税務ニュース2024年05月31日 国連、重要な経済的存在の規定も念頭(2024年6月3日号・№1029) デジタルエコノミー議論、OECDでの検討の蒸し返しも
国連は現在、国際的な租税協力の枠組み条約の策定に向けた議論を進めている。4月から5月の間に開催された第1回の公開セッションでは、「デジタル化・グローバル化が進む経済における国境を越えたサービスの提供から派生する所得に対する課税」を議題として、デジタル経済への課題が検討された(本誌1025号参照)。
この内容に関連して、国連におけるデジタル課税に関する検討では、相手国で事業上の関連性がある場合には当該非居住者に対しても課税するという重要な経済的存在(Significant Economic Presence、本号42頁参照)の条項が中心となる可能性があることが判明した。関係者は、「重要な経済的存在は、既に国連における税の検討の中心的なメンバーでもあるインドやナイジェリア、コロンビアなどで法制化されているため、有力な選択肢になるだろう」と述べた。
重要な経済的存在は、OECDにおける第1の柱の議論の中でも、解決策の一つとして検討されていた。OECDは、2019年2月に、パブリックコンサルテーション文書「Addressing the Tax Challenges of the Digitalisation of the Economy」を公表したが、当該パブリックコンサルテーション文書では、利益配分と新しいネクサス(課税の根拠となるつながり)の基本となる考え方について、①主に英国が提案した「ユーザー参加」に基づく案、②主に米国が提案した「マーケティング無形資産」に基づく案に加え、③主に途上国が提案した「重要な経済的存在」に基づく案が示されたが、現在のOECDの第1の柱(多国間協定)の草案は、主に①の「ユーザー参加」と②の「マーケティング無形資産」の考え方を組み合わせたものとなっており、重要な経済的存在に基づく考え方が提示されれば、OECDの検討を巻き戻すものになる。
もっとも、重要な経済的存在の条項は、G7や欧州などの先進国各国の国内法で導入されているものではない。仮にこれを国連の枠組み条約に盛り込むことになれば、OECDモデル租税条約からの乖離が大きくなる。OECDで既になされた検討を蒸し返せば、先進国からの反対は必至であろう。しばらくは、国連やOECDの場を通じて、先進国と新興国・途上国の間で主導権争いが続くことになりそうだ。
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