解説記事2024年03月04日 SCOPE パーシャルスピンオフの会計処理、大幅変更なく決定へ(2024年3月4日号・№1017)

ASBJ、3月中に公表で即適用
パーシャルスピンオフの会計処理、大幅変更なく決定へ


 企業会計基準委員会(ASBJ)は12月6日まで意見募集を行っていた企業会計基準適用指針公開草案第80号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)」等に寄せられたコメントについて検討を行っているが、内容面での大きな変更はなく、3月中にも正式決定する予定だ。取扱いの明確化などが主な修正となっている。なお、適用指針等は、公表日以後ただちに適用することとされており、適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないとされている。

当期税金は損益に計上する旨を明確化

 企業会計基準委員会は昨年の10月6日、令和5年度税制改正でパーシャルスピンオフ税制が創設されたことを踏まえ、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針(案)」等を公表した。個別財務諸表上の会計処理としては、保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合には、配当の効力発生日における配当財産の適正な帳簿価額をもってその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を減額する。また、連結財務諸表上の会計処理については、日本公認会計士協会が会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正について(案)を公表している。
 公開草案には、例えば、会計上の時価評価損益が生じない自己株式等会計基準適用指針案第10項(2−2)で定められた取引において生じる当期税金について損益に計上すべきか否か明確にすべきとのコメントが寄せられている。この点については、コメントを踏まえ、当該取引に係る法人税、住民税及び事業税等は損益に計上する旨を結論の背景に記載することとしている。
 また、自己株式等会計適用指針案については、経過措置として、適用指針の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないものとすることとされているが、その理由の明確化を求めるコメントが寄せられている。このため、結論の背景において、適用指針の基準開発の範囲は、保有する完全子会社株式の一部を株式数に応じて比例的に配当(按分型の配当)し子会社株式に該当しなくなった場合であり、通常、これに該当する取引を行う企業は会計上の取扱いを十分に検討した上でスキームを構築していると考えられるため、スキーム実行時に想定していなかった会計処理を過去に遡って求めることはしない旨を明記することとしている。
 そのほか、適用指針案では、自己株式等会計適用指針案第10項(2−2)は今回の基準開発の範囲としたケースに該当する場合であることから「完全子会社」とする一方、同第10項(2)については従前の記載を変更せず「完全」を追加しないこととしている。この点については、どちらも完全子会社株式を配当することが前提にされているのであれば、表現方法を統一すべきとのコメントが寄せられている。しかし、企業会計基準委員会は、今回の会計処理の前提となった第10項(2)の定めについても、完全子会社株式を配当する取引が想定されているが、第10項(2−2)の記載と整合性を取るため、「完全」を追記した場合には取扱いを変更しているように誤解を与える等の意見が聞かれたことから、公開草案どおり「完全」の文言を追加しないこととしている。

「連結財務諸表に関する会計基準」(注5)を適用可能な点も明確化

 「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正案に対しては、例えば、子会社株式の追加取得等によって生じた資本剰余金のうち配当した部分に対応する額についての記載の明確化を求めるコメントが寄せられている。「個別財務諸表上で計上したその他資本剰余金又はその他利益剰余金の減額を修正する」との記載の場合、追加取得時に計上した資本剰余金自体を調整しているようにみえるため、誤解を与えるおそれがあるからだ。このため、資本連結実務指針案第46−3項及び第46−4項について、「連結配当により個別財務諸表で計上したその他資本剰余金又はその他利益剰余金(繰越利益剰余金)の減額を連結株主資本等変動計算書において修正する」旨に変更することとしている。
 また、連結財務諸表上、資本連結実務指針案第46−3項又は第46−4項の処理における配当前の投資の修正額を算定するにあたっては、子会社の決算日以外の日に配当が行われる場合、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(注5)に基づき、配当日の前後いずれかの決算日を基準日として投資の修正額を算定することが認められるか明確化すべきとのコメントが寄せられている。この点について企業会計基準委員会は、連結会計基準(注5)の適用を認めない場合には、配当日に改めて決算を求めることとなり、実務的な負荷が高くなるものと考えられるため、連結会計基準(注5)の「売却日等」の「等」には、完全子会社株式を配当し子会社又は関連会社に該当しなくなる場合の配当日についても含まれる旨を明確化するとしている。

パーシャルスピンオフ税制は4年延長も、スタートアップ事業に限定
 令和5年度税制改正で創設されたパーシャルスピンオフ税制は1年限りの時限措置として講じられていたが、令和6年度税制改正により、令和10年3月31日まで4年間適用期限が延長されることになった。ただし、既存の認定要件に加え、「完全子会社の主要な事業として新たな事業活動を行っていること」の要件が追加されることになる。
 現行制度では、既存の事業を分離した場合も適用対象となるが、令和6年4月1日以降は、新たな事業、つまり、スタートアップ事業に限られることになる。

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