行う必要はない。また、令和6年1月1日以後に法定納期限が到来する分の「令和5年分消費税及び地方消費税の中間申告分・課税期間の特例適用分」の振替日についても同様だ。
申告期限は別途告示指定
期限をいつまで延長するかについては、被災者の状況等を配慮して今後決定し、国税庁告示により明らかにされる。したがって、今後決まる指定期日までに申告・納付すればよいことになる(なお、この場合でも、延長された期限までに申告等できない場合は個別指定による延長が可能)。延長された期間については、その国税に係る延滞税及び利子税は課されず、加算税については、認められた延長期限内に申告を行えば課されない。
石川県・富山県以外は個別指定で延長可
ただし、気を付けなければならないのは相続税の場合だ。相続税の場合は、相続開始日(令和6年能登半島地震の場合は令和5年3月1日以降)における被相続人の住所地が納税地となる(図表1参照)。

このため、相続開始日における被相続人の住所地が石川県及び富山県以外の場合については、仮に相続人が石川県や富山県で被災したとしても今回の地域指定による期限延長の対象外となる。この場合には納税地を管轄する税務署長に対して申請することにより申告・納付等の期限の延長を受けることが必要になる(個別指定)。
相続放棄等の熟慮期間は令和6年9月30日まで延長
今回の地震では、「令和6年能登半島地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」が令和6年1月11日に公布、施行されたことにより、相続放棄等の熟慮期間も延長されることになった。相続が開始した場合、相続人が相続放棄や限定承認をする場合には、原則として、「自己のために相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったことと、それにより自分が相続人となったこと)を知った時」から3か月以内に家庭裁判所でその旨を申述しなければならないとされているが、人的被害や住家被害が多く、いまだに避難所生活を余儀なくされているなど、復興までにはかなりの時間を要することになり、熟慮期間内に相続の承認又は放棄をすることが決定できない相続人も相当数いることと思われる。
このため、法務省は、この熟慮期間の終期が令和6年1月1日以降の日となる場合には、その終期を令和6年9月30日まで延長することとしている(図表2参照)。例えば、相続開始が令和5年12月1日の場合、通常の熟慮期間の終期は令和6年3月1日となるが、今回の特例により、その終期は令和6年9月30日となる。

対象は相続人住所が災害救助法の適用地域
ただし、対象となるのは、相続人が令和6年1月1日時点において、能登半島地震で災害救助法が適用された次の石川、新潟、富山、福井県の47市町村(令和6年1月11日時点)に住所を有していた場合となる。被相続人が被災者であったか否か、相続の対象となる財産が対象区域にあるか否かは関係ない。
〇新潟県(新潟市、長岡市、三条市、柏崎市、加茂市、見附市、燕市、糸魚川市、妙高市、五泉市、上越市、佐渡市、南魚沼市、三島郡出雲崎町)
〇富山県(富山市、高岡市、氷見市、滑川市、黒部市、砺波市、小矢部市、南砺市、射水市、中新川郡舟橋村、中新川郡上市町、中新川郡立山町、下新川郡朝日町)
〇石川県(金沢市、七尾市、小松市、輪島市、珠洲市、加賀市、羽咋市、かほく市、白山市、能美市、河北郡津幡町、河北郡内灘町、羽咋郡志賀町、羽咋郡宝達志水町、鹿島郡中能登町、鳳珠郡穴水町、鳳珠郡能登町)
〇福井県(福井市、あわら市、坂井市)
[4県47市町村]
なお、令和6年1月2日以降に対象区域に住所を有することになった相続人の場合は、今回の熟慮期間の延長の特例の対象外となる。したがって、仮に通常の熟慮期間内に相続の承認又は放棄等をすることができない場合には、家庭裁判所に申し立てることにより熟慮期間を延長する必要がある。
個別指定、簡易な方法による延長は不可
今回の地震では、地域指定はされなかったものの、新潟県や福井県でも大きな被害がもたらされている。地域指定されていない地域に納税地がある納税者の場合は、納税地を管轄する税務署長に対し、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出することにより、税務署長などが指定した日(その理由のやんだ日から2か月以内)まで期限延長が認められることになる。これが個別指定であるが、当初の期限を経過し、状況が落ち着いた後、申告・納付等と同時に行うことも可能としている。
ただし、前述の申請書も同時に提出する必要がある。平成28年熊本地震や、最初の頃の新型コロナウイルス感染症による申告期限の延長の際には、申告書等の余白に「熊本地震により被害を受けたため」や「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」等の文言を付記するといった簡易な方法による延長が認められていたが、今回は認められていないので留意したい。
顧問税理士が被災した場合も個別指定可
そのほか、今回の地震で、納税者自身ではなく、顧問税理士が被災し、税理士業務をすることができない状況も想定される。ケースバイケースではあるが、顧問税理士が期限までに納税者の申告業務ができないような場合であれば、「個別指定」により申告・納付期限を延長することができる。
コラム
震災によりインボイスなくても仕入税額控除が可能
今回の地震の被害により、帳簿書類等が滅失してしまったケースもあるだろう。消費税の仕入税額控除については、「被災により消費税の課税仕入れに係る帳簿書類を消失した場合」や「売手である適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)が被災したことでインボイスの交付を行うことができず、取引先(買手)においてそのインボイスを保存することができなかった場合」といった災害により帳簿書類(インボイス等)を保存することができなかったとしても仕入税額控除をすることができるとしている。
そのほか、被災した事業者については、消費税の課税事業者又は簡易課税制度を選択する(やめる)届出や適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出の特例の適用を受けることができる。
石川県・富山県の地方税申告等は自動延長も、一部除外あり
国税だけでなく、地方税についても申告・納付等の期限延長が行われる。石川県及び富山県は1月10日に、それぞれ県税に関する申告・納付等の期限を延長することを決めた。対象は、石川県及び富山県に住所を有する個人及び主たる事務所若しくは事業所を置く法人。令和6年1月1日以降に期限が到来する地方税の申告・納付等の期限が自動的に延長される。
ただし、「自動車税環境性能割の申告納付」「自動車税種別割(年度途中に月割で納税義務が発生するものに限る。)の申告納付」「狩猟税の申告納付」「軽自動車税環境性能割の申告納付」「行政不服審査法に基づく審査請求に関する手続」の期限については延長されないので留意したい。
なお、申告・納付等の期限がいつまで延長されるかについては、今後、被災者の状況等を踏まえ、告示指定されることになる。
地方税も個別申請に基づく期限延長が可能
また、富山県及び石川県以外に住所を有する個人又は主たる事務所等を置く法人であっても、今回の地震の影響により、期限までに県税の申告・納付等ができない場合には、申告・納付等ができない理由がやんだ日から2か月以内(特別徴収義務者は30日以内)に、総合県税事務所に申請することにより、申告・納付等の期限の延長を受けることができる。
コラム
有価証券報告書等の提出期限は令和6年4月30日まで延長
金融庁は1月12日、令和6年能登半島地震の影響により、有価証券報告書及び内部統制報告書、四半期報告書等の開示書類を提出期限までに提出できなかった場合であっても、令和6年4月30日までに提出すれば行政上及び刑事上の責任は問われないとしている。「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づく「令和六年能登半島地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」が令和6年1月11日に公布・施行されたことによるものである。
なお、令和6年4月30日になっても、開示書類を提出できないような状況にある場合には、所管の財務(支)局長の承認を受けることにより、さらに提出期限を延長できる。また、臨時報告書は、地震という不可抗力により臨時報告書の作成自体が行えない場合にはそのような事情の解消後、可及的速やかに提出することで、遅滞なく提出したものと取り扱われる。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.