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解説記事2020年02月10日 未公開判決事例紹介 高額譲受けも購入価額と時価との差額は寄附金(2020年2月10日号・№822)

未公開判決事例紹介
高額譲受けも購入価額と時価との差額は寄附金
東京地裁、売上原価としての損金算入を認めず

 読者からの反響が大きかった本誌819号(2020.1.20)9頁で紹介した税務訴訟の判決全文について、仮名処理した上で紹介する。

○棚卸資産(本件土地)を時価よりも高額の対価で購入した場合の差額が「売上原価」に該当するか否かが争われた事件。東京地方裁判所(古田孝夫裁判長)は、売買代金と時価との差額は「寄附金の額」に該当するとの判断を示し、納税者である原告の主張を斥けた(令和元年10月18日、棄却)。

主  文

1 本件訴えのうち、以下の処分の取消しを求める部分を却下する。
(1)T税務署長が平成29年3月28日付けでした、原告の平成22年9月1日から平成23年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、所得金額マイナス1億4722万1023円及び納付すべき税額マイナス1万0614円を超えない部分
(2)T税務署長が平成29年3月28日付けでした、原告の平成26年9月1日から平成27年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち、所得金額0円及び納付すべき税額マイナス178円を超えない部分
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求
1
 T税務署長が平成29年3月28日付けでした、原告の平成22年9月1日から平成23年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分を取り消す。
2 T税務署長が平成29年3月28日付けでした、原告の平成26年9月1日から平成27年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。

第2 事案の概要
1
 本件は、原告が時価を超える額の対価で購入した土地を売却し、購入価額全額を売上原価として損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、T税務署長から、購入価額のうち時価との差額は損金の額に算入できないとして更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことから、これらの処分の取消しを求める事案である(本判決では、欠損金額を所得金額のマイナス、還付金額を納付すべき税額のマイナスとして表記する。)。
2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は、当事者間に争いがない。)
(1)原告は、不動産の売買等を目的として昭和40年3月4日に設立された株式会社である。
(2)原告は、平成22年6月14日、Y株式会社(以下「Y」という。)との間で、Yから、岡山県勝田郡○○○○○○○○○○○、○○○、○○○及び○○○の各土地(以下、併せて「本件土地」という。)を代金1億8421万7112円(以下「本件売買価額」という。)で購入する旨の売買契約を締結した(以下、これを「本件売買」という。)。
(3)原告は、平成21年8月31日現在で、その帳簿上、Yに対し、貸付金及び未収入金として合計1億6838万0572円の債権(以下「本件債権」という。)を有していた(甲2、弁論の全趣旨)。
  他方、Yは、平成21年6月30日現在で、その帳簿上、原告に対し、本件債権に対応する債務として1億8421万7112円の債務を負っていた(甲5、弁論の全趣旨)。
  原告及びYは、本件売買に際し、Yの原告に対する債務(本件債権)と原告のYに対する売買代金債務1億8421万7112円とを対当額で相殺する旨の合意をした(甲5、弁論の全趣旨)。
  原告の帳簿上、本件債権の額は上記のとおり合計1億6838万0572円であったから、上記相殺処理により、差引1583万6540円分の売買代金債務が残ることとなったが、原告は、同額をYに支払うことなく、原告の受贈益として処理した(甲5、乙11の2、弁論の全趣旨)。
(4)本件土地の本件売買時点における時価は、7283万9889円であった。
(5)原告は、平成22年9月1日から平成23年8月31日までの事業年度(以下「平成23年8月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)の間に、本件土地につき、合筆、分筆等を行った上、Zほか10名に対し、代金合計4913万9600円で売却した。
(6)原告は、平成23年10月28日、平成23年8月期の法人税について、所得金額をマイナス1億4722万1023円、納付すべき税額をマイナス1万0614円、翌期へ繰り越す欠損金を2億2754万4828円等とする確定申告(以下「平成23年8月期確定申告」という。)を行った(乙1)。
  この申告額は、本件売買価額の全額を、棚卸資産である本件土地の売却に係る「売上原価」として損金の額に算入することを前提としたものであった。
(7)原告は、平成27年10月30日、平成27年8月期の法人税について、所得金額を0円、納付すべき税額をマイナス178円、翌期へ繰り越す欠損金を4749万5038円等とする確定申告(以下「平成27年8月期確定申告」という。)を行った(乙2)。
  この申告額は、平成23年8月期確定申告における翌期へ繰り越す欠損金の額を前提としたものであった。
(8)T税務署長は、平成29年3月28日、原告の平成23年8月期の法人税について、所得金額をマイナス3584万3800円、納付すべき税額をマイナス1万0614円、翌期へ繰り越す欠損金を1億1616万7605円等とする増額更正処分(以下「本件更正処分1」という。)を行った(乙3)。
  これは、本件売買価額のうち時価7283万9889円との差額1億1137万7223円(以下「本件差額」という。)は、「売上原価」として平成23年8月期の損金の額に算入できないことを前提としたものであった。
(9)T税務署長は、平成29年3月28日、原告の平成27年8月期の法人税について、所得金額を6388万2185円、納付すべき税額を1544万9700円、差引納付すべき法人税額を1544万9800円、翌期へ繰り越す欠損金を0円等とする増額更正処分(以下「本件更正処分2」といい、本件更正処分1と併せて「本件各更正処分」という。)を行うとともに、原告に対し、過少申告加算税229万1000円の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)をした(乙5)。
  これは、平成23年8月期の翌期へ繰り越す欠損金を1億1616万7605円とする本件更正処分1を前提とするものであった。
  なお、平成24年8月期ないし平成26年8月期の法人税については、本件更正処分1を前提としても国税通則法24条の「課税標準等又は税額等」が異ならないことから、更正処分はされなかった(弁論の全趣旨)。
(10)原告は、平成29年6月20日、本件各処分につき審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成30年6月1日、原告の審査請求を棄却する旨の裁決をした。
(11)原告は、平成30年11月30日、本件訴えを提起した(裁判所に顕著な事実)。
3 争点及び争点に関する当事者の主張
(1)本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの適法性(争点1)
(被告の主張)

