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解説記事2020年03月09日 SCOPE 東京地裁、残余利益分割法による独立企業間価格を支持(2020年3月9日号・№826)

上村工業、移転価格税制の適用を巡り再び敗訴
東京地裁、残余利益分割法による独立企業間価格を支持


 メッキ用薬品・機械業界首位の上村工業(株)(東証2部)が移転価格税制の適用を巡り提起していた訴訟で、令和2年2月28日、東京地裁(鎌野真敬裁判長)は同社の請求を棄却した。平成29年の東京地裁判決に続き、残余利益分割法を用いた国側の独立企業間価格の算定が誤りであるとする同社の主張は再び斥けられたことになる。

「独立価格比準法と同等の方法」は比較対象取引の存在認められず適用不可

 課税処分の対象となったのは、原告が台湾の国外関連者2社(T1社及びT2社)との間で行った①メッキ薬品の半製品等の販売取引(本件棚卸資産販売取引)と、②当該半製品等を原料の一部とするメッキ薬品の製造に必要な無形資産(ノウハウ、特許権等)の使用許諾に係る取引(本件ライセンス取引)の2つの国外関連取引。課税庁は、原告が当該国外関連者から支払を受けた対価の額が、残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて算定した独立企業間価格に満たないとして、更正処分等を行った。これに対し原告は、国が①残余利益分割法及び残余利益分割法と同等の方法を用いて独立企業間価格を算定したこと及び②その算定の過程に誤りがあるなどと主張し、処分の取消しを求めた。
算定単位は個々の取引ではなく取引全体
 原告はまず、独立企業間価格の算定単位について、取引全体を算定単位とした課税処分に対し、個別の取引ごとに算定すべきと主張。そして、本件ライセンス取引については「独立価格比準法と同等の方法」によるべきであり、本件棚卸資産販売取引については「原価基準法」を用いるべきと主張した。
 算定単位については、原則として個別の取引ごとに算定されるべきところ、措置法通達により、一定の場合、複数の取引をまとめて算定単位とすることも認められている。しかしながら、専門家からは、複数の取引単位をまとめた結果、比較対象取引が見つからないなどの問題があるとの指摘もされている。
 東京地裁は「本件ライセンス取引は、個別かつ独立に存在する本件ライセンス取引を構成する使用許諾取引が単に集合したものではなく、それらの個別の使用許諾取引が多数存在し、それらの使用許諾取引の対象であるノウハウ等を組み合わせることにより多様な顧客の要望に応えることが可能となっており、このような個別のメッキ薬品の製造等のノウハウ等それ自体を超えたものにも独自の経済的な価値が存」するとした上で、「少なくとも、本件ライセンス取引の全体を1つのものとして捉えるのが合理的」と判断した。
比較対象取引に資産の同種性は認められず
 独立企業間価格の算定方法については、平成23年度改正前は、基本三法(独立価格比準法、再販売価格基準法および原価基準法)を用いることができない場合に限りその他の方法が認められていたが、改正後は基本三法優先は廃止され、「最も適切な方法」を選定すべきものとされているところ、本事案は改正前の法律が適用されるため、東京地裁はまず基本三法又は基本三法と同等の方法を用いることができるかどうかを判断し、できない場合に限りその他の方法について検討するという判断プロセスを採用している。
 まず、「独立価格比準法と同等の方法」について東京地裁は、無形資産の使用許諾取引は「比較対象取引に係る無形資産が国外関連取引に係る無形資産と同種であり、かつ、比較対象取引に係る使用許諾の時期、期間等の使用許諾の条件が当該国外関連取引と同様であることを要」するとした上で、比較対象取引とされる非関連者K社(韓国)とのライセンス取引は、認定した事実関係から、「その取引の対象である資産が同種のものであるとも、取引が同様の状況の下でされたものとも認められない」と判断した。
 また、本件棚卸資産販売取引にも原価基準法を認めず、2つの取引とも基本三法又は基本三法と同等の方法を用いてその独立企業間価格を算定することはできないとした。

取引当事者双方が重要な無形資産を有するため残余利益分割法は合理的

 その上で、国側が用いた残余利益分割法等については、本件ライセンス取引に係る各事実を認定し、「そうすると、本件国外関連取引については、原告及び本件国外関連者の双方が重要な無形資産を有し、各無形資産が利益の獲得に寄与していると認められるから」、合理的であるとした。
 また、本件においては、C社、S社、L社の複数の国外関連者間で連鎖取引がされているが、分割対象利益の計算に及ぼす影響が小さいため、当該連鎖取引を考慮する必要はないとし、国側が算定した独立企業間価格を支持、課税処分を適法とした。

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