会社法ニュース2020年03月06日 法務省、新型コロナで株主総会延期も可(2020年3月9日号・№826) 会社法上は必ずしも事業年度終了後3か月以内の開催を求めず
法務省は2月28日、新型コロナウイルス感染症に関連し、当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合であっても、その状況が解消され、その後、合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるとの見解を公表した(次頁参照)。会社法上、株式会社の定時株主総会は、「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と規定しているが(会社法296条1項)、事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではないとしている。この点、法務省は、東日本大震災の際にも同様の取扱いを明らかにしている(本誌397号参照)。
仮に定款に定められた基準日から3か月を経過した後に定時株主総会が開催される場合は、会社は新たに議決権行使のための基準日を定める必要がある。基準日株主が行使することができる権利は当該基準日から3か月以内に行使するものに限られているからだ(会社法124条2項)。このため、会社は、当該基準日の2週間前までに基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要がある(会社法124条3項)。
また、特定の日を剰余金の配当の基準日とする定款の定めがある場合でも、特定の日とは異なる日を剰余金の配当の基準日と定め、剰余金の配当をすることもできる。この場合には前述と同様、当該基準日の2週間前までに公告する必要がある(会社法124条3項)。
なお、3月3日時点では定時株主総会を延期する旨を明らかにした上場会社はない。3月中には12月期決算法人の定時株主総会が控えるが、今のところはマスク着用や消毒液の設置で対応する上場会社が多いようだ。ただし、総会終了後の株主懇談会等は軒並み中止となっている。また、可能な限り電子行使又は郵送での議決権の事前行使をお願いするところも多い。その他の取組みとして、例えばGMOインターネットでは、定時株主総会の開催日を変更し例年よりも縮小した規模で開催するとともに、総会当日は自宅でも閲覧できるインターネットライブ中継を行うなど、感染防止に向けた対応を明らかにしている。
重要資料
定時株主総会の開催について(法務省)
今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合における定時株主総会の開催について、以下のとおりお知らせします。
1 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて
定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも、通常、天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで、その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられます。
したがって、今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。なお、会社法は、株式会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定していますが(会社法第296条第1項)、事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではありません。
2 定時株主総会の議決権行使のための基準日について
会社法上、基準日株主が行使することができる権利は、当該基準日から3か月以内に行使するものに限られます(会社法第124条第2項)。
したがって、定款で定時株主総会の議決権の基準日が定められている場合において、新型コロナウイルス感染症に関連し、当該基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは、会社は、新たに議決権行使のための基準日を定め、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。
3 剰余金の配当に関する定款の定めについて
特定の日を剰余金の配当の基準日とする定款の定めがある場合でも、今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、その特定の日を基準日として剰余金の配当をすることができない状況が生じたときは、定款で定めた剰余金の配当の基準日株主に対する配当はせず、その特定の日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め、剰余金の配当をすることもできます。なお、このように、剰余金の配当の基準日を改めて定める場合には、2の場合と同様に、当該基準日の2週間前までに公告する必要があります(会社法第124条第3項本文)。
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