 納税者が自らした申告に係る納付すべき税額が過大であるなどとしてその誤りを是正する場合には、専ら更正の請求の手続によらなければならず、その他の救済手段によることは許されない。
 したがって、更正の請求の手続を経ることなく、訴えをもって更正処分のうち申告に係る納付すべき税額等を超えない部分の取消しを求めることは訴えの利益を欠く。
 本件においても、本件各更正処分のうち、平成23年8月期確定申告及び平成27年8月期確定申告における申告額を超えない部分の取消しを求める訴えは訴えの利益を欠き、不適法である。
(原告の主張)
 争う。
(2)本件差額を「売上原価」として平成23年8月期の損金の額に算入できるか(争点2)
(原告の主張)

ア 時価より低い額の対価で資産を譲渡する低額譲渡については法人税法37条7項、8項により、一度時価で取引を行い、時価との差額を経済的な利益の供与、すなわち「寄附金」であると認定し、結果として時価と譲渡金額との差額が益金とされるのであり、法律の根拠に基づき行われる、租税法律主義に従った適法な課税である。
  これに対し、時価を超える額の対価で資産を譲り受ける高額譲受けについては、法人税法132条の同族会社の行為計算否認規定を適用するほか、高額譲受けを時価に引き直して課税することができるとする法律の根拠は存在しない。
  本件売買は高額譲受けであるが、本件各更正処分は、法人税法132条によらずに本件売買を否認して時価に引き直して課税しており、法律の根拠なくして行われた租税法律主義に反する違法な課税処分である。
イ 「売上原価」につき、時価を超えて支払うべき合理的理由がないにもかかわらずこれを超える売買代金を支払った場合に差額が「寄附金」となるとしても、本件売買価額は、時価を超えて支払うべき合理的理由があったものであるから、売買代金としての対価性を喪失せず、「寄附金」とならず、売上原価性を失わない。
  すなわち、本件において、Yは債務超過の状態が相当期間継続し、原告は本件債権の弁済を受けることができない状態にあったところ、本件差額は、金銭債権の貸倒損失(法人税法22条3項3号、法人税基本通達9-6-1参照)に該当するものといえるものであり、これにより、後記ウのより大きな損失を避けるために本件売買に応じざるを得なかった事情と相まって、時価を超えて支払うべき合理的理由があったことを推認させる。
ウ 回収不能な債権の放棄や、法人がその負担をしなければ逆により大きな損失を被ることが明らかであるためやむを得ず行う負担は、実質的にみると経済的利益を無償で供与したものとはいえず、「寄附金」に該当しない。
  本件売買当時、Yは経済的に逼迫した状況であり、Yからの、本件売買価額で売買契約を締結し、売買代金と本件債権を相殺するという申出を断れば、原告は、巨額の本件債権を抱え続け、毎年これについて課税対象となる利息を計上しなければならないというより大きな損失を被ることが明らかであったため、原告はやむを得ずその負担(本件売買価額の設定)を行ったものであり、本件差額は「寄附金」に該当しない。
  本件差額は「寄附金」に該当しない以上、原則どおり「売上原価」として損金の額に算入される。
(被告の主張)
ア 「売上原価」の計算の基礎となる棚卸資産の取得価額は、基本的に当該資産の購入の代価と当該資産を販売の用に供するために直接要した費用の合計額となるものであるが、時価を超える対価により資産を譲り受けた場合には、当該資産につき時価で譲渡を受けると同時に、その時価と譲渡の対価との差額を譲渡人に贈与したのと実質的には同じ経済的効果をもたらすものであるから、当該差額部分は無償の資産の譲渡に当たるというべきであり、「売上原価」の計算・評価に当たっても、棚卸資産の取得価額の計算において、当該差額を差し引いて考慮されるべきである。
  本件においても、本件売買価額(1億8421万7112円)は本件土地の時価(7283万9889円)を超えており、本件売買価額と時価との乖離を正当化するような事情も見受けられないから、本件差額は、棚卸資産の購入の代価としての性質を欠いており、原告からYへの対価のない経済的利益の移転であり、贈与と同視することができ、「売上原価」として損金の額に算入することはできない。
イ 本件各更正処分は、本件差額は棚卸資産の購入の代価としての性質を欠き、「売上原価」として損金の額に算入できないとするものであり、本件売買を他の法形式の契約であると認定しているものではないから、これが法律の根拠なくして行われた租税法律主義に反する違法な課税処分であるとする原告の主張は前提を欠くものである。
ウ 本件売買においては、Yが提案した相殺処理を原告が承認したにすぎず、本件債権について債務免除をしたものではないから、これによって原告に貸倒損失が生じるものではない。また、原告は、貸倒損失の要件である本件債権の全額が回収不能であることに係る具体的な事情を何ら客観的に明らかにしていない。

