解説記事2024年02月05日 SCOPE 令和6年能登半島地震で所得税等の特例を措置へ(2024年2月5日号・№1013)

雑損控除等は前年分の所得からの控除も可
令和6年能登半島地震で所得税等の特例を措置へ


 自民党税制調査会は1月29日に総会及び小委員会を開催し、令和6年能登半島地震災害の被災者に係る所得税等の特例措置を講じる方針を明らかにした。能登半島地震は令和6年1月1日に発生したため、今回の災害における雑損控除等は令和6年分所得について適用され、令和5年分所得については適用されない。しかし、地震発生日が令和6年1月1日と令和5年分所得税の課税期間と極めて近いことを踏まえ、令和5年分の所得において雑損控除等の特例を適用できることとする。東日本大震災の際に制定された「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」で認められていた取扱いと同様のものである。

被災事業用資産等の損失の必要経費算入も令和5年分から適用可

 令和6年能登半島地震では、広範囲において甚大な被害が生じている。平成29年度税制改正では、災害特例の常設化が行われており、自然災害の被災者等に対する税制上の支援措置が講じられている。ただ、所得税の場合は暦年課税であるため、令和6年1月1日に発生した地震で被災したとしても雑損控除等は令和5年分所得については適用されず、来年の確定申告となる令和6年分所得について適用される。このため、東日本大震災の際に措置されていた雑損控除の前倒し適用などの特例措置を求める声が上がっていた。
 こうした声を踏まえ、自民党税制調査会では、今回の地震が令和6年1月1日に生じた災害であるという事情を踏まえ、雑損控除では、前年分となる令和5年分の所得から控除することができる措置を講じることとしている(図表1参照)。また、雑損控除との選択適用となる災害減免法による所得税の減免措置についても前年分(令和5年分)の所得税について適用することを可能とする。

 被災事業用資産等の損失の必要経費算入の特例についても同様だ。同特例は、災害による事業用資産等の損失額については、その年分の事業所得等の計算上、必要経費に算入することができるが、能登半島地震による事業用資産等の損失額については、前年分(令和5年分)の事業所得等の計算上、必要経費に算入することを可能とする(図表2参照)。

特定非常災害の損失繰越は5年間
 令和5年度税制改正では、特定非常災害に係る損失の繰越控除期間が現行の3年間から5年間に延長されている。東日本大震災の際に制定された「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」(震災税制特例法)では、繰越控除期間が5年間認められており、これと同様の措置である。なお、今回の令和6年能登半島地震も特定非常災害に政令指定されている。

更正の請求により特例の適用が可能
 なお、前述したこれらの特例を適用しない確定申告書を提出し、申告期限を過ぎた後であったとしても、更正の請求等により特例を適用できることとし、申告期限内であれば訂正申告により適用を受けることができるようにするとしている。

個人住民税の雑損控除も令和5年分所得からの適用が可能に

 個人住民税における雑損控除についても、現行制度では、令和5年分所得(令和6年度分個人住民税)については適用されないため、所得税と同様の措置を講じる(図表3参照)。

 なお、地方税の減免措置については、各自治体の判断で柔軟な対応が可能であり、また、被災事業用資産等の損失の必要経費算入については、国税において同様の特例が措置されたことに伴い自動連動するため、地方税法上は特段の措置は講じないとしている。

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