第3 当裁判所の判断
1 本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの適法性(争点1)について

(1)法人税については申告納税方式が採用されており(国税通則法16条1項1号、2項1号、法人税法74条1項)、その納付すべき税額は第一次的には納税者のする申告により確定するものとされている。そして、申告納税方式の国税につき、その申告内容に誤りがあり納付すべき税額が過大であった等の場合には、所定の期間内に限り、更正の請求の手続によりその是正を求めることができることとされている(国税通則法23条)。
  申告の誤りにつきこのような特別の救済手段が法定されていることからすれば、その過誤が重大であって法の定める方法以外に是正を許さないとすれば納税者の利益を著しく害すると認められるような特段の事情がない限り、納税者が、申告後にされた増額更正処分につき、更正の請求の手続を経ることなく、申告額を超えない部分の取消しを求める訴えを提起することは不適法なものとして許されないというべきである。
(2)本件において特段の事情があるとは認められないから、①本件更正処分1のうち平成23年8月期確定申告における申告額である所得金額マイナス1億4722万1023円及び納付すべき税額マイナス1万0614円を超えない部分並びに②本件更正処分2のうち平成27年8月期確定申告における申告額である所得金額0円及び納付すべき税額マイナス178円を超えない部分の各取消しを求める訴えは不適法である。

2 本件差額を「売上原価」として平成23年8月期の損金の額に算入できるか(争点2)について
(1)法人税法22条3項1号は、「当該事業年度の収益に係る売上原価……の額」を、当該事業年度の損金の額に算入すべき金額としている。
  本件土地は原告が購入した棚卸資産であったところ、棚卸資産の販売の収益に係る「売上原価」とは、当該資産の「取得価額」を指し、購入した棚卸資産の「取得価額」には、「当該資産の購入の代価」が含まれるとされている(法人税法29条2項、法人税法施行令32条1項1号イ)。
  したがって、本件土地のように購入した棚卸資産の「購入の代価」はその販売の収益に係る「売上原価」として損金の額に算入されることになるが、時価よりも高額な売買代金による高額譲受けが行われた場合に、当該資産の「購入の代価」をどのように評価すべきかについて、法人税法や法人税法施行令に直接の規定は設けられていない。
(2)ア 法人税法37条1項は、内国法人が各事業年度において支出した「寄附金の額」のうち、政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、損金の額に算入しない旨を規定している。
  ここでいう「寄附金の額」とは、同条7項によれば、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものを除く。)をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額を指すものである。
イ 法人税法37条8項は、内国法人が資産の譲渡又は経済的な利益の供与をした場合において、その譲渡又は供与の対価の額が当該資産又は経済的な利益の時価に比して低いときは、当該対価の額と当該時価との差額のうち実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額は、「寄附金の額」に含まれるものとする旨を規定する。
  同項は、例えば時価よりも低額の売買代金により法人所有の不動産等の資産を売却した場合に、売買契約という当事者の選択した法形式を否認して時価による売買と差額分の金銭の贈与という二つの法律行為があったとみなすものでも、当該法律行為を売買と贈与の混合契約であるとみなすものでもなく、当該法律行為は私法上の性質としては売買契約であることを前提に、売買代金と時価との差額は、売主たる法人から買主に「供与」された「経済的な利益」であり(差額の金銭が移転するわけではないから金銭の贈与ではないし、売買目的物の所有権移転原因は売買であるから売買目的物の全部又は一部の贈与でもなく、時価による売買代金債務が一旦発生するわけではないから債務の免除でもないが、当該差額分の経済的な利益が移転していることは明らかである。)、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」については、「経済的な利益の……無償の供与」をした場合における当該「経済的な利益」の時価として、法人税法37条7項が定義する「寄附金の額」に該当することから、当該金額が損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないものであることを確認的に規定したものと解される。
ウ 法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売買代金と時価との差額は、買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」については、「経済的な利益の……無償の供与」をした場合における当該「経済的な利益」の時価として、法人税法37条7項が定義する「寄附金の額」に該当することになるから、当該金額は損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないこととなるものと解される。
  この場合も、売買契約という当事者の選択した法形式を否認して時価による売買と差額分の金銭の贈与という二つの法律行為があったとみなすものでも、当該法律行為を売買と贈与の混合契約であるとみなすものでもなく、当該法律行為は私法上の性質としては売買契約であることを前提に、その売買代金額の一部を法人税法の適用上「寄附金の額」と評価しているものにすぎず、当該法律行為の私法上の性質を変更するものではないと解される。
エ そうすると、棚卸資産の高額譲受けにおいても、当該対価の額と当該資産の時価との差額については、その全部又は一部が「寄附金の額」と評価される場合には、法人税法の適用上、損金の額への算入が制限されるのであるから、そのような扱いを受ける当該差額は、当該資産の販売の収益に係る費用として当然に損金の額に算入される「売上原価」とは異質なものといわざるを得ず、「売上原価」とは異なる費用又は損失の額として別途損金該当性を判断すべきものというべきである。
  したがって、当該差額は、法人税法22条3項1号にいう「売上原価」に当たらず、法人税法施行令32条1項1号イの「当該資産の購入の代価」には含まれないと解するのが相当である。
(3)これを本件についてみると、本件売買価額(1億8421万7112円)は本件土地の時価(7283万9889円)を超えるものであるから、本件差額(1億1137万7223円)は、法人税法22条3項1号にいう「売上原価」に当たらない。
  したがって、本件差額を「売上原価」として平成23年8月期の損金の額に算入することはできないというべきである。
(4)ア 原告は、高額譲受けについては、法人税法132条の同族会社の行為計算否認規定を適用するほか、高額譲受けを時価に引き直して課税することができるとする法律の根拠は存在しないのに、同条によらずに時価に引き直して課税した本件各更正処分は、法律の根拠なくして行われた租税法律主義に反する違法な課税処分であると主張する。
  しかし、棚卸資産の高額譲受けにおける売買代金のうち当該資産の時価との差額は法人税法22条3項1号の「売上原価」に当たらないと解されることは上記のとおりであり、この結論は、「寄附金の額」に関する同法37条7項、8項の解釈から導かれるものである。そして、本件各更正処分は、これと結論において同旨の見解に基づき、本件差額が「売上原価」に当たらないとしてされたものであるから、法律の根拠なくして行われた課税処分であるとする原告の主張は前提を欠き失当である。
イ また、原告は、本件差額は、本件債権の貸倒損失に該当するものといえることに加え、Yからの申出を断れば、原告は、巨額の本件債権について毎年課税対象となる利息を計上しなければならないというより大きな損失を被ることが明らかであったため、原告はやむを得ず本件売買及び本件債権との相殺処理に応じたものであり、時価を超えて支払うべき合理的理由があったから、本件差額は「寄附金の額」に該当せず、売上原価性を失わないと主張する。
  しかし、本件差額が「売上原価」に当たらないことは上記のとおりであり、仮に本件差額が「寄附金の額」に該当せず何らかの費用又は損失として損金の額に算入すべきであるとしても、それは平成23年8月期ではなく、本件売買及び本件債権との相殺処理がされた平成22年8月期の損金の額に算入すべきものであるから、原告の上記主張は失当である。
3 本件各処分の適法性について
(1)以上のとおり、本件差額を「売上原価」として平成23年8月期の損金の額に算入することはできないから、これによる所得金額及び納付すべき税額は本件各更正処分の認定した額と同額であり(弁論の全趣旨)、本件各更正処分は適法である。
(2)また、本件更正処分2を前提とする過少申告加算税の額は本件賦課決定処分の額と同額となる(弁論の全趣旨)から、本件賦課決定処分も適法である。
4 よって、本件訴えのうち、本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める部分は不適法であるから却下し、原告のその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第3部
裁判長裁判官 古田孝夫
裁判官 西村康夫
裁判官 永田大貴